第208話 あの人達は今?パート2
◆ダンジョン平原
ひゅ〜ぅ
『⋯⋯⋯⋯⋯』
『⋯⋯⋯⋯⋯』
『⋯⋯⋯⋯⋯』
「コケ?」
「コケケコケ??」
ここはダンジョン平原の外れ。
薄暗い世界が地平線の彼方まで続く。
辺りに命の気配はまったくない。
突然送り込まれた漂流者達は、変貌した世界に唖然と佇むしかなかった。
『おい、お前ら。何とか言え!俺はお前らのイザコザに巻き込まれたんだ。責任を取ってくれ!』
『我は知らん。勝手についてきたのは貴様の意思だろう?我に責任なぞあるものか』
『ついてきてない!巻き込まれたんだ!』
唖然とする集団の中、トゲ頭のペンギンと白い大犬が言い合いをしている。
それを他人ごととして無言で見つめるサングラスの白ウサギ、首を傾げる小さい白ウサギ。
そして二匹で見つめ合うデカいニワトリがいた。
突如、平原の静寂を破る《ブレーブス音楽隊》のような編成の動物グループ。
彼らは混乱の中にいた。
『そもそも貴様は何だ?何故、北の聖獣なのにダンジョンにいた?ダンジョンBOSSと組んでたのは何故だ?』
『知らん。俺は元々北部大陸のフンボルト村にいたんだ。だが村には何も無い。つまらんから旅に出た。そしたらあの場所に流れ着いたんだ。あとカメヘンカメヘンと組んだつもりはねぇ。俺が審判をやりたかっただけだ』
『何の答えにもなっとらんな。貴様が聖獣で無かったら捨て置いたところだ。しかし困ったな。ここは何処なのだ?何の情報もない。カーナ様に早く合流せねばならんのだが』
『おい、勝手に話しを終わらしただろ?!』
言い合いを続けたいペンギンが白い大犬に食い下がるが、はなから相手にしていない白い大犬。
自分の世界に入って考え込んでいる。
それを黙って眺めていた2羽の白ウサギ。
その内、サングラス白ウサギが棒のような物を取り出した。
何処から取り出しかは定かではないが、よく見るとそれはアサルトライフルのようだ。
彼は終始無言でライフルを構え、そのスコープの中を覗き込んだ。
カチャッ
『⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯』
ピタッ
ピタッ
銃口は白い大犬、ペンギンと、其々に数秒づつ狙いを定め、そして納得するように頷きライフルを上げた。
フーッ
サングラス白ウサギから白い煙が上がった。
いつの間にか、サングラス白ウサギはタバコを吸っていたようだ。
サングラスでその考えを伺い知る事は出来ないが、何故かヤりきった感を醸し出すサングラス白ウサギ。
彼は普段からライフルの整備に余念が無い。
おそらくだがスコープの調整が上手くいったのだろう。
彼は満足げにタバコの2本目に火を点けた。
引き続き無言、無表情で白い大犬とペンギンのやり取りを眺めるサングラス白ウサギ。
それを横で黙って眺めていた小さい白ウサギ。
どうやらこの子はまだ子供のようだ。
小さい白ウサギは、その瞳をキラキラさせてサングラス白ウサギを見つめていた。
そんなニ羽の前を一羽のデカいニワトリが通り過ぎる。
彼は種族名をコッコドゥ、名前をテバサキという。
そして彼は、自分の名前に誇りを持っている。
何故なら彼の名前は、彼が尊敬する主人がつけた名前だったからだ。
だが彼は知らなかった。
彼の主人が付けた名前の理由が《名古屋コーチンのテバサキが食べたい》と思っていた時に考えたものだったという事を。
つまり名前の由来は極めていい加減なものだったという事だ。
だとしても、この件に他人が口を挟む理由はない。
何故なら、どのような名前であろうと、本人が満足していればそれでいいのだ。
『おい、聞いてるのか!?俺の名前はレオナルド•ダビンチだ!』
『貴様はうるさい、少し黙れ。我は今考え中だ』
『ナンだと!!』
「コケケ」
『何だ?!魔獣が何の用だ?』
『やめろ!この者はカーナ様の従魔だ。何か情報を掴んだのであろう。テバサキよ、カーナ様と念話が繋がったのか?』
「コケケ、コケコケケ」
『⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯』
『なんでぃ?!何て言ってのか分かんねぇじゃねぇか!』
「コケコケケコケコケケ」
『何だと⋯⋯⋯』
『おい、言葉が分かるのか??』
「コケケコケコケコケコケケコケコケケ」
『⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯』
「何て言ってるんでぇい?!」
『⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯』
『おいぃ!』
『奥さんが卵を生むから巣を作るそうだ』
『はあ??』
『だから干し草が欲しい。何処かにないだろうか?、だそうだ』
『⋯⋯どうでもいいじゃねぇか⋯⋯⋯⋯⋯』
こうして彼らの時間は無駄に過ぎていったのだった。




