容疑者の行方
朝になり、私は、トーストを食べた。
傑は、外に朝ごはんを買いに行った。
朝なこともあって、部屋には沈黙が続き、やっと発せられた言葉が「いってきます」だった。
私は、県警に到着し、その後すぐ、事件現場へと向かった。
事件現場の死体は運び出され、それ以外の物は触って良いとのことだった。
ダイイングメッセージに書かれた「男に俺は殺された」という文章。
私はこの文章にとても違和感を感じた。
紙も角が直角になっていなかったりと、疑問点が多かった。
県警に帰り、今日も捜査会議が行われた。
昨日同様、熊谷刑事から報告が始まった。
「白い車の持ち主が判明しました。この車の持ち主は、森俊介、32歳で小説家です。」
「...ですが、事件発生1週間前から姿をくらましています」
森俊介…。
昨晩読んだ、「牛倉島の孤独な探偵」の作者もこの人だった。
これで線はひと繋がりになった。
そして、犯人は森だと思う。
だが、姿をくらましていてどこにいるのか分からないのが、盲点であった。
私達は、森の居場所を掴むため、身辺調査を始めた。
まず、森の秘書である中村鈴音さんに話を聞いた。
「森さんは、どこに居るか知ってますか?」
「いえ…。もうここ1週間は一度も会っていません」
「では、森さんに悩みがあったりしましたか?」
「なんか、前、作業部屋で一人で何か喋ってたんですよ」
「聞き取れましたか?」
「はい。「許さない…、許さない…」って誰かを恨んでたように見えましたね」
「ご協力ありがとうございました」
話を聞くに、森は佐々倉を恨んでいるように見えた。
次に、家族の元へと向かった。
家に入ると、父の修と母の恵が玄関に立っていた。
廊下を進み、リビングへ向かうと、双子の兄である和哉と、弟の隼人がいた。
「俊介さんはどんな方でしたか?」
「中学ではかなりの成績を取っていたな」
修が誇らしげに話した。
「高校すら通ってなかったけど、夢だった小説家になれて私は嬉しかったわ」
恵が答えた。
「兄ちゃんは僕のお世話をしてくれたんだ!すっごく優しくて青色の片目がかっこよかった!」
隼人が私の質問を聞き取り、答えてくれた。
「俊介さんはどこにいるか知ってますか?」
「俊介とは最近連絡を取っていないからな、ちょっと分かんないですね…」
修は答えた。
「ご協力ありがとうございました」
私は家を出て県警へと帰った。
それから3日経ち、進捗はないままただ時間だけが過ぎていった。
捜査本部も設立されたが、士気はどんどん下がっていた。
昼を過ぎ、捜査本部が[[rb:静寂 > せいじゃく]]に包まれた瞬間、通信指令課では一件の電話がかかってきた。
「死体が…、土の中に…」
「ちょうど今です」
「神楽山の六合目の看板の前です…」
「登山してたら、人の頭みたいなのが見えて…」
「山口徹です。住所は__」
「はい、分かりました」
彼の声は、震えを含んでおり、怯えているように聞こえたそう。
担当の[[rb:袴大知 > はかまだいち]]が言っていた。
私は、することがなかったため神楽山の六合目へと向かった。
土から掘り出された遺体が規制線の奥に見えた。
その遺体は焼かれていて、誰かが分からなかった。
私は現場から帰った。
帰った捜査本部は刑事たちの声で溢れかえっていた。
「おい、椿原!佐々倉殺しの犯人を名乗る人物が出頭してきた、とりあえずついてこい」
刑事たちの声の中に大きく轟く上司の声は近くにあった。
状況が理解できていないまま、私はついていった。
マジックミラーごしに私は容疑者を見た。
確かにその瞳は、青く輝いていた。
そんな静寂の中にも「容疑者は森俊介、小説家だ。知ってるだろうがな」という上司の声が聞こえる。
上司の声を取っ払い、取調室の中に耳を凝らす。
「まず、あなたは7月29日の午前2時頃に何をしていましたか?」
「そりゃあ佐々倉の家に行ったに決まってるじゃないですか。車も監視カメラに映ってるでしょう…」
呆れている。
鈍感な私にも、その感情は伝わった。
「佐々倉さんに面識はありましたか?」
「まあ、そりゃ俺の作品パクってるんだったら知ってるでしょ」
そう、『ダイイング・メッセージ』は『偽りの最終弁論』をパクっている。
完全に使われているトリックや登場人物が一致している。
「事件当日から今日まで、どこにいたんですか?」
「ホームレス、ホームレスになりきってた」
そりゃあ見つけれるわけないか、そんな弱音を吐きながらその後も淡々と聞いていた。
気付いた時にはもう月が昇っていた。
電車の中で大きなあくびをして、買ったおにぎりを握りしめる。
そして、電車内にアナウンスが響いた。
「浅谷駅、浅谷駅到着です」
駅構内には到着を示すメロディーが流れた。
ドアが開いて、電車を降りた。
改札を通って私は、ただ歩き続けた。
そして家に着いて「ただいま」を呟く。
「おかえり」と傑の声が聞こえた。
ドアを開けてリビングでおにぎりを食べる。
鮭がいつもより美味しく感じる。
袋を捨てて、お風呂に入り、寝る支度をした。
支度が終わり、ポケットから震えを感じた。
スマホには通知が来ていた。
私は、メールのアプリを開く。
上には「スズメバチ」の五文字。
私は文を読み進める。
「あなたが私の◾◾を返してくれるのをずっと待っています」
「自分は返さなくても大丈夫ですが」
不気味…。
一番初めに思った。
私はアプリをすぐさま閉じて寝室へと向かった。
眠りから覚めた私は、支度をして県警へと向かった。
時間は経ち、月が昇った。
電車内のキツい香水、疲れの汗、酒臭いおじさんの匂い。
匂いが漂う中、扉が開き綺麗な空気が入ってくる。
そして気付けば、浅谷駅へと到着していた。
意識が朦朧としたまま、改札を通り家へと帰った。
そして私は、寝支度をして、寝室で眠りについた。