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第140話満月の溢れ2

◆アルタクス視点


《ダンジョンの扉を人為的に閉る方法》


「それはダンジョンに聖獣を与える事だ」

「聖獣、雪ウサギですか!?」

「そうだ」



皇族が年一回、春の大祭を催し《雪ウサギ狩り》と称して聖獣雪ウサギを捕まえる行事行っている。

実は、この時に捕まえる雪ウサギは二羽。

その二羽は皇宮で大事に保護され《満月の溢れ》の日まで飼われる事になる。

そして《満月の溢れ》の翌日、朝日が昇りゴーストゾンビが一旦ダンジョン内に戻ったところを見計らい、開いたままの扉の中に雪ウサギを一羽捧げるのだ。



「雪ウサギを飲み込んだダンジョンは満足するのか、その扉を再び閉じ《満月の溢れ》は終わる事になる」

「……あの大祭にそんな事情があったとは。では、雪ウサギがいれば扉を任意に開け閉めできる、というわけですか」

「そう単純な話しではない。可能性の話しだ。雪ウサギで扉が閉じる、ならば開く事も可能だとは私の考えに過ぎない。まだ行った事は無いのだからな」

「しかし他に考え付く方法も無いのでしょう?」

「そう、だ」

「ならば私が皇宮に向かい、雪ウサギをここに連れてまいりましょう。お任せください」

ババッ

「メイ!?待て、まだ可能性の話しだと」


ヒヒーンッ

「お任せを。ここまでの件、城にも伝え必ずや雪ウサギをお持ち致します。お任せを!」



メイは素早く馬に乗ると、手綱を引き城を目指して走り出していた。

ふう、相変わらず早合点で動く副官だ。

だが他に方法を思い付かないのも確かな事。

ここはメイを待つしかあるまい。


しかし、もう一つの問題がある。


ダンジョンに侵入出来たとして、襲ってくるゴーストゾンビやアンデッドにどう対処すればいいかという事だ。


私はマスター▪ラクネスの試練を受け、皇族と同じ(ごう)を背負った。

つまり皇族並みの聖なる力(業)を持ち、ゴーストゾンビやアンデッドを退けられる体質を持ってはいる。


だが、部下達は違う。

果たしたてダンジョン内に入れた時、私は部下達を何処まで守る事が出来るだろうか。



「お前達、仮にダンジョン内に入ったとして、そこはゴーストゾンビとアンデッドの巣窟になる。ゴーストゾンビは直接攻撃は少ないが最下層のアンデッドは別。相当な覚悟が必要になる。それでも私に従ってくれるか?覚悟の無い者に無理強いはしない。私だけでも進むつもりだ。メイが戻るまでに判断して欲しい」



部下達は私の言葉に顔を見合わせたが、結局脱落者は居なかった。


そして間もなくメイが戻った。

何故か、一台の馬車が彼女の後に続いていた。




◆◇◇◇




「アルタクス!オルデアン様の行方が判明したと!?」

御姫(おひい)様、織姫様は何処に?」

「な!??」


馬車から現れたのは、オルデアン様の侍女であるテリアとガルシア帝国織姫様侍女、伽凛様。

馬車を降りるやいなや、必死の形相で私に掴みかかった。


メイ、何を城で報告した!?



「二人とも落ち着いて。身体は大丈夫なんですか?」


まだ腕など包帯が取れずに痛々しい。

何故に療養中の二人にまで話しがいった?

私がメイを睨むと、彼女はばつが悪そうに明後日(あさって)を向く。

メイ~っ!


「なんの、オルデアン様の行方が分かったと聞き、寝てなどはいられません!」

「そうですとも。織姫様の安否が心配で心配でずっと夜も寝れませぬ!どうか私どももお連れ下さい!」



たった今、部下達にダンジョンの危険性を解き、覚悟を示してもらったのに、明らかにその部下達よりお荷物になり得る侍女二人が同行を強要してくる。

勘弁してくれ。



「はぁ、それでメイ、雪ウサギは持ち出せたか?」

「それならココに居ますわ。それは可愛くて可愛くて」

「何??」


獣入れのカゴを持っている様子がないが《ここに居る》とはどういう事なのだ?

メイの回答を疑問に思い、問いただした。



「ココです。ココ」

「何故に胸を指すのだ。とにかく雪ウサギをダンジョンの扉の前に置け。ああメイ、他の部下には言ったが、ダンジョン内はゴーストゾンビとアンデッドの巣窟だ。無理強いはしない。お前は扉の前で警護してくれればいいって、おい???!何を」


私が話している最中に胸元に手を入れるメイ。

一体何をしているのだ!?



「獣入れのカゴが見付からなかったので、私の胸元に入れて馬を駆りました。意外に大人しいものです。肌触りも最高で!」

『キュッ?』

「?!」


そう言って胸元から雪ウサギを取り出したメイ。

突拍子ないな?!

本当に私の副官で子爵家令嬢なんだろうか。

頭が痛くなってきた。



「分かったからメイ、そのまま抱えてダンジョン扉の前に行け。扉に反応がなければ其までだ」



そうだ。

まだ何も始まってない。

これでダンジョンの扉が開かなければ、事態は振りだしに戻る。


「分かりました、アルタクス殿」


彼女は胸元から出した雪ウサギを肩に乗せると、そのままダンジョン扉の前に向かう。

雪ウサギはやたらに懐いているようだが、短期間に聖獣を懐かせるなど、彼女の才能なのだろうか。

色々と謎が多い副官だ。



『キュ??』

「コレか?コレはコッコドゥという魔獣だ」

『ゴケケ??』

『コケーッ』



……妙に馴染んでるな。

彼女は《獣使い》の才能があったようだ。

まあいい。


果たして扉は?



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ

ギギギッギギギギギギッ


「?!」

「「扉が!!」」

「開くっ!」

『キュッ?』

『ケケッ!』

『ゴケ!』

「「「「おお!」」」」



ガコンッ



完全に開いたダンジョンの扉。

ついに私達は、ダンジョン扉を開く事に成功した。


オルデアン様、今からこのアルタクス、お迎えに参ります!


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