第176話 種類?
◆ダンジョン温泉▪竜宮城
カーナ視点
ザッザッザッザッザッ
「カーナさま、近づいてます」
「当たり前よ、遠ざかってどうするの?」
「その、カーナたん。近づいたらお魚の顔が何か怖いのじゃ?!」
「踊りと歌を見たいんでしょ?今更怖じけつかない」
「ですがカーナおねえさま、あの魚顔は怖がるなというのは無理があります」
そうなんです。
完全に顔がマグロ。
しかもマグロって目も大きいけどハッキリ言って虚ろで何処見てるか分からないのです。
何処見てるか分からないのって、やっぱり怖いじゃないですか。
そうこうしてる内に門の前まで来てしまいました。
ここは私が頑張ってみますか。
何せこの中では最年長。
え?もちろん精神年齢の事です。
ザッ
((何だ、お前は?))
皆が半魚人の容姿に怖がってるので三人はその場に待たせ、私が一人で半魚人の前までやって来ました。
半魚人は足元の私を覗き込むと、質問をしてきました。
いや思ってたほど怖くないですが生臭い!?
生臭いのは勘弁です。
「えー、あの、カメさんのお礼で来たものです。その、乙姫さんにお目通り願いますか」
((カメのお礼で来ただと?ならば聞いてるな。言うがいい))
聞いてるって何を?
だいたいあのカメ、『ノーッ?』しか言ってなかったんだけど?!
((何だ、聞いてないのか?オレの種族を当てるんだ))
「は?」
私が首を捻ってると半魚人何か言いました。
半魚人の種族を当てろと言ってます。
ここにきてナゾナゾですか?
それに半魚人の種族なんて分かる訳もありません。
知るかーっ!
「ええっと?マグロ、とか?」
((それは全体の魚種名だ。オレが聞きたいのは種類名だ))
マグロは合ってるんですか。
ならマグロの種類名って事だけど私、マグロってお刺し身でしか見た事ありません。
もちろん前世の記憶です。
「キハダとか?」
((何だと?貴様、オレがキハダに見えるっていうのか?!))
ヤバっ、怒らせちゃった?!
いや私、マグロの種類なんか分かる訳ねーでごぜーますだよ!
「ごめんなさい。クロマグロさんでしたね。大変失礼致しました」
((貴様、オレがあんなチャラチャラしてる奴らと同じに見えるというのか!))
「…………………」
クロマグロってチャラチャラしてんだ。
じゃあ、キハダはどうなんですか?
って、違いなんか分かるかーっ↑
「ビンチョウ」
((ふざけてんだろ!))
「メバチ」
((喧嘩売ってんのか!))
「大西洋クロマグロ」
((まんまクロマグロだろ!))
「ミナミマグロ」
((それはインドマグロだ!))
あう、もう私の知ってるスーパーのお刺身は出尽くしました。
どうしよう!?
((おい!他にないのか!?))
「ま、待って下さい。考え中です」
マグロ、マグロ、マグロ、マグロ……。
あ、そうだ!
「カジキマグロ」
((バカヤロー、魚種から違うだろうが!あいつらはメカジキ科だ、マグロですらない。オレの鼻が尖ってるというのか?))
「い、いえ」
((そうだろう?奴らは安上がりでマグロの代用品にしかすぎない。それなのに鼻高でオレ達を見下していやがる。ろくな者じゃねぇ))
「はい………」
知らなかった。
カジキマグロっていうからマグロの種類だと思っていたのに、種族違いだったなんて分かる訳ないです。
おまけにマグロとカジキにそんな確執があったなんて知りません。
ところで私、さっきから怒鳴られてばかりで酷いんですけど?!
((早くオレの種類を言え。分からないならこの槍で串刺しになってもらう!))
チャキッ
「ひゃい?!」
なんか漫画の虫歯バイ菌が持ってるような三ツ又槍を向けられて絶対絶命!?
はひっ、なにがなんでも答えないといけません。
えーと、そうだ!
困った時のナビちゃんです。
「ナビちゃん、私がまだ言ってないマグロの種類ってある??」
ピロン
《コシナガマグロ》
はい?
目の前に現れたテロップに書かれていたのは見た事も聞いた事もないマグロの名でした。
コシナガマグロって何?
分からないけど串刺しになるよりマシです。
ここは素直にナビちゃんに従いましょう。
「えーと、コシナガマグロ?」
((お前?!))
ピロン
《コシナガマグロは背ビレから尻ビレまでが長く、腰が長く見えることからこの名前が付けられました。体長は1m。出荷量は多くない珍しいマグロです。見た目も味もクロマグロの幼魚に似てます》
ナビちゃんがしっかり解説です。
コシナガマグロ?
知らんがな、そんなマグロ。
関東のスーパーに並んだ事もありません。
だけどマグロ兵士はフリーズです。
え、合ってる?間違い?どっちやねん。
「ふぇ!?」
どばどばどばっ
半魚人が突然泣き出しました。
マグロ顔でドバドバ滝のような涙を流しています。
マグロが涙流す姿ってハッキリ言って不気味です。
勘弁してください。




