第186話 宴
◆ダンジョン温泉✹竜宮城
カーナ視点
「ダンジョンとは穴ぐらの中のような陰の地。常世に繋がるツクヨミの統べる世界じゃ。妾の命の海とは対極にある存在。妾がそのような地にあらば命の海は枯れ、新たな生命は誕生せぬ。あってはならぬ事よ」
ここがダンジョンではない?
だとしたら考えられる事は一つしかありません。
それは、グルちゃんのスゴロクマップに何らかの問題があるという事です。
「グルちゃん、もしかしてスゴロクマップの力でダンジョンから既に脱出してた?」
「いえ、そんな筈はありません。私の矢印はまだこの先を指してます。矢印の示す先が常にダンジョンの出口です」
「そうだよね」
グルちゃんの矢印@は依然として最初に示した同じ方角、今は乙姫ちゃんの背後のホール壁を指してます。
グルちゃんは嘘をついているとは思えない、ならば、乙姫ちゃんに何らかの問題が発生している事になります。
「あの、乙姫ちゃん」
「ちゃん?じゃと」
「いや、すいません。やはり織姫ちゃんにソックリだし、年相応の呼び方がいいなって思って」
「⋯⋯ふむ、何やら新鮮じゃな。そこな織姫と申したか。不思議と他人の気がせぬのも解せぬ。じゃが悪い気もおきん。よかろう。今後は《ちゃん》呼びを許そう。織姫とも姉妹の関係になっておるようだしの」
「そうじゃ。もはや乙姫とは姉妹の盃を飲んだ仲じゃ。一心同体と言っても過言ではないのじゃ」
いつの間にか姉妹認定になってる織姫ちゃんと乙姫ちゃん。
ばっちりアイコンタクトをして意思疎通?!
《姉妹の盃》ってヤクザですか?
もう仲良しになっています。
私とオルデアンちゃん、グルちゃんは目をパチクリするしかありません。
双子ちゃんの誕生です。
同じ動作は止めて下さい。
紛らわしくて困ります。
「仲良しになって良かったです。ところで乙姫ちゃん、竜宮城にお住みになってどのくらい経ちますか?」
「妾は創造神アーデ・ラテーナの女神の一柱じゃ。この創造神と同じ名の世界、アーデ・ラテーナ創世から存在しておる」
「え」
世界創世から存在する女神の一柱。
女神って、神様じゃないですか?!
「何と乙姫よ、そなた女神であったのか?」
「織姫、そうじゃ。《神がこの地を離れた》今は、女神の肩書は机の引き出しに仕舞ったがの」
女神って肩書だったんですね。
それを何処ぞの机の引き出しに仕舞ったと?
ん?
今、何やら重要な事をサラッと言っていたような??
「まあそんな事はどうでもよかろう。お主達が客人と分かったのじゃ。これから宴を催そうぞ!皆の者、宴じゃ。出て参れ!」
ボフンッ
乙姫ちゃんは、そう言いながら立ち上がり手を上げました。
すると辺りに突然白い煙が立ち上ります。
中から現れたのは鯛や鯵など、魚のお面を付けた女中姿の女性達。
一気に数十人は現れて、蛸や蟹のお面を付けた握りハチマキに飛脚姿の男達?が次々に畳や襖を運びます。
いや、何処から現れたの?!
(((((((((あーい、乙姫様のご所望でーす。煌びやかに飾りましょう。沢山のお料理に沢山の踊り子、多くの歌姫が参ります。皆様、ごゆるりとおくつろぎ下さーい))))))))
「「「「!?」」」」
あっという間に何もなかったホールは和風の宴会ホールに様変わり。
正面に出来た簡易の舞台では何故か戦隊ショーが演ってます。
何で?
((フハハハ、この町の小学校に工作員を教師として送り込み、子供達を次代のジョッカー戦闘員に洗脳する計画は上手くいった。これを見ろ!少なくとも三人が将来の夢に《ジョッカー戦闘員になりたい》と卒アルの寄せ書きに書いておる。素晴らしいぞ!))
((ふっ、工作員を100人も教師として送り込みながら成果が其れだけとは、ジョッカーも大したことはないな))
((な?!何奴!!))
ドドンッ
5人のヘルメットを被ったヒーローみたいな人達が現れ、各々のポーズを決めてフリーズ。
直後にその背後がそれぞれのコスチューム色で爆発します。
室内爆破は止めましょう。
煙たくて見てる人が困ります。
あ?
そう思っていたら煙は直ぐに無くなりました。
鯵の人が謝ってます?
換気扇の回し忘れだそうでお辞儀してました。
そんな気遣いもあるんですね。
至れり尽くせりです。
((おのれ正義ヒーロー、魚介戦隊ニチロめ!缶詰値上げは許さんぞ!!))
「馬鹿め、適正価格キック!」
((うわー?!))
ポリポリポリポリ
ぱくぱくぱく
さて、すっかり戦隊ショーに釘付けのオルデアンちゃん、グルちゃん、織姫ちゃん、乙姫ちゃんの私を含めた5人です。
それでも出された食事を口に運ぶのは止められない私達。
豪華な食事に思わず舌鼓をついているところです。
((くっ、こうなったら巨大獣に変身するしかない!変身!!))
「よし、コチラはニチロマジンに搭乗だ。全員、乗り込め!」
「「「「ラジャー!」」」」
さあ、大怪獣と合体ロボの戦いが始まりました。
戦隊ショーも大詰めです。
そろそろ本題を乙姫ちゃんにぶつけましょうか。




