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第201話 記憶の回廊(シリアス話)

◆?

ある人物視点


カチャカチャカチャカチャ

ピッピッピッピッピッ

カタカタカタカタカタカタカタカタッ


ピッ31.2

ピッ30.7

ピッ29.9

ピッ30.2


モニターに映る数値はこの星の運命値。

この数値がゼロになる時、世界の全ては完全に静止する。

この数百年、様々に手を尽くしてきたけれど数値の改善は一進一退、一向に進まない。



「もっと力が必要ね。また彼らに支払って貰いましょう」



父がこの世界を見限り1000年あまり。

世界は確実に破滅に向かって突き進んでいる。

定期的にソウルパワーを投入する仕組みを作ったのだけど、人間も勝手に似た仕組みを構築して私の作業の邪魔をする。



「これもそれも私がココから動けないせい。忌々しい人間め!」



姉の道楽に付き合い、偶然手に入れた海の管理権限とその権能。

それを使い星の運命を変更しようとしたけど、どうにも上手くいかないで困ってる。



「これ以上人間達に、あの仕組みを使わせる訳にはいかないのに!」



800年前に作り上げた私の再生プログラム。

それに鋭く食い込んだ人間のシステム。

私がパワーを集めても勝手にソレを人間が使い余剰パワーが残らない。

そのシステムを構築した人間には呪いで苦しみを与えたが、結局似たシステムが他国にも伝わり世界の再生に回すパワーが貯らない。



「お姉様、ごめんなさい」



侵食する寒冷化は海の生態系にも打撃を与えた。

このままでは陸も海も、全ての命が氷ついてしまう。

私はその最悪の状況を打開する為に、最悪の選択をする事にした。


最悪の選択、それは《命の選別》だ。



寒冷化で何れ無くなる命なら、後世の命の為に先に使わせて貰うという選択だ。

我ながら酷い選択だと思う。

特に犠牲になるのは母なる命の源、海にある命だった。

何故なら陸より海の方がずっと命に満ち溢れていたからだ。

姉から成り行きとはいえ預かった海の管理権限とその権能。

これを使えば海から命を吸い上げるのは、とても容易い事だった。


次々に氷結していく豊かな海。

当然海の異常は直ちに直接の管理者達に伝わる。

姉から一時的に部下になっていた彼女は私の対応に激怒した。



『((妹神(いもしん)様、南の海が突然に氷結しました。避難指示が出されませんでしたが、この状況は貴女なら把握出来た事ですよね?どういうおつもりですか?!))』

「いいえ、私にも把握出来ない事でした。多くの死傷者が出たようですね。把握出来ず本当に申し訳なく思っております。生き延びた者達には直ちに他の海への移動を勧告しましょう」

『((⋯⋯北の海も西の海も避難指示が出ず後手に回りました。今回もそのような話で逃げられるとお思いですか))』

「私は女神です。その女神の言う事に偽りがあると言われるのですか?」

『((確かに貴女は女神です。それに私達の信仰する乙姫様の妹様にあたります。出来る事なら信じたい。ですが貴女は本来陸の女神。また仮の管理者とは云え貴女は海の管理権限と権能を乙姫様からお預かりした方。海の者達の安全には責任がある筈です))』

「どうするつもり?」

『((乙姫様にこの惨状を報告致します))』

「何?」

『((先ほどお目覚めになられる先走りがございました。おそらく近々お目覚めになられます))』

「?!」

『((なので、海の権限と権能を乙姫様にお返し下さい。お認め頂けるならこの件は不問とさせて頂きます))』

「魚風情が!女神たる私を脅しておるのか?」

『((そのような事は考えておりません。ですが私には現状を正確に伝える義務がございます))』

プツン

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」



まずい。

姉様に私の事が知られるのはまだ不味い。



ピッ

「料理長」

『((は?これは妹神(いもしん)様、私にご連絡下さるとは珍しい事もありますな。本日は如何されましたか?))』

「お前、海の氷結の件は知っているね」

『((知っております。北の海の事でございますな。あれは酷い災害でした。それが何か?))』

「それが今度、東の海でも起きる」

『((何ですと?!大変だ、私の家族が東の海におるのです。直ちに避難させねば!))』

「もう間に合わない。私がそのように手配した」

『((それはどういう?!))』

「だが、お前の家族だけは助かるよう手配してやろう。私の命令を聞くならばな」

『((⋯⋯分かりました。どのような命令でしょうか?))』

「女中頭を料理せよ」

『((そ、それは!))』

「聞けぬと言うのか?」

『((⋯⋯⋯分かり、ました。指示に従いましょう。その代わり約束は守って下さい))』

「もちろんだ。女神としてお前の家族の安全は保証しよう」

プツン




これでいい。

きっと料理長は命令通りヤッてくれるだろう。

復活しても力は無い姉様だが悲しませる訳にはいかない。



カタン 

「ライラ」

((はい、こちらに))

「念の為だ。料理長の事を見届けよ。そしてその後の姉様の動向を知らせるのだ」

((分かりました、保管された海の管理区域に向かいます)) 

スゥ



私はいつも伝令に使っているゴーストゾンビ少女に料理長の監視と姉様の様子の確認を指示した。


ゴーストゾンビは、このダンジョン内なら移動権限を与えた者限定だが距離に関係なく移動出来る便利なもの。

私はあのライラという少女に《無条件移動権限》を与え手足として使っている。

その内、報告を持って帰るだろう。



さあ、始めよう。

世界の救済の始まりだ。


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