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第101話 発見しちゃった?!

◆テータニア皇国▪貧民街

アルタクス視点



タッタッタッタッタッタッ


「アルタクス様!もう一つのアジトに踏み込んだ部隊が、誘拐犯の一人を確保したとの事です?!」

「そうか、急ぐぞ!」

「「は!」」


部下が遠隔通話魔道具えんかくつうわまどうぐを使い、先行する第二部隊の成果を伝えてくる。

誘拐捜索を始めて最初の有力な情報だ。


皇国内では最近、真ガルシア帝国の工作員が暗躍している。

奴らは数度、皇国内で皇族襲撃に失敗していて、我々もこの皇都での警備を強めていた。

直近では年始の祭事である皇族行事【聖獣雪ウサギ狩り】での襲撃だ。

あの事件では、背後に真ガルシア帝国の工作員が関わっているとの情報を得ている。


ただこれ迄の襲撃は警備の厳重な皇都ではなく、皇都近郊の神の森などであった事だ。


皇都は中に入る際、厳重な臨検が行われる。

これを掻い潜るのは難しく、更に皇都平民街からは外部の者に反応する結界魔道具が設置してあるのだ。


この魔道具、皇都に認証無しで侵入した者に反応、警備隊に位置を知らせる仕組みになっている。

認証は皇都に入都する全ての者に義務付けられており、認証魔道具によりマーキングされ、皇都外に出る時点で認証は自動的に抹消される。

また、認証を偽って取得したとしても、認証取得者が皇都内で犯罪行為を行おうと侵入禁止の場所に入り込んだ時点で、やはり警備隊に連絡がいく。

だから真ガルシア帝国の精鋭であっても、認証無しでの皇都侵入は難しかったのだ。


にも関わらず、今回このような事態に至ったのは、皇都内の警備に過信していた皇国警備隊と近衛隊の失態といえる。


奴らは皇女様達を、何らかの方法で貧民街近くの貴族街▪平民街境界に呼び出した。

そして平民街側で拉致し、貧民街に紛れ込んだのである。


認証結界は平民街、貴族街に二重にあるが、皇都の回りに後から出来た貧民街には無い。

今回はその警備の穴を利用された形だ。




遥か昔、神が世界を見捨てた時から始まった寒冷化。

それに疲弊する人間達を哀れに思った妖精スプリングエフェメラル様は、寒冷化に対抗出来る《春の結界》の仕組みを全ての人間に平等に授けた。

現在、多くの国が共通する結界を持っているのはその為だと云われている。


世界に散らばる《春の結界》。

それは大小あれど、国全体に及ぶ大結界を持つ国はテータニア皇国だけ。


これにより我が国は広大な土地での農耕が可能になり、他国よりも豊かに人々の生活を支えてきた。


でも、この結界が通さないのは冷気を含んだ大気だけ。

人や馬車などは素通りだ。


だから他国からの難民が増加し、皇都や主要都市の回りに街が出来た。

これがいわゆる貧民街だ。


年々厳しさを増す寒冷化は人々の生活圏を奪い、更なる難民の流入を即した。

他国にも《春の結界》はあるのに、何故に難民が増えるのであろうか。


理由は極めてシンプルだ。

《春の結界》は有限な結界。

人の生活圏はその《春の結界》に比例する。

つまり《春の結界》の大きさや数が、養える国民の数を決めるのだ。

あぶれた国民は流浪の民となるしかない。




特に近年、ガルシア帝国が反乱により二つに分断されてからは、その片方からの難民が類をみないほど多くなった。

つまり、反乱軍が建国した真ガルシア帝国側からの難民の増加だ。


真ガルシア帝国は友好国であるガルシア帝国と違い、反テータニア皇国を掲げ、我が国を征服せんと軍備を整えていると聞く。


《広大な春の結界を一国が占有するのはおかしい。それは全ての国が平等に享受すべき》


これが真ガルシア帝国の建国理念。

最初から反テータニア皇国を掲げガルシア帝国から分離独立を果たした、軍拡を主張する強権的な国家だった。


だが、軍拡は其れなりに資金を必要とし、住民に重税を課して徴収するしかない。

当然ながらその圧政に苦しむ人々は、元のガルシア帝国に助けを求めたが、先に説明した通り、人々の生活圏は《春の結界》に比例する。

《春の結界》の許容を超えての人口の移動は、当然ながら元の住民の生活圏を脅かし、脆弱な食糧生産は限界を迎える事になる。


ガルシア帝国としても元々は同じ民族、元国民である彼らを受け入れたかった。


だが、分断された国土とともに、いくつかの《春の結界》もまた、真ガルシア帝国に奪われてしまっていたのである。

縮小された《春の結界》では増える住民の分まで食糧を賄えない。


こうして行き場を無くした元真ガルシア帝国国民は、大量の難民となりテータニア皇国に流入したのである。

広大な《春の結界》を持つテータニア皇国はこれを問題なく容認した。

こうして出来たのが貧民街という訳だ。


しかし、急拡大した貧民街と元々の皇都民との間で問題が起きた。

犯罪の増加だ。


素性の知れない人間が増えれば治安が乱れるのは必然。

我々は皇国の主要都市内に魔道具を設置。

認証結界で人の出入りを管理した。

こうして、一定の秩序と治安を回復した皇国の皇都と各都市。


だが今回、その認証結界の平民側に設けたものが機能しなかった。

いわば、平民街の結界魔道具を無力化された形で拉致は行われ、我々の目を欺いたのだ。

しかも認証に反応が無いという事は、何らかの方法で認証を解除したともいえる。


そして一番の不手際は、皇室近衛騎士である私にその日の姫様達の外出予定が伝わらなかった事だ。

いかにお忍びであろうと、私が姫様の外出予定を把握していなかったのは最大のミス。

これを挽回するには、何としても姫様達の救出を完遂しなければならない。


賊の背後はまだ分からないが、事前に貧民街と平民街を結ぶ橋に細工するなど、金銭目的の盗賊にしてはあまりに手際が良すぎる。


我が国にはガルシア帝国正当政府側の皇女、(おり)姫様が激しさの増す内戦から避難する形で友好国の我が国に長期滞在していた。

そして今回、オルデアン様と共に誘拐されている。


盗賊の狙いはオルデアン様だったのか、織姫(おりひめ)様だったのか、或いは二人ともか。

どちらにせよ、捕まえた盗賊の一味から情報を聞き出すしか方法はない。





タッタッタッタッタッタッタッタッ


バタバタッバタバタッバタバタッ


「?!まて!」

「「アルタクス様!?」」




し━んっ




「………………」

「どうされました?」、「?」

「今、妙な足音が聞こえたが……?」


ここは貧民街の路地裏で、左右を無計画に建て増しした長屋に囲まれた細い家屋間の通路。

何者かの足音なら前後背後にその影があるべきなのだが、辺りに人の気配は見当たらない?



「気のせいか………?」

「「?」」

「足を止めてすまない。気のせいだったようだ。先を急ごう!」

「「は!」」



こんな事をしている場合ではない。

急がなければ!


タッタッタッタッタッタッタッタッ



◆◇◆



◇貧民街家屋の屋根

カーナ視点



ガラガラッ

「痛たたたっ!?」

「コケ~っ」


テバサキに乗って屋根越しにイケメンを追いかけていたら、突然の落とし穴!?

一瞬の内に真っ暗になって、某遊園地アトラクション、タワーなんちゃらかと思っちゃいました。

あれ、めっちゃ怖いんです。

どーでもいいですか?そうですか。

とにかく落ちた衝撃で身体が痛いです。

マジ何やってのよ、テバサキ!


「ちょっとテバサキ、何で屋根の隙間に落ちるのよ!危うく怪我するところだったじゃない?!」

「コケケ、コケケ、コケ」

「何?私が首を引っ張るから足元が見えなかったって?私がいつ首を絞めたって言うのよ!?《《アンタ》》がちゃんとイケメンに追いつかないのが悪いんでしょ!この、本当に首絞めてやろか!」

ぎゅっ

「グゲーッ!?」



後少しであのイケメンの胸に飛び込めるところだったのに、まったくの誤算です。

彼なら飛び込んだ私を優しく抱き止めてくれたはずなのに、こんな訳の分からない屋根の隙間に落ちるなんて本当に間抜けなテバ



『間抜けな騎士共は出て行ったか?』



ん?何処かから人の声がするけど、姿が見えないわね??


『奴ら、まんまと囮用に作っていた平民街の偽アジトに向かいましぜ。流石、お頭のお考え通りでさ』


んんん??

声は聞こえど姿は見えぬ??まさか幽霊!?って、この会話は!?



ガコンッ


な、何かな、アレは??

私達がいる家屋の屋根、その屋根が壊れて穴が開いています。

おそらくテバサキが落ちた隙間の穴、そこから家屋の部屋が見えるんですけど、《今まさに》その部屋の床下が開いて中から黒装束の男達が這い出てきましたぁ?!



「くくくっ馬鹿な奴らだ。お前らが必死に捜している姫様は《《ここ》》に居るってのによ。連れないよなぁ、お姫様達?」

『『んー、んー、んー、んー、んー!!』』



「!!」


な、何て事?!

オルデアンちゃんともう一人?日本着物の様な服を着た女の子が猿ぐつわをされて縛られてます!

え、ええーっ!??

まさか私、誘拐犯人とオルデアンちゃん達、発見しちゃった?



発見しちゃったよね、コレ!!


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