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第116話 あの魔物(人 )は今▪▪▪

◆テータニア皇国▪皇都

とある貴族街の通り

ナレーター視点



「ゴケ?」


タッタッタッタッ、キョロキョロ??


「ゴケケ??」


タッタッタッタッ、キョロキョロ??


「ゴケケ、ゴケ???」


タッタッタッタッ、キョロキョロ??



ここはとある貴族街。

噴水がある人々の憩いの場所になっている所である。

あのダンジョン神殿から数キロの位置にあり、皇城からは更に離れる。



「お母様?あの噴水をグルグル回っている生き物は何なの?」

「ああ、あれはコッコドゥと云われる魔獣よ」

「魔獣?怖いわ!」

「大丈夫よ。コッコドゥは魔獣と言っても卵を生んでくれる皇国の有益魔獣よ」

「卵!私、エッグタルト好物なの!」

「そうよ。その卵を私達に与えてくれるのはコッコドゥのお陰ね」

「そうなのね?じゃあ、あのコッコドゥをお家に連れて帰ったら卵を沢山くれるかしら」

「うーん、あれはオスだから卵は生まないわね」

「オス?オスは卵を生まないの?」

「そうよ。お父様も赤ちゃんを産まないでしょ。そういうものなのよ」

「そうなんだ。じゃあ、お母様はどうやって私を産んだの?」

「どうやってって…………」

「お母様?」




暗闇が西に消え日が昇ると、テータニア皇国に新しい朝が訪れる。

暖かな日の光は人々の活動を誘い、いつもの日常が始まるのだ。


ふと見ると、とある貴族街の噴水広場に貴族階級と思われるドレスを着た母娘がいる。

母親は娘の際どい質問に真っ赤になっており、いくつかの言葉を交わして噴水広場から離れていった。

その後母親がどの様に娘と会話したかは定かではないが、娘の質問に苦慮して答えたであろう事が想像された。


ところで親子が噂していたコッコドゥは、あの神殿から颯爽と城に向かって走っていったカーナの従魔であるテバサキである。

彼はカーナのスキル、方向音痴に掛かっており、現在絶賛迷子中であった。




「あのコッコドゥ、なんやけったいやな。噴水の周りをグルグルと?」

「まあ、いいやないか。どうせ無害なんだし」

「そりゃそうだが」



ザッザッザッザッザッザッザッ


そんな日常を壊すような突然の多数の足音。

この平和ボケしたような噴水広場に数十人の兵士の集団が通りかかる。



「うおっ?!何だ、こんな朝っぱらから?」

「おい、知らないのか?」

「知らないって、何が?」

「平民街でオルデアン姫とガルシア帝国の姫が拐われたんだよ。だから一昨日から城の騎士団総出でその行方を捜してるんだ」

「大変じゃないか?!」

「ああ、そうさ」

「さっきの騎士達の憔悴しきった顔、まだ姫さま達が見付からないって事だよな」

「どうやらそのようだ。早く無事に見つかるといいけど」

「ああ、全くだ。皇国も物騒になったものだな」



広場に来た市民達がそんな話をしていると、城の方向に向かう別の騎士隊が通りかかる。

それはあの近衛騎士、アルタクスと配下の近衛騎士達であった。

彼らは夜通し貧民街での再捜査を行い、丁度ここを通りかかったのだ。


一人と一羽、ここに新たな出会いと伝説が生まれ、目眩く輝く銀河の星ぼしよりも更に光る新光星の誕生よりもドラマチックな物語が始まる…………訳もなく、ただ無情にスレ違う一人と一羽。



「コケ………」


既に太陽は高く上がり、夜通し歩き回ったテバサキは空を見上げた。

自分の存在意義は何だろうと。


信じた主人からは身体を狙われ(ある意味誤解されかねない)それでも主人を助けるべく、親分肌の大きな犬の命令に従い援軍を求めて城を目指すも今だ辿り着けず。

半ば自暴自棄になり漫然と歩き回るだけなのに何故か景色が変わらない。


じっと手羽先を見る。

汚れてるなぁ……………






ザッ

ふと、近衛騎士隊の先頭を走っていた一人の男が立ち止まり振り返る。

それは皇国一の魔剣士、黒髪、碧眼のイケメン騎士、アルタクスだった。


「アルタクス様?」

「……いや、あの噴水広場が気になった」

「噴水広場?そういえば噴水を回る変なコッコドゥが居ました。それが?」

「コッコドゥ……皇国で益獣とされて飼われている魔獣だったな」

「はい。トサカがありましたから、恐らくオスでしょうか。平民街で飼われていたのが逃げ出したんでしょう。何にせよ、無害な魔物ですよ。それが何か?」

「………少し時間を貰う。お前達は先に城に報告に向かってくれ」

「は、了解です。よし、お前ら!城に急ぐぞ!!」

「「「「「「「「「は!」」」」」」」」」



ザッザッザッザッザッ…………



アルタクスは近衛騎士隊の後ろ姿を見て取ると、目線を噴水広場に向け、ゆっくりとした足取りで歩き出した。

その向かう先に居るのは、噴水をグルグル回っている一羽のコッコドゥの姿。





「コケ?」


テバサキはとある気配に立ち止まった。

そして何者かの視線を感じ、彼はその気配の方向を振り返った。


そこには赤い軍服姿の人間が立っていた。




「コッコドゥか、不思議だな。お前の身体から何故カーナ様の魔力が感じられる?」


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