第107話 開く扉
◆テータニア皇国▪ダンジョン入り口
ナレーター視点
「で、真ガルシアの旦那、こうして皇国の姫達を連れてきた訳で、俺らの仕事は終いでいいですかね……」
と、言うのは、あの盗賊のお頭。モヒカン世紀末の横でオドオドしながら、なけ無しの勇気を振り絞る。
「は?この腐れ盗賊共!お前らがやった仕事とはなんだ?!囮を作って皇国の捜査を撹乱した事か?それとも監禁場所からここに皇女を運んだ事か?いずれもビゲル様が授けた策に従ってお前らが動いただけ。ここに来れたのも我らの貴重な呪術師を貸し出してやったお陰じゃないか。ふざけるな!」
「はひ!?」
そのお頭の発言に激怒するモヒカン世紀末。
お頭を怒りの剣幕で吹き飛ばした。
哀れ お頭、木の葉の様に吹き飛ばされ、そのまま尻餅をつくしかない。
「「「「お 頭━━━━━ッ?!」」」」
そこに駆けつける黒装束達。
彼らには、お頭への厚い信頼があった。
「お、お頭、だ大丈夫ですかい?」
「お、俺はもう駄目だ……」
「あ、あんたに何かあれば、俺達は……」
「「「お頭━━━━っ!」」」
それは只の三文芝居である。
そんな臭い芝居に目もくれず、真っ直ぐに皇女達のところに向かう、真ガルシアの旦那と言われた偉そう男。
顔は確かに無精ヒゲだが、その雰囲気は高貴なイメージが漂う茶髪茶目のヤサ男。
背丈は185はあり意外と高身長で三十代の中年風。
服装は灰色ローブに包まれているが、見え隠れする隙間からは何か、軍服のようなものが伺える。
そんな男は、冷や汗をかくオルデアン姫の前を素通りすると、その隣に縛られるガルシア帝国の姫、織姫の前に膝を屈した。
ザッ
「ご無沙汰しております、織姫様。まさかこのような形であいまみえるとは思っておりませんでした。暫しのご無礼、ご容赦頂きたい」
「んんん、ん━━っ?!!」
織姫も男を知っている様子、男を睨んで激しく抗議をしているようだ。
だが、猿ぐつわがあるので言葉にならない。
その様子を黙って見つめているオルデアン。
彼女も織姫の様子に何か気づいたようだが、どちらにせよ二人とも囚われの身。
織姫と偉そうな男との間に何かがあるとしても、オルデアンに二人の関係を知る術はない。
「今暫くのご辛抱を。いずれ貴女様には、あの方にお会い頂きます。おいカーン!お二人を抱えて差し上げろ!」
「はは!」ガバッ
「「んんん??!!」」
カーンと呼ばれて返事をしたのは、なんとあのモヒカン世紀末。
軽々と二人を片手で俵抱き、左手に人形、右手に二人の姫と持ち上げる。
あの巨体はこの為のものだったようだ。
そして偉そうな男、黒子女子に目で指示を出し、黒子女子は頷いて呪文を唱えだす。
するとカーンの片手の人形が動きだし、背中の竹トンボを出して空を飛ぶ。
それは辺りを見回るように旋回し、周辺の警戒を始める。
つまり護衛を始めたようだ。
モヒカン世紀末は運びやに徹し、あのダンジョン扉の前に立つ。
そして姫達を俵抱きしたまま、後ろで固まる黒装束達を怒鳴った。
「お前ら、早く扉の前に来い。その為に雇ったのだからな!」
「「「「「「ひいいっ!??」」」」」」
「あ、あっしらにまだ、何かさせるんですかい?」
お頭は怒鳴られたモヒカン世紀末カーンではなく、偉そうな男の方を見て言った。
偉そうな男は、情けなさそうに怯える黒装束達を見ると、溜め息をついて言う。
「お前達は我らとダンジョンに入るのだ。そして我らの手伝いをして貰う」
「ば、馬鹿な!中はゾンビがうじゃうじゃいるって聞いてやす。入ったら、あっしらオダブツですぜ!?」
「そうならないよう、呪術師を連れてきた。その力は知っているだろう?それに此方には皇女がいる。ゾンビ共は近づく事はない」
「皇女がいるとゾンビが近づかない???」
「お前達に拒否は出来ない。拒否するならお前達の命は無い」
「な?!」
「「「「「「「「「!」」」」」」」」」
ガチャガチャガチャガチャ
その途端だった。
あの人形の背中から沢山の腕が出てきたのだ。
そしてその一つ一つの手に光る得物。
まさに千手観音である。
「んーんーんー!!」
「んーんん?!」
「「「「「「「「「?!」」」」」」」」」
それに驚くオルデアン達と黒装束集団。
あの人形は万能ターミネーターだった!?
もはや黒装束達に選択肢はなかった。
やむを得ずモヒカン世紀末カーンの指示に従い扉の前に立つ黒装束達。
するとモヒカン世紀末カーンは、片手を突き出しその扉を押し始める。
「ふん!」
ギギギギッギギギッ
シュワワ━━━━━━━━ッ!
金属が擦れるような音を出し、じわじわと開く青銅の扉。
そして溢れ出す灰色の煙?いや、瘴気か。
そして現れた扉の先は真っ暗な空間が広がっていた。
あまりの出来事に後退りする黒装束達。
「よし、開いたな。さあ皆の者!ダンジョンに入るぞ!!」
偉そうな男が号令を掛け、真っ先にモヒカン世紀末カーンがダンジョン内に入っていく。
続けて千手観音と化した恐怖人形に押し込まれる形で、黒装束達も嫌々ながら入っていき、最後に偉そうな男と黒子女子が入場していく。
ついに開かれたダンジョンの入り口。
偉そうな男の目的は何なのか。
オルデアン姫と織姫、箱詰めされたカーナの運命は?
そして謎の大きい犬?とテバサキ、スナイパー??はどう動くのか。
次回、世紀末妖精列伝
今度こそ【ゾンビの世界へコンニチワ】
を、お送り致します。
乞うご期待 !
いや、本当だって。




