第123話 サードステージ7(ピラミッド)
◆ピラミッド大回廊
カーナ視点
「それにしても、この壺は変わった作りじゃの?つやつやして綺麗じゃが、やたら軽くてプニプニするのじゃ」
「きっと神力が宿ってるからよ。なんたって【幸運の壺】だもの。ね、ヒューリュリ様」
『そうだ。我はこれを家宝にする事にしたぞ!』
「は、ははは、よ、良かった……ね?」
10センチくらいの茶色の壺を片手と肉球に乗せ、うっとりと見とれる織姫ちゃん、オルデアンちゃん、ヒューリュリ様。
だけどその壺は、二百円ガチャガチャに入っているようなセルロイド製の粗悪品です。
(よく燃えます)
結局私が止めるのも聞かず、インチキ手品師ゾンビおじさんから各々壺を購入した二人と一頭。
お陰でピラミッド宝探しドキドキわくわくミステリーツアーに参加出来てる訳だけど、壺にうっとりする姿は残念でなりません。
まあ、この事実を知るのは私だけ。
【知らぬが仏】という事でしょう。
南無~。
ついでに、友好的なツアコンお姉さんゴーストゾンビに色々とゾンビさん達との付き合い方について話を聞きました。
まずは
◇ゴーストゾンビ付き合い方その一
▶ゴーストゾンビにむやみに触らない。
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基本、ゴーストゾンビは半透明であるだけで、腐ってたり、骨だったりはありません。
その姿は生気はないですが、一般ゴーストゾンビは普通に人間の姿をしています。
ただその身体に触れた人間は、原理は不明ですが同じく生気のない半透明ゴーストゾンビになってしまいます。
ですから、ゴーストゾンビに《《触らない》》は基本になります。
◇ゴーストゾンビ付き合い方その二
▶ゴーストゾンビの食べ物は触らない、食べない。
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えーと、新幹線でパーサーお姉さんゴーストゾンビがワゴン販売してましたが、それに群がった黒装束達が半透明ゾンビになりました。
つまりゴーストゾンビが出す食べ物は残念ながら触ったり食べたりはNGです。
だからさっき、惑星イオ京都タワーで八つ橋が売ってたんですが、買おうとしたオルデアンちゃん達を慌てて制止しました。
説得にキープしてたプリンを出すハメになりましたが、何とか事なきを得た次第で御座います。
え?新聞でも半透明になった?
ああ、あれは特別です。
だってキョーフ新聞ですから。
見ると寿命が減っちゃいますから。
◇ゴーストゾンビ付き合い方その三
▶ゴーストゾンビはエキストラ。
(その振る舞いには悪人と善人がいる)
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ゴーストゾンビは基本、善良な市民がほとんどです。しかも生気がないので大抵は他人に興味を示さず黙々と自身の好きな事をやってます。
また、彼らは何者かから独自に役目を与えられていて、各々にエキストラをしてるそうです。
残念ながらツアコンお姉さんゴーストゾンビもその何者かの存在が分からないそうで、ダンジョンを形成する大きな謎になってます。
以上、三つがゴーストゾンビさん達とのお付き合いに必要なものですが、今回の大きな成果は【ゴーストゾンビはエキストラ】と、いう事でしょうか。
これは大きな成果です。
「カーナ様、エキストラとは何ですか?」
「えきすとらとは何じゃ?」
『エキストラ?知らんな』
「えーと、エキストラは」
ピロン
◉エキストラとは通行人、群衆など映画やドラマなどで俳優が演技している後ろに映るストーリー上、重要性の低い出演者の事。
ナビちゃん、ウンチクいいから!
コホン
「ようは、誰かから適当な役柄を与えられて演じている人の事。何らかの強制力があるみたいだけど、ある程度好き勝手に動けているみたい。でもその役柄を完全に外れる事は出来ないようだわ」
「不本意に何らかの仕事をさせられているんですか?あのツアコンお姉さんも?」
「嫌がってはいないようじゃが?」
『うむ、恐らく洗脳のように今の役目に不満を感じない様になっているのかも知れん。何とも悪辣な話だな』
「ゴーストゾンビの仕組みもよく分からないからもう少し観察が必要ね。この謎を解く事が、ダンジョン出口に繋がる大きなヒントの様な気がするわ」
ツアコンお姉さん、私達の話に反応して力無く微笑んだ。
ゴーストゾンビだからその命は尽きているのだろうけど、こうした形でダンジョンに囚われているなら魂の安息は永遠に得られない事になります。
それはツアコンお姉さんにとって不幸でしかありません。
この瞬間、私達はゴーストゾンビの皆さんを解放する使命があると理解しました。
全員の目が輝きます。
このブラックなダンジョンテーマパークの悪徳運営会社を摘発し、被害者救済を成し遂げてみせましょう!
ゴーゴーレッツゴー、今から私達はゴーストゾンビ国際救助隊よ!!




