第132話 サードステージ16
◆ダンジョン体育館
カーナ視点
「お、お頭、サ、サーブしやすね」
「おおう、《《やったれ》》だっちゃ」
おーと?
黒装束の一人、うやうやしくエンドライン向こう側に立ちました。
お頭に宣言してサーブ行動に入ります。
何か足腰がブルブルしてますが、大丈夫でしょうか?
応援女子ゴースト(((((そーれ)))))
黒装束B「おりゃああ、あぎゃ!?」
バチンッズデンッ
おお!?
掛け声だけは勇ましかったがボールを打った瞬間、サーブした黒装束はコートの上でスッテンコロリン、お尻を床に着けました。
見事にやらかしましたね。
果たしてボールの行方は……と、何とかボールが飛んできたようです。
あと突然、観客席に現れた応援女子ゴーストゾンビ達が応援の掛け声を合唱します。
そういえば最近のバレー中継、この掛け声がありません。
何か問題ありました?
ご存知の方、後でファンレターをお願いします。
送り先は以下へ。
《神奈川県横浜市港区郵便局私書箱99999》
え?そんな私書箱無い?
そうですよね。
異世界から届く私書箱なんて私も聞いた事はありません。
まあ冗談はさて置き、ボールの行方を追いましょう。
さて、ボールの行方は?
ヒョロヒョロヒョロッ
ぱさっ、ポンポンポンポンッ
コロコロ
あら残念。
黒装束がサーブしたボールは、ネットに阻まれ虚しく床に転がります。
女子ゴーストゾンビ達の掛け声が無駄になりました。
これでサーブ権の移行、チャンスです!
さあ反撃ですよ。
「で、誰がサーブ打つのかな?」
「フン▪ボルトさんがヒューリュリ様だっていってました」
『待て、人間の小娘。何故に我に振る?!』
「お犬様、サーブを打つのじゃ!」
何と、ヒューリュリ様がサーブ順だったようです。
でも何かヒューリュリ様は躊躇しています。
練習はしていたはずだし、何を今さら躊躇する事があるのでしょうか?
「ヒューリュリ様、往生際が悪いです。さっさと位置について下さい。はい、ボール!」
ぽいっ
『あ、主っ?!』
私は、モタモタしてるヒューリュリ様にバレーボールを投げつけます。
あれ?
そういえばヒューリュリ様、練習の時はボールを追いかける姿しか見てません。
ボールは追いかけていたから、しっかり練習はしていると思っていたのです。
サーブを打つ姿は見てない……?
ぽーん、ぽん、ぽん、ぽん。
私が投げたバレーボールが転がってヒューリュリ様の前を通り過ぎました。
パスしたんですから、ちゃんと取ってとヒューリュリ様を見上げれば……??
『わうっ!』
ヒューリュリ様、ボールにじゃれつきながらシッポを振ってボールと一緒に退場です。
そのまま体育館を出ていってしまい、私はフリーズするしかありません。
はあ!????
「な、何が、どうして??」
「ああ、ヒューリュリ様が《《また》》行っちゃいました」
「《《練習の時と同じ》》じゃな」
「ちょっ!オルデアンちゃん、織姫ちゃん、また?練習の時と同じ?って?」
「カーナ様、練習通りのヒューリュリ様です」
「だから同じなんじゃ、カーナたん」
「?!」
ああ、何という事でしょう。
ボールという玩具を得たヒューリュリ様は《《只のワンコ》》だという事を失念しておりました。
つまり練習で私が見ていたのは、彼がボールとワンコ遊びをしていたところだったという訳です。
聖獣フェンリルの肩書きが跡形もありません。
ピーッ
『ほら、後がつかえてる。さっさとサーブしやがれ!』
すっかりベタな審判に成り下がった元コーチ、いや、フンボルトペンギンが煩く喚き立てます。
コッチ、只でさえメンバー足らんのにヒューリュリ様行方不明でこれ以上どうしろと?
あ、居ても無意味か。
「カーナ様……」
「カーナたん……」
「はぁ、仕方ないわね」
取り敢えずは、私がサーブするしかないようです。
果たして背丈10センチ、1歳の私にサーブを打つ事が出来るでしょうか?
むむむどうしましょ、って感じです。
とにかくボールを持ち上げ、エンドラインの先に立ちました。
皆が私に注目します。
でも問題はここからです。
まあ、このミニマムボディ。
実は意外とパワフルなんです。
自身の身体より大きいバレーボールを軽々持てる位は正直朝飯前というか、普通に余裕に持てます。
昆虫のアリさんが身体の何倍もの獲物を運べたりするみたいに、私もそんなスーパーパワーがあるみたい。
凄いでしょう?
つまり
「マイナス50度ならバナナで釘が打てますサーブ!!」(意味不明)
バインッ
レオ『はあ?なんだ、その掛け声??』
ゴーストゾンビ女子応援団
((((((((((そーれ、釘~っ?)))))))))
キーン、ババンッ
『『『『『!!!』』』』』
『だっちゃ?!!』
殆ど頭突き釘サーブ。
いや顔面です。(痛い)
私の顔面で蒙スピードを得たボールは、みるみるネットを飛び越え棒立ちの黒装束達、その中央コートに突き刺さりました。
妖精の様に舞い、ハンマーのように打つ。
魔球【釘サーブ】の完成です。
《マイナス50度ならバナナで釘が打てるサーブ》は長いから却下で。
因みにこのサーブ、鼻血が出ます。
やべぇです。
「カーナ様、凄いです!」
「流石、カーナたんなのじゃ!!」
そうであろう。
そうであろう。
よきに計らえ、であります。
二人の幼女から絶賛の褒め称え。
ピノキオより鼻高々ですよ~、あ、嘘ついてないから。
ピィーッ((0ー1))
おっと、点数掲示板を係のゴーストゾンビさんが捲ります。
先ずは1点、先取です。
でも先は長い。
6人制バレーはワンセット25点、5セットマッチ で 3セット を先取したチームが勝利をつかみます。
つまり
「私の顔面、何時まで《《もつ》》かと言う事よ!」
鼻血を足らして絶叫した私でした。




