第125話 サードステージ9(リフトリフトリフト?)
◆ダンジョン内ゲレンデ???
カーナ視点
とにかく山向こうに行くにはリフトに乗らねばなりません。
そしてリフトに乗るにはスキー装備を着用しなければならないのです。
まずは《ここ》からですね。
『主、何で我だけ除け者にするのだ!?』
「デリカシーを考えて下さいヒューリュリ様!性別一応オスでしょ!」
「カーナ様、すきーうえあー?に手が通りません」
「オルデアンちゃん、チャック開けないと着れないのよ!」
「カーナたん、これはどうやって巻くのじゃ?」
「織姫ちゃん、スキーパンツを帯にしない!」
まずはロッカールームでお着替え開始です。
一緒に着替えようとしたヒューリュリ様を追い出して、やんややんやの大騒ぎ。
考えてみたらスキーウエアーなんて見るのも触るのも初めての二人と一頭。
ヒューリュリ様は毛皮だからニット帽だけですが、他の二人はそうはいきません。
最新式スキーウエアーなんて彼女らにとっては私の宇宙服に相当します。
チャックから知らないし、まして女性はドレスか着物の世界に生きてきた二人です。
あーでもない、こーでもないと一から教えながら着せるしかありません。
悪戦苦闘しながらどうにか着せる事が出来ました。
「ぐは!?着替えに一時間強!つっかれた……」
「カーナ様、何か温かくてステキです」
金髪碧眼で北欧幼女のオルデアンちゃん。
ピンク系でコーデして上手く纏まりました。
ニット帽にウエアーでメーカーはフェニックスで統一です。
子供用は可愛いですね。
「着物やドレスと違って動き易いのじゃ」
艶々黒髪黒目、東方幼女の織姫ちゃん。
やっぱり赤系でコーデしました。
こちらもニット帽にウエアーでメーカーはデサント。
似合ってます。
二人とも可愛い。
私?
妖精用は無いので《モルト君予備》を拝借しました。(何故か亜空間収納に入ってました)
全身真っ黒革製ツナギです。
ヘルメットがよく似合います。
メーカーはカワサキ……???
バイクメーカーじゃん?!
「カーナ様、プリンでも食べます?」
「いや、オルデアンちゃん。ちゃんとご飯食べよ?こっち来てデザートしか食べてないよね?」
「デザートで十分なのじゃ!ショートケーキが食べたいのじゃ!」
すっかり私のデザートストックを宛てにした二人の言動!?
私が数ヶ月かけて溜め込んだご褒美セットのヘソクリ。
セット物から一個だけチョロまかして亜空間収納してたのが完全にバレバレです。
このままでは食い尽くされるのは時間の問題。
ヤバいです!
「オルデアンちゃん織姫ちゃん、甘い物ばかりじゃ虫歯になるし身体に悪いわよ?!それより皆、お腹空かないの?」
「カーナ様、私は大丈夫です」
「妾も平気じゃ」
『うむ、平気だな』
「ダンジョン内に入って数時間は経つと思うけど、そういえば私もお腹空かないわ?」
『ダンジョン内では外と時間の流れが違うのだろう。よくある話だな』
「ヒューリュリ様、そういう事?!」
成る程ダンジョン内は異空間。
時間の流れが違うのは当たり前な事なのでしょう。
って、それでは私が困るのです。
「じゃあ尚更デザートは禁止。糖質ばかりじゃ身体に毒。ブクブク太って転がっちゃうわよ!」
「転がちゃうのですか、カーナ様?」
「太るのは嫌じゃ!今は我慢するのじゃ」
ふう、何とか言い聞かせに成功しました。
しばらくこの手でいきましょう。
◆
さてさて、完全武装でリフト乗り場に来た私達。さっそくリフトの洗礼を受けました。
「カーナ様、お尻に椅子が付きません」
「怖いのじゃ!!」
『こんなの、どうやって乗るのだ?!』
「どうやってって、飛び乗るしかないでしょう!」
居ますよね?
ずっとリフトに乗れずに他の客の足止めをしている人。
まさにその状態です。
ヒューリュリ様は弾かれると思ったんですがペット同伴可でオーケーだそうです。
リフトでペット同伴可ってヤバくない?
ゴンドラタイプなら普通にある?
ごめんなさい、知りませんでした。
とにかくギャーギャーいうヒューリュリ様をワンコ座りで送り出して、私達は一つのリフト席に乗り込みました。
幸いフード付きクワッドタイプだったので、何とか三人で乗り込みが出来ました。
「きゃあ、カーナ様!足が地面から離れました!」
「そーだよ。そーいうもんだもの」
「カーナたん、靴が重いのじゃ」
「スキー靴だからね」
『主、揺れて怖いのだ!?』
「リフトだからね」
板を担いで乗る二人。
慣れてきたのか、担ぎ方が様になってます。
何事も経験ですよね。
その後、終点間際でリフトが止まるアクシデントがありましたが何とか山頂に到着です。
因みにリフトを止めたのはヒューリュリ様。
降りられずにそのまま回転して下りリフトになる寸前、係員ゾンビさんが止めてくれました。
ヨロヨロと力無くリフトを降りる雄犬様。
雪面に毛皮ジュータンと化しました。
情けないです。
「ふわぁ、景色がサイコー!」
「カーナ様、何か楽しいです」
「悪くないのじゃ!」
『リフトは二度と乗らないのだ!!』
ついに山頂に辿り着いた私達。
さあ、本格スキー訓練がスタートしますよ!




