怒りの証明
証拠を集めているうちに、太陽が大きく昇っていた。
昼ご飯を食べてから、私は上司に「必ず落としてみせます」と告げた。
私は決戦の場へと向かった。
それから二十分ほど、家に到着した私はインターホンを押した。
私は「県警捜査一課、椿原晴海です。大山さんの事件についてお話を伺いに来ました」と言う。
永田はすぐ出て来て「またか」みたいな顔をしていた。
私は家の中に入った。
私は話し始める。
「あなたは事件当日、外に出ましたか?」
永田は、「それ前も言ったんですけど…。出てません」
同じ質問をする私に呆れているようだった。
私はまた口を開く。
「傘が濡れていたのはなぜですか?」
永田は、少し焦りを見せていた。
私はまた話す。
「今日、昨日には雨は降っていません。あなたが外に出たなら一昨日しかないんです」
永田は話した。
「ちょっと外に出ただけで…」
「矛盾してるじゃないですか。外には出たんですね」
このときの私は少し怒りがこみ上げていた。
「話を変えます。大山さんは浮気をしていました。それには気付いていましたか?」
「そうだったんですか?全く気づきませんでした」
私は、この答えを完全に『噓』とみた。
平然と嘘をつかれるのが苛立つ。
「ではまた話を変えます。牧本さんとはどこで出会いましたか?」
「大学ですけど。ていうか、関係ありますか?」
私は永田のこの言葉を完全に無視し、また話す。
「大学の違うお二人、しかも相当遠い…。なのに二人は出会えたんですか?お二人は、東京の「つるかめ劇場」というところで出会ったのではありませんか?」
心の雲が少し晴れた。
きっと雨が降りそうな曇り空ほどだろう。
永田は話しはじめた。
「証拠はあるんですか?」
「ええ、牧本さんに聞きました。劇場には問い合わせてあります。」
空がどんどん晴れていく。
雨が降る様子はない。
「電話では、あなたは当時『No.1』だったと聞いていますよ。」
永田は話した。
「ええ、そうですよ。でも何が関係してるんですか…」
きっと怒ってる。
だけど私には関係ない。
私は話し続ける。
「あなたは、これまでの証言でいくつかの『嘘』を積み重ねていませんか?そしてあなたは、事件現場に行ったのではないですか?偶然を装って…。あなたは大山さんが殺されることを知っていたのではないですか」
そして一息置いてからまた私は言った。
「浮気に怒ったんですよね。」
空の雲はもう少ない。
あともうひと踏ん張りだ。
永田は反論する。
「でもそんな証拠ないですよね…」
私はすぐさま話す。
「大山さんの遺体は、階段から落とされた少し上にあったんです。普通なら痛くて、上になんて登らないんですよ。そこから分かるのは一つ。あなたは、傘を持って行った。そして大山さんは何かを話したかった…。そうですよね?」
「しかし大山さんを殺したのはあなたではない…。ですよね」
「ええ、勿論です。私が樟葉を殺すわけないじゃないですか」
永田は少し笑みを浮かべていた。
「あなたは、最近占いに行っているようですね」
「はい。それが何か?」
「あなたはそこで、近々呪われるとでも言われたのでしょう。そのためには、辿る道を変えなければいけないだとか…」
永田はまた焦りを見せた。
演技がうまくても本当の思いは時折見せてしまうものだ。
「そこであなたは、殺害を牧本さんに委ねたのでは?今日の午前中に、牧本さんを取り調べしたところ、そう話していましたが」
「あなたは、傘を持っていったんですよね。心配を装って」
心の太陽は輝いている。
そしてその瞬間、永田は本性を表した。
「はい、そうですよ、殺したけど何ですか?浮気する最低なやつを殺して何が悪い。最低なやつを潰しただけ。傘を持っていったのも呪われるのを避けたからに決まってる。やっぱりあんなやつに頼まなきゃよかった…」
私は話し始める。
「そもそも殺そうとするのが悪いですけど、大山さんも悪いんです。殺すという選択肢をとったあなたは、きっと大山さんに恨まれていますよ。せめて罪を償ってください。」
渋々と頷いた永田を、私は連行した。