第168話 全員?再会
◆ダンジョン温泉
カーナ視点
「ふう、これで安心ね。三保の松原似の場所だからロクナもんじゃないと思ったけど、伝説に出てくる漁師がまさかロリコン小太りジャージ男だったとはね」
「あの、カーナさま?ミホノマツバラとは何ですか?」
「ああ、オルデアンちゃん。私の知ってる伝承で空から天女が舞い降りたって伝説がある場所があって、そこが《三保の松原》っていうの。丁度こんな海岸なのよ」
「デンショウ?」
「言い伝えとか昔話の類いね。そのお話の中では天女と漁師のやり取りが伝わっているのよ」
「アヤツは妾の事を最初はテンニョと言っておった。テンニョとは何じゃ?」
「お空に住む神様の使いみたいな存在かしら?お話はこうよ。『天から降った天女が羽衣を脱いで水浴していると人間の男が羽衣を盗み隠して結婚を迫った。天女は仕方なく男と結婚し、そして子をもうけた。その後、羽衣を捜し出した天女は引き止める男を振り切り天に帰った』というお話なの。ようは弱みを握って無理やり結婚したって話よ」
「カーナさま、無理やりですか?怖い!」
「恐ろしいのじゃ!」
「もう大丈夫よ。アイツはもう★になったから」
うーん、二人とも想像以上に怖がってます。
このままトラウマが残らなければいいのですが。
「カーナさま。これからどうしましょう?」
「そーね。先ずはグルちゃんを捜しましょう。彼女が居ないとスゴロクマップが使えないわ。織姫ちゃん、グルちゃんと何処で別れたか分かる?」
「分からんのじゃ。肩が軽くなったと思ったらもう居なかったのじゃ」
うーん、困りました。
グルちゃんの消息が分かりません。
どうしましょう?
「そうじゃ!?肩が軽くなったのは向こうの方だったのじゃ!」
「向こうって、あの織姫ちゃんが出て来た松林の向こう?」
「そうじゃ。松林の中にさっきの男の家があるんじゃが、その先も海岸になっておったのじゃ」
「なるほど」
ふむふむ、ようは松林は半島みたいなもので、松林の向こうも海岸のようです。
ならば海岸線に沿って向かうより、松林を抜けてショートカットすれば早くに現場に着けますね。
「じゃ二人共、グルちゃんを捜しに行きましょう!」
「はい、カーナさま」
「分かったのじゃ」
こうして松林に踏み込んだ私達。
すると間もなく、藁葺き屋根が見えてきました。
あれが例のロリコン男の家かしら?
「織姫ちゃん、あれが男の家?」
「そうなのじゃ。あそこで妾はカーナたんを三日待ったのじゃ」
「カーナさま、私は半日でした」
「私は一時間くらい、みんな時間が違うわね?この空間の時間が不安定?」
何か怖いですね。
下手したらもっと時間が進んだりしちゃうんでしょか。
と、いいつつ藁葺き屋根の農家風家屋前に来ました。
ここを通り過ぎると、また海岸があるハズです。
「あの?カーナさま???」
「え?」
聞いた事のある声に振り返ると、何とグルちゃんが家の中から現れました。
え?どういう事???
「うわああーん、やっと会えましたーっ!」
「きゃ、グルちゃん!?」
「グルちゃん!」
「おお、グルちゃん!会えたのじゃ!」
何にしても合流できたのは良かったです。
ですがグルちゃんは、みすぼらしい昔和服みたいなものを着ています。
水着じゃなかったの?
「良かったグルちゃん。今から捜そうとしてたのよ」
「カーナおねえさま。私はこの一週間、ずっと皆さんを捜してました」
「「「一週間!?」」」
それから聞いたグルちゃんの話は飛んでもないものでした。
浜に打ち上げられたグルちゃんは必死に私達を捜したんですが《時間違い》で見つからず、結局力尽きて倒れてしまったんだそうです。
それで気づいたら、あのロリコン男に籠に閉じ込められていて『出たければ書類に判を押せ』って言われ、仕方なく判を押しました。
だけどその書類は《婚姻届》だったらしく、『今からお前、オデの奥さん。だから何処にも行かせないだあ』と言われ、結局出して貰えず今しがた籠を壊して脱出してきたとの事でした。
あの男、グルちゃんにも監禁婚を迫っていたんですね。
最低最悪のロリコンだったようです。
くっそう、もっと懲らしめてやるんでした。
「一週間も大変だったわね。ごめんね、グルちゃん。早く駆けつけられなかったから」
「時間がおかしくなってるならカーナおねえさまのせいではありません。私はもう大丈夫です」
「グルちゃん、無事で良かったです」
「本当に会えて良かったのじゃ」
「おねえさま方、ありがとう」
ああ、生き別れだった三姉妹の涙涙の再会です。
感動的ですね。
お母さんはとっても嬉しいわ。




