第185話 海?ダンジョン?
◆ダンジョン温泉✹竜宮城
カーナ視点
「えー、噂で聞いてまして」
「ほう、どんな噂じゃ?」
「⋯⋯あの、その、乙姫さまは美しいとか」
「ほう、妾は美しいと?そうであろう。じゃがコヤツは妾のニセ者じゃ。つまり偽りの美しさじゃ。故にダメダメじゃ」
「何じゃと?お巫山戯も大概じゃ!!カーナたん、コッチがニセ者じゃ!そもそも人間は貝の中に住まん!だから美しいのは妾じゃ!」
「なんじゃと?!ニセ者はよう吠える。確かに妾は人から離れたところにおるが偽の美しさではないぞよ!妾は海を司る姫、乙姫ぞ。人間風情に間違われるのは心外じゃ!」
「ニセ者はニセ者じゃ!さっさと真似は止めるのじゃ!」
「この姿は元々妾の姿じゃ!ソッチこそ止めるのじゃ!」
再び始まった織姫ちゃんと乙姫ちゃん?の取っ組み合いはドードー巡りで無駄に時間の浪費です。
めんどくさ!
「はい、二人共もう終わり。どっちが本物でも結構。仲直りしましょう」
「何じゃと?!」
「どういう事じゃ?」
「つまり二人とも本物っていう事です」
「「?」」
下らない言い合いを強引に終わらせました。
納得いかない二人に、顔の前に飛んで行ってそれぞれに説明します。
「あなた方はソックリだったからどちらかが本物って言い合う事になった。でも私からすればどちらも別人に見えるし実際に別人です。だからどっちが本物を競う必要はなく、どちらも個性ある本物だから、もう仲直りしてお互いを認めれば良いと思います。どちらも美人で可愛いいですよ」
「び、美人⋯⋯⋯」
「可愛いじゃと⋯⋯」
私の言葉に二人は、お互いを改めて見合わせ合いました。
それぞれに違いを再認識してるようです。
「そ、そうじゃな。そなたはよく見たら目尻が可愛いいのじゃ」
「おお、そなたは髪が艷やかで綺麗じゃ。その衣装も素敵なのじゃ」
「⋯⋯よく見たら妾らは別人だったのじゃ。ニセ者は居ないのじゃ」
「そうじゃな。妾は似た者同士で姉妹みたいなものという事じゃな」
「うむ。ならば妾が姉じゃ」
「いや、姉は妾じゃ!」
「何じゃと?妾こそが姉じゃ!!」
「ええい、妹は姉のいう事を聞かんか!」
二人が今度はお互いに姉を競い始めました。
アホかーい?!
「二人とも!また、どうでもいい事で競わない。どっちが姉でもよろし!真面目に怒るよ?!」
「「はい」」
どうやら私の一声で織姫ちゃん達の無駄な言い合いは終わったようです。
もう下らない時間潰しは止めて欲しいものです。
「ふう、やっと終わったわ」
「かーさま、素敵です」
「流石カーナおねえさまです」
さて、では本来の話に戻りましょう。
先ずは事情聴取です。
このステージの全てを握るハズの彼女。
果たしてどのような事を聞けるのでしょうか。
「何じゃと?亀を助けたお礼に竜宮城に招待されたと申したか?!」
「ええ、実際にカメを助けたのは私の従魔なんだけど、デカいし満腹で寝てるから門前にいるわ」
「ぬう、それは済まなんだの。てっきり不法侵入かと思いスキルの《防御貝》を使い撃退しようとしてしまったのじゃ」
「アレ、スキルなんだ⋯⋯」
ホタテ貝は何と、乙姫ちゃんのスキルだったそうです。
いわゆる《貝に籠もる》というヤツです。
じゃあ、元々中身が乙姫ちゃんだったって事?
はなからホタテじゃなかったのでした。
何だかあの捕物劇が無駄でガッカリです。
「改めて名乗ろう。妾はこの竜宮城の主にしてアーデ▪ラテーナの海を司る乙姫じゃ。色々と誤解して済まなんだなのじゃ」
アーデ・ラテーナ??
初めて聞きましたが、やっぱり地球とは違うんですね。
それがこの世界の名前、いえ惑星名でしょか?
そしてその海を司っているのが乙姫ちゃん。
「うみ、海の事ですか?」
「海じゃと?!」
ありゃ、オルデアンちゃんと織姫ちゃんがやたらと反応しています。
海が珍しい事のよう?
「二人共、海が珍しいの?」
「はい、海はお伽話しに出てくる伝説の場所。命の源と云われています」
「誰も辿り付けない別世界と云われておるのじゃ。有ればこのダンジョン温泉みたいな世界と書物には書いてあるのじゃ」
ああ、やはり二人は海を見た事がなかったのですね。
だから最初に浜辺で温泉?海のような海岸に出た二人の驚きは尋常ではなかった事でしょう。
「何じゃと?海を知らぬのか。お主達は何処から来たのじゃ?」
「私達はダンジョンの外から此方に来たんです」
「ダンジョンの外じゃと?ダンジョン???」
「ココはダンジョンの中ではないのですか??」
「お主らは何を言っておるのじゃ?ココがダンジョンの中の訳がなかろう」
「え?」
乙姫ちゃんから謎の言葉を頂きました。
《ここがダンジョンの中じゃない》?




