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第106話 前門の狼▪後門の虎?逆や(予告違い、ゴメンなさい)

◆テータニア皇国

平民街と貴族街の境。

神殿裏ダンジョン入り口付近


オルデアン視点



た、たいへんな事になっちゃった?!

カーナ(御使い)様がつかまってます。

それもあの、こわいこわいお人形に。

一体どうして?!


いえ、そんな事より今はどうやってカーナ(御使い)様をおたすけするか考えないと!

きっとスプリング▪エフェメラル様がカンカンに怒って、お城や街がたいへんな事になっちゃっいます。

どうしよう。


それに、後から来たこわい人たちは何?

お人形もこわいですけど、あの大きい男の人もこわいの。

もちろん、ダンジョンもこわい。

こわい、こわい、こわいわ。

アルタクス、テリア、早く助けて!


おりひめちゃん(織姫)が、だれかを見つめて驚いてます。

見つめる先にいるのは大きい人の後ろから偉そうに指示する男の人。

え、知ってる人なの、おりひめちゃん(織姫)


「んんんっんん?!」

「む、むーっ、んんんっ」

「んん、んん、んんんっ?」

「んんんっんん!」

「んん???」


おりひめちゃんと会話を試みましたが、お互いに布を口に巻かれていて、まともに喋ることができません。

わたしがどうしたものかと考えていると、あの偉そうな男の人は黒い布でお顔を隠したおねえさんの前に行きました。


あの黒い布の女の人、最初はこわいお人形を扱うこわい人かと思ったのですが、実は可愛らしい黒髪、黒目のおねえさんです。


何で知っているのかというと、おトイレに行った時にお顔が見えたんです。

その時は優しくおトイレをてつだってくれました。

でも、とっても悲しそうなお顔をして、私たちにごめんなさいを言ってました。

どうも悪い人じゃなく、何か事情があって無理やりやらされているみたいです。



ぶらん、ぶらん、ぶらん、ぶらん


カーナ(御使い)様はこわいお人形に逆さにつかまれたまま、左右にぶらんぶらんされてかわいそう。

白目でお口から白いものが出て、なんだかさっきのおかしらさんと同じになっちゃってます。

あ、おかしらさんといえば、どっかに奥さんがいて赤ちゃんが生まれたばかりだそうです。

今回おしごとが上手くいきそうなので、お金がいっぱい貰えたら商売を始めてカタギ?をやるって言ってました。

他のくろ服の人たちを使って、うんそうぎょう?というのを始めるらしいです。

うんそうぎょうって何でも運ぶしごとで、ねらってるのはお酒を運ぶことだそうです。


それを聞いた黒服の人たち、涙をながしてかんどうしてました。

何だかみんな悪い人に見えません。

もしかしたら、ほんとに悪い人は後から来た大きい人と偉そうな人だけかも。



「ソレは何だと聞いている」

「わからない。虫?」

「虫の訳なかろう」



ああ!?偉そうな人、人形に逆さに持ち上げられたカーナ(御使い)様を近づいてじっと見つめています。

扱いに困ってる?



「コイツはまさかな……」



え?急にあごに手を当て考えます。

御使い(みつかい)様って気づかれた?!


は?偉そうな人、黒い布のおねえさんに命じて背中のお人形の箱にカーナ(御使い)様を入れてしまいました。

そしてお人形は大きい男の人が担ぎます。

たいへん!

このままではカーナ(御使い)様が連れ去られてしまいます。


あ?私たちも連れ去られていたんでした。

本当にどうしよう?!





◇ナレーター視点



『コケー……??!』


神殿の屋根端から下方を伺う一羽のコッコドゥ。

彼は妖精カーナの従魔テバサキである。



一時カーナ(主人)の心ない考えを知って主人から離れたものの、従魔である限り主人とは一心同体。

主人のピンチとあっては気が気ではない。


だが現状は多勢に無勢。

出ていけば、たちまちあのモヒカン世紀末に焼き鳥にされる。

ヘタをすれば主人(カーナ)は、ゴソウバンにあずかっておいしく食べてくれるだろうが、ソレはテバサキの望むところではない。

(人でなし、あ、元々人で無しか)


テバサキは、手羽先を腕組みしながら神殿屋根のあちこちを右に左に歩き回る。


彼はこれからの自身の行動を決めかねているのだ。

従魔としての使命とコッコドゥとしての生存本能。テバサキの心は今、二つの (はざま)でピンボールである。





『ソコでいつまで悩んでおる?』


『!?』


テバサキがモタモタしていると突然、彼に声を掛ける者がいた。

後ろを振り返ると、そこにいたのは《《オオイヌノフグリ》》、ではなく、お尻を向けて佇む白銀の大きい犬!?

どうやら大きい犬は悩み歩き回るテバサキの代わりに、屋根から黒装束達を監視していたようだ。


大きい犬はテバサキに振り返ると、ジロリとその鋭い眼光を向けた。



『ゴケ?!!!』


ただならぬ気配!

これまで、テバサキが感じた事がない強烈な恐怖が彼を襲う。


しかーも!

そのただらぬ気配は目の前から《《だけ》》ではなかった。

背後からの怒濤の殺意にも似た何か。


ゴゴゴゴゴゴゴゴッ


それはまさに前門の狼▪後門の虎?である。(逆です)

もはやテバサキに逃げる洗濯機、もとい逃げる選択肢は無かったのである。



「ゴケケ!!?????」


テバサキは勇気を振り絞り振り返る。

だが、そこに気配の (ぬし)が居ない???



それもそのハズである。



その怒濤の殺意を向けた (ぬし)は遥か彼方、距離にして五百メートル。


平民街にあるあのカーナがバーチの懺悔を聞いた教会、その直上の屋根の上からアサルトライフルのスコープを覗いていたからである。



スチャッ


「………………」



その怒濤の殺意の(ぬし)は、その極寒の瞳で教会の屋根を真っ白に凍てつかせる、どこまでも冷たい目の無言で佇むスナイパーであった?


これからどーなる?!




つづく?



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