表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/427

第10話

「あの、それでヒューリュリ様。此方では狂犬病という病気はありますか?」

『ビョウキ、病気か?ご主人、先刻も申されておったが、それは、どのような病気なのだ?』

「え、えぇっと?」



あれ?

そういえば狂犬病ってどんな病気でしょう。

たしか…誰彼構わすキスをしたくなる病気でしたか?

いや、それだと、ただのキス魔ですよね。

んん??



「その、専門家でないのでハッキリ覚えていないのですが、…誰彼構わず、キスしたくなるみたいな?」

『それは人間達の間で交わす、愛情表現的なものの事か?』

「多分?」

『ご主人、何故に疑問系なのだ?』



あらあらあら、どうしましょう。

本気で、狂犬病の症状が分かりません。

一歳にして、若年性アルツハイマーは困ります。


『キスをしたくなる(やまい)は知らぬが、噛んだり、殺されたりすると(やまい)のように広がっていく、(やまい)より恐ろしいものがある』

「え、(やまい)よりも恐ろしいもの!?」



病気より怖いって、それは一体何でしょうか?

ネットショッピングのポイント失効より怖い事なんでしょうか?



『怨念と魔力が融合した者達、スケルトンやリッチ、ゾンビの類いだ。奴らは人間が使う魔法により 、(けが)れた (たましい)に成った者達。成仏出来ずにさ迷いだし、命ある生者を襲い、噛みつき、殺すのだ。奴らに殺された者の(たましい)は、同じように(けが)れて現世に留まり、さらに罪を犯していく事になる』



ひぃいいいーっ?!

想像していたものより、本気でホラーに怖い(ほう)でした。

なんちゃらハザードじゃないですか。

私、お化けは黒カサの次に怖いんです。

心拍数がAE86(トレノ)して峠を攻めまくっております。

勿論、愛原とうふです。


え?

黒カサが何かって?

そんなの、夏がくーれば思い出すっですよ!

夏場のキッチン風物詩です。


某殺虫剤メーカーのペーパーハウスには大変お世話になりました。

あ、絶対ペーパーハウスの中は見ないでゴミ箱に捨てましょう。

見るとその夜は寝れませんよ?




ちょっと脱線しましたが、とにかくホラーは勘弁です。


「あの、すると、狂犬病になる方はいらしゃらないのでしょうか?」

『そのような病気、我は分からん。そもそも我は病気にはならん。聖獣だからな』



お胸を張って、自慢気に言われたヒューリュリ様で御座います。

病気にならない!?

なんですか、その某ラノベの如くご都合主義の権化みたいなものは。

あ、それなら【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】も似たようなものですか。

ゲームの内容だったので普通に流しておりました。

そう考えると、とんでもないですね。

そういえば、ステイタス欄に【聖獣(せいじゅう)フェンリル】ってありましたね。

性獣(せいじゅう)でなくて良かったです。

別に欲求不満じゃないですからね。



『この森に住まう獣は、ほとんどが聖獣とその眷属。我の眷属である銀狼もな。ここは、神が最初に作り出した神の森。この世界のもっとも最古からある聖なる土地。そこに生きる動植物は、全て神が直接お作りになった聖なる生き物なのだ。だから我ら聖獣は世界の最古から共に有る』

「最古から?ヒューリュリ様、お歳はおいくつなのですか?」

『わからぬ。数えた事もない。ただ、神からこの森を守るように言われ、長い年月を過ごしてきたのだ』



地球でいえば、恐竜がまだ生きていたくらいにインパクトのあるお話です。

神から与えられた命令をただひたすら、お一人で守られてこられたのですね。

でもそれって、なんともブラックなお話です。


私?

18連勤はブラックだろうって?

転生前に教えて下さい。

どちらにせよ、ヒューリュリ様やこの森の動物達に、狂犬病に(かか)るものは居ないようです。

私の今までの心配はまったくの無駄でした。

早く言って下さい、ヒューリュリ様。



『ところで、ご主人。ご主人は、一体何処から此方に来られたのだ?今までご主人のような者はこの森には居なかったのだが』



さて、この質問に私はどう答えたらよいのでしょうか。

VRゲームをしていたら、いつの間にか転生していたのです。

こんな事を言う者を果たして、ヒューリュリ様はお信じになられますでしょうか。


そもそもVRゲーム自体、説明出来るか分かりません。

取り敢えず実際の事は伏せて、外国から旅をして、道に迷ったくらいの話しにした方が良いのでしょうか。


けれど何故か分かりませんが、ヒューリュリ様には嘘をつきたくありません。

話せる事だけお伝えしたく思います。



「正直、自分も未だに混乱しているのですが、気がついたら今の姿でここに居たのです。前は全く別の姿、別の世界の人間だった筈なのです」

『別の世界の人間……左様ですか。すると、ご主人は元《《人間の女性》》だったと?』

「はい、左様です。人畜無害な虫も殺せない、ごくごくありふれた一般のOLで御座いました」



何でしょう。

ヒューリュリ様の声のトーンが、僅かに下がった気がします。

やはり、本当の話をするべきではなかったのでしょうか。



『おーえる…とはなんですかな?』

「はい、OLとはオフィスレディの略語で、所謂(いわゆる)、職業の事です。主に計算ごとをして、書類作成をしておりました」

『……なるほど…………』



ヒューリュリ様が、私を見つめたまま、微動だにしません。

眉間に、シワを蓄えております。

ああ、やはり本当の話をするべきではなかったのですね。


こういうところが、コミ症ゆえの空気を読まない事なんです。

はぁ、ヒューリュリ様に嫌われてしまったかもしれません。

また、自己嫌悪案件が発生です。


だいたい、別の世界から来て、姿、形が変わったなんて荒唐無稽(こうとうむけい)な話、普通の感覚からすると信じられる訳もありません。



『…ご主人、その話、信じましょう』



どうやらヒューリュリ様は、普通じゃない感覚の持ち主のようです…。



『ご主人。ご主人は、我がご主人の話しを信じた事を不思議に思っておられるのかな?』



ドキリンコッ、何でしょう!?

私の思っている事を、読まれた気がします。



「…はい……」

『我は今、ご主人と従魔の関係にある。従魔と主人との間は、怒り、嬉しい、悲しい、楽しい、等々の《《大まか》》な感情の動きは、分かるようになっている。だから、ご主人の話しは全て信じられるのだ』



ええーっ、私、サトラレになってました?!

ヒューリュリ様と心が繋がってるという事でしょうか。

なんだか、大変恥ずかしい状況です。

私の、あれやこれやがヒューリュリ様に筒抜けになるという事でしょう。

あああ、私のプライバシーはいったい何処へ行ってしまったのでしょうか。



『ご主人、誤解をしている様だから、もう一度言うが我が感じるのは意識の表層の部分だけだ。ご主人が何を考えているか、具体的に分かる訳ではないので安心してほしい。先ほども言ったが、強い感情に左右されるような起伏(きふく)の部分が感じとれるだけなのだ』

「そうなのですね?分かりました。私もヒューリュリ様を信じます」



ヒューリュリ様が私を信じてくれている以上、私もヒューリュリ様のお話は全て信じる事に致しましょう。



それこそが信頼であり、親愛に繋がる事ですから。



皆さま、わたくし、カーナのお話しを見に来てくれて、ありがとうございます。

今後も、私の独りよがりな、恥ずかしい私生活を公開して参りますので、何卒、今後も御贔屓(ごひきき)の上、応援お願い致します。

なお、お星さまを沢山付けて頂けますと、私の生活も充実いたしますので、宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ