第174話 適用範囲
◆ダンジョン温泉海底?
カーナ視点
ニヤッ
「「「「ゾクッ?!」」」」
一気に辺りの気温が下がりました。
呪いコケシが笑ったようです?!
錯覚じゃないよ!
「カーナさま、あのコケシ?また、笑いました!?」
「怖いのじゃ!ブルブルなのじゃ!」
「カーナおねえさま、悪寒がします!」
「いや皆私を前に押し出さない!私もゾクッてするから勘弁して!本当にゾクッってしてるから!」
呪いコケシは私達から丁度4マス先、そこで此方に向いて笑ってます。
4マス先だから《死にマス》!?
そして、このコケシの怖いところはどの角度から見ても、いつの間にかコッチを向いているって事。
つまり完全に私達を呪い殺す気満々です。
本気で逃げていいですか?
「は?!」
そこでよくよく見てみたら、コケシも数が増えてます!?
①呪いのコケシ
②黒子のコケシ
③黒装束コケシ 六体(コケシの数え方)
④偉そうコケシ
⑤モヒカンケシ
「う、このコケシ達って?!」
「カーナさま、私達を連れ去った者です!」
「己れ!痴れ者達じゃ」
「おねえさま方、悪い人達ですか?」
まさにそう。
じゃあこの呪いコケシは、あの怨霊ロボに違いありません。
バリンッ
「「「「ひっ!?」」」」
その時でした。
音がした途端、あの呪いコケシの背中が割れて其処から無数の手が出てきたのです。
手のないコケシが無数の手を背負ってる姿はアンバランスながらも悪感、ではなく圧巻。
紛れもない《機動怨霊ロボTYPEマークⅡ》に違いありません。
うーん、次のサイコロ振りが難しくなりました。
ハッキリ言って無理ゲーです。
ハードモード突入必死、黒子女子にサンドバック妖精やらかす将来しかありません。
やってられるかーっ!
「はあ、気が滅入るわ。ところでグルちゃん、素朴な疑問なんだけど」
「カーナおねえさま?」
「スゴロクマップはグルちゃんの能力よね?それが他のチームに適用されてるのは何故なの?他のチームにもスゴロクマップが配られたって事??」
本当に素朴な疑問です。
まずこのスゴロクマップはサイコロ振りしないとコマを進めません。
なのに他チームのコマが現れ進められてるという事実は、他のチームにもスゴロクマップが手元あるという事に他なりません。
そんな事って有りうるの??
「あの、自分でもよく分からないんです」
「分からない?」
「はい。その、まだ自分で自分の能力を理解してないというか、この能力の及ぶ範囲が分からないというか」
「範囲?」
「私にはマップを一度きに参加者全員に提供出来る能力があるんです。ただ、その範囲については自分もよく分からなくて………」
範囲とは適用範囲の事ですか。
するとグルちゃんの適用範囲はこのダンジョン全体に及んでいるのかも知れません。
その対象はスゴロク参加者になりうる《可能性ある者は全て》が対象なのでしょう。
なんというゲームメーカー。
これは最早、ダンジョン運営に匹敵する《支配力》とも云えるのではないでしょうか。
「カーナさま、あれ」
「オルデアンちゃん?!」
おお、何やら海底に建築物が見えてきました。
アレがファイブステージ(Ⅴ)なんでしょうか?
「いや、これは………」
一見して古い中国の築城のような建築物。
朱色主体の瓦屋根に全体としてズングリとしたデザイン。
其れでいて大らかに造られたメルヘンチックな装いは、まるで《あの》物語に出てくるような外観です。
ああ、海岸、子供によるイジメ、亀のお礼ときてすぐに思い出すべきでした。
「竜宮城………」
「カーナさま、りゅうぐう?」
「見たこともない城なのじゃ!」
「カーナおねえさま、もしかして」
《うらしまたろう伝説》
漁師の浦島太郎は悪ガキ共に苛められている亀を助けたところ、お礼に竜宮城に連れて行かれます。
竜宮城では美しい乙姫さんにもてなされ、見たことないご馳走や音楽とともに月日も忘れるくらい楽しい日々を過ごします。
ですが暫く経ったある日、母親のことが心配になった浦島太郎は家に帰ろうとするのでした。
すると乙姫から「決して開けてはいけない」という玉手箱を渡されました。
その玉手箱を貰い浦島太郎が自分の村に戻ると、地上では長い年月が過ぎていたことを知ります。
そして浦島太郎は自身の事を誰も知らない寂しさから玉手箱を開けてしまい、おじいさんになってしまうのです。
この伝説には教訓が含まれてます。
約束は守るべきものとか、目先の快楽におぼれてはいけないとか。
どちらにせよ、ファイブステージ(Ⅴ)のステージBOSSは彼女なんでしょうね。
さて、どんな展開が始まるのか。
先ずは慎重に対処するしかないでしょう。




