第184話 もめごと
◆ダンジョン温泉✹竜宮城
カーナ視点
「お、お主は何者じゃ?!」
「お、お主こそ何者じゃ!」
「どうすれば⋯⋯⋯」
ありゃ?向こうは何やら盛り上がってますね。
私は盛り下がってますけど。
「はあ、ホタテゲットならずかぁ」
「カーナおねえさま、ホタテから離れて下さい」
「諦めたわよ。それでアレはどういう事なの?」
「その、見た通りです」
「そうだよね」
えー、ホタテの中から人が現れたんですが、その人物が織姫ちゃんとソックリで揉めている、という訳です。
状況から見れば、あの子がホタテの中身っぽいですが、見た感じでは普通に人間に見えます。
しかし童話は中から出てくる話が多いですね。
竹とか垢とか瓜とか。
桃太郎に至っては桃を食べようとしたお婆さん?に桃ごと真っ二つに切られて出てきたんです。
現実なら壮絶な誕生秘話になるでしょう。
まあ、それは置いておいて現状を確認すると、ホタテから生まれた姫が織姫ちゃんソックリで二人と揉めている、と?
ホタテ姫??
「でも何で揉めてるの?」
「ホタテから出てきた人は織姫おねえさまにソックリなんですよ?得体が知れないじゃないですか。だから織姫おねえさまが名乗るように言ったんですが、ソックリさんも同じ事を言って譲らず揉めてるんです。オルデアンおねえさまも困ってしまって、それでカーナおねえさまに助力を請おうと私が呼びにきたんです」
それはどちらかが譲ればいいのでは?
姿が似てるから性格も同じなの?
「大体のところは分かったわ。とにかく先入観に囚われずにちゃんと話し合えば問題ないわ」
「え?」
「見たところ害は無さそうだし、何者かは本人に聞けばいいんじゃないって事よ」
「ですがあんな怪しい人、気にならない方がおかしいです。しかも話し合うのですか?」
「グルちゃんも見てきたでしょ?彼女は実体があるみたいだけど、ゴーストゾンビも含めこのダンジョンにいる彼女らは何者かに役を強制されてるだけのエキストラよ。《絶対悪》じゃない」
「そうでしょうか⋯⋯」
「怖かったけど最終的にマグロもクジラも襲ってはこなかった。とにかく話し合いは大事よ」
「はい⋯⋯」
「グルちゃんは後からメンバー(カーナが召喚した妖精)に加わったわけだし、このダンジョンの特性は私達の方が理解してる。ここからは私に任せなさい」
「分かりました」
グルちゃんは納得はいかない風だったけど最終的には頷きました。
ちょと強引だったけど彼女は私の言葉を理解してくれたようです。
では、この騒動を終わらせますか。
「だーかーらーっ、さっさと名乗るのじゃ!」
「お主が先に名乗らぬか。昨今の若者は目上に対する礼儀を知らん!」
「二人とも、ケンカはだめだよ」
「「ケンカはしとらんわ!」」
「そう、なんだ⋯⋯」
「オルデアン、妾はコヤツが名乗るまで名乗らん。妾の名を呼んではならぬ!」
「おお、そなたオルデアンというのか。よかろう。コヤツの言う通りにしておれ。こんな失礼なヤツは自分で名乗るまで聞く耳持たん」
「失礼なヤツとは何じゃ!?そっちこそ貝から出てきた不審人物じゃ!」
「何じゃと?!勝手に人の居城に踏み込み、散々妾を追い立てておいて何というもの言いじゃ!不法侵入という言葉を知らんのか!」
あらら?
織姫ちゃんと織姫ちゃん?が取っ組み合いになっていて、更に変な意地の張り合いになってません?
「オルデアンちゃん、どういう状況?」
「あ、カーナさま、良かった。私では二人を止められません。助けて下さい」
「何があったの?」
「あの子?が貝さんから出てこられたんですが、ご覧の通り織姫ちゃんにソックリなんです。それで織姫ちゃんがニセ者って叫んだら、あの子が怒って『ソッチこそニセ者じゃ』って言い合いになっちゃいました。そして更に相手に先に名前を言わせる争いになって取っ組み合いに」
「しょうがないわね」
彼女は確かに織姫ちゃんソックリですが、服装がイメージ通りだし言動からしても明らかにこの城の主ですよね。
二人とも意地の張り合いで引き下がれない様子。
ココは私が調停するしかなさそうです。
「おおカーナたん、このニセ者を何とかして欲しいのじゃ!」
「だから誰がニセ者じゃ!む?お主は妾を執ように追い立てた妖精じゃな?よくもタモ網なんぞで妾の《防御貝》を台無しにしたな。アレを再構築するのは大量の魔力が必要なのじゃ。お前達全員許さぬぞ!」
おお、久方ぶりに妖精って言われました。
ダンジョンに入ってからずっと虫虫言われてたんで何か感動ものです。
でも《防御貝》って、ホタテじゃ無かったんですね。
「ええと、乙姫さまとお見受けします。間違いないでしょうか?」
「何とお主、妾の名前を知っとるのか!?何故じゃ?」
何故と言われて、どう答えたものでしょうか。
童話を知っていたから成り行きを予想出来たって伝えます?
いやいや、それだと転生の話からしなければなりません。
何かめんどくさいです。




