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第127話 サードステージ11

◆ダンジョン内ゲレンデ?

カーナ視点


ザザザザザザッザシュッザザザッ


(あるじ)、これでどうだ━━?!』

「カーナ先生、上手く滑れてますかぁ!?」

「カーナたん先生、遅いのじゃ!」


「ちょ、ちょっと待ってよ、皆?!」



速い!?

速い、速い、速い!??

あり得な━━━━━━━━い?!



私はこれでも上級者に近い中級で、しかも要所でエッジを効かせたターンを決めつつ 直滑降(ちょっかっこう)を多様しています。

なのに……ボーゲンの二人と一頭に全く追いつく気がしません。


二人と一頭のスキースタイルは、ボーゲンの姿勢はそのままに上級者コースのコブ山をものともせず、真っ直ぐに滑空する直線形ボーゲンです。

コブ山も避けずに安定した滑りをするその姿。技術もスタイルも伴っていなく唯々速いって何でやねん!?


いくら体格が十分の一とはいえ、中級先生の私が追いつけない理不尽。

こんな事があっていいのでしょうか?!

ん?



「あ、虫いた!」

「「「ぎゃああ、冷たい、寒い、足が痛いよーっ!!!」」」

「な、姫達が!?……」

「……………」



シャシャーッ

「………」

えー途中、雪の中でスタックしてる人形と雪だるま黒装束達に遭遇しましたが、私は全く気にしません。

何故なら今は一刻も早くこの不条理を解消し、ボーゲンだけの教え子達に先生の威厳を示さなければならないからです。


私が先生!

先生は教え子に負ける事は許されない。

これは鉄の掟なのです。



「待たんかい、この不条理ボーゲン(初心者)チーム!!」




◆◇◆




「カーナ先生!私の滑り、どうでしたか?」

(わらわ)の滑りはどうしゃ?カッコ良かったのじゃ?」

(あるじ)どうだ?二人を守り抜いたぞ。褒めてほしいのだ!ん?真っ青に息を切らしてどうしたのだ?』



はあっはあっはあっはあっはあっはあっはあっはあっはあっはあっ


涼しい顔でにこやかに勝ち誇る二人と一頭。

その姿は汗すらかいておりません。


数分後、私達は難なく上級者コースを滑り降りました。

ゲレンデの先には雪の無い新ゾーン、フォーステージが広がります。


結局全力の私は、汗だくになりながら先行する教え子達に数百メートルの差をつけられて完敗しました。

完全にしてヤられたという訳です。

わ、私は何を間違ったのでしょう?!



「それにしても絶壁のような坂をよく転げずに降りられたものです。まるで体が鳥になった気分でした」

「全くじゃ。まるで空を飛んでるようだったぞよ」

『はっはっはっお前達、気分ではなく実際に空を飛んでおったのだ。雪の上ギリギリの高さでな。我の風魔法によるものだ』



ぴくりっ

「…………風、魔、法……?」

私が頭抱えて悩んでいると、ヒューリュリ様と二人の会話が聞こえてきました。

んん?風魔法って???



「そうだったんですね。全てはヒューリュリ様のお力のお陰。有り難う御座いますヒューリュリ様!」

「おお、これはお犬様の魔法だったのじゃ?道理で(わらわ)は速かったわけじゃ」

『そうだ。お前達、もっと感謝するのだ。この聖獣フェンリルである我の偉大さをもっと称えるがよい』

「え?ヒューリュリ様、伝説の神獣フェンリル様だったのですか?凄いです!!」

「おお、お犬様は神獣フェンリル様じゃったとは!?モフモフしたいのじゃ!」

『うむうむ、良いぞ良いぞ、もっと我を称えるがよい。我こそが偉大なる神獣フェンリル、神の森の守護者なりなのだ』



鼻高だかに胸を張るヒューリュリ様。

その姿にウットリして左右に駆け寄る二人の幼女達。

ロリコンハーレムを形成する変態雄犬にしか見えません。

は!?じゃあ何?

ヒューリュリ様の風魔法があれば最初からスキー教室はいらなかった?

ヒューリュリ様が風魔法でチート(ズル)して私の先生の威厳をコテンパンにしてくれた???!

本来なら私が尊敬され感謝されたはずの未来をぶち壊し、その全てをかっさらったのがヒューリュリ様!!



(あるじ)、見てくれ。二人には傷一つついておらぬ。命じられた通り守り抜いたぞ。褒めてほしいのだ』

「………ヒューリュリ様ぁ、よーくやってくれましたぁ」

『あ、(あるじ)、ど、どうしたのだ?背中から黒いオーラが出ているのだ?!』

「黒いオナラ?ヒューリュリ様は私が臭いんですかぁ」

(あるじ)、何か顔が恐いのだ!?』

「うふふ、怖くないですよぉ。貴方にこれからご褒美を上げるんですからぁ」

『ご褒美?』

「ええ、よく私の命じた通り二人を守り抜きました。そして魔法で私の先生の威厳を木っ端微塵にもね」

『あ、(あるじ)━━━━!???』

「チンチン!!」

「きゃああ、ヒューリュリ様!?」

「うお?!ヒューリュリ様、その体勢は何のポーズじゃ?何か、可愛いのじゃ!」



私の先生威厳をぶち壊しにしてくれたヒューリュリ様、有り難う御座います。

ご褒美にチンチン体勢をしばし命じました。

これでヒューリュリ様の威厳は木っ端微塵です。

従魔であるヒューリュリ様は(あるじ)である私の言う事に逆らえません。

貴方に非はないのですが、私の八つ当たりに付き合って貰います。

あしからず、です。


(あるじ)、何故だぁ!????』




ああ、男ヒューリュリ………

理不尽。


ちょーん。


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