答え
指は本当に繋がったのか?
頭の中がそれだけに支配されセラの入浴を覗くと言う愚行に走ってしまったマクシミリアンは、セラの反撃に合い左頬を殴られ倒れた拍子に頭を強打、そのまま気を失っていた。あまりに強く打ち付け過ぎたせいか、目を覚ました時は見慣れぬ天井に何故自分がこんな所にいるのかと首を傾げる。
丁度その頃、セラを前にサイファントとルビオンスが頭を下げて詫びていた。
「まったくお詫びの言葉も御座いません。」
「この度の非礼、私の命を持って―――っ!」
ルビオンスはセラに自身の剣を差し出し涙を流さん勢いだ。
「まったくお前たちもとんでもない主を持ったな。」
ウェインは少々気の毒に思いながら頭を垂れる二人を見下ろしていた。
「いいのいいの、気にしないで。悪いのはあの自己中我儘大王なんだから、ねっ!」
それに殴って気絶させちゃったし…
セラは勇気付けるようにルビオンスの肩を叩く。
「何と広いお心をお持ちなのでしょう―――セラ様はまさに女神の様でございます。」
(女神って…)
跪いてセラの手を取り涙を流すルビオンスにセラはちょっと引いてしまう。
隣ではウェインが肩を震わせ必死に笑いを堪えていた。
「そう言えばリカバリーさんはどうしたの?」
マクシミリアン付きである近衛騎士の姿がない。あの自己中我儘大王の愚行を止めるのにリカバリーは必須だ。
「リカバリー殿は国内で他の任務についております。」
答えたサイファントの瞳が曇り、ウェインは何かあったなと感じる。
リカバリーはマクシミリアンの筆頭近衛騎士だ。そのリカバリーがマクシミリアンから離れなければならない事情とは何だろうと考えるが、要らぬ詮索は止めておいた。
サイファントとルビオンスも命に別状はないとは言え、ラインハルトが重傷を負い床に伏せっている事は絶対に口外出来ない。ラインハルトの穴を埋める為にリカバリーは駆り出されていたのだ。
そんな男たちの事情など掴めずセラが理由を聞こうとした時、部屋の扉が開きマクシミリアンが姿を現した。
深い紅の髪をしたウィラーンの第二王子は、扉を開くと真っ直ぐにセラへと近づいて来る。
黒い瞳が虚ろで、足元がおぼつかない。
その足取りのまま部屋に入り、セラの前に立つサイファントとルビオンスを押しのけ跪き―――セラの手を取ってじっと食い入るように眺めた。
その一連の動作が無言で行われ、マクシミリアンの纏った異様な空気に誰もが息を呑む。
何かが違う―――?
皆がそう感じた時、マクシミリアンはセラの左手を優しくゆっくりと愛おしむように撫で…自身の頬に擦り寄せた。
「―――!」
セラは絶句し言葉も出ない。
「ああよかった…あるべき場所に戻ったのだな。」
まるでうっとりするような表情を浮かべセラの手に頬を擦り寄せるマクシミリアンに、セラは全身総毛立ち硬直―――他の三人も同じだった。
打ち所が悪かった?
皆が心の中で思い、マクシミリアンを凝視する。
セラは頭の先から足の先まで全身に身震いを起こし、マクシミリアンに取られた手を引き離そうとするが、その部分だけは馬鹿力で固定され全く動かない。
「マクシミリアンどうしたの、大丈夫?!」
「俺か?俺は大事ない。氷付けのこの指を見た時は胸が引き裂かれんばかりに苦しかったが…もとに戻って本当に良かった―――」
(よ、よくないです…)
セクハラ王子に変身したマクシミリアンの奇行はあまりにも衝撃的で。
「…医者を呼ぼう。」
さすがにこんなマクシミリアンは頂けないと額に手をあてた。
原因は頭を打った事だったのか?
はっきりした事が解らないままマクシミリアンはもとに戻り、目撃者達は夢でも見たのだと忘れる事にした。
サイファントとルビオンスはマクシミリアンが何か問題を起こす前に、早々に主を連れてイクサーンから引き揚げる事にした。
「ありがとうマクシミリアン、感謝してる。」
正気に戻ったマクシミリアンに指を動かしながら左手を振る。
マクシミリアンの馬術がなければ氷は溶け指は腐ってしまい再生は不可能だっただろう。フィルネスの魔法の力も大きいが、セラはマクシミリアンに深く感謝していた。
しかし何故フィルネスは自分で指を運ばなかったのか?
移動の邪魔とか寒さ嫌いの為冷たい物を持ちたくなかったとか言うのが理由かもしれないが、フィルネスの行動は理解に苦しむ事が多い。
既に馬に跨っていたマクシミリアンは、手を振るセラを前に馬を下りる。
「ウィラーンへ、俺の所へ来ないか?」
横暴なマクシミリアンにしては随分と大人しい態度に後遺症か?とも思うがどうやら違うようだ。
漆黒の目はしっかりとセラを見据え力強い。
「それは駄目、ごめんね。」
イクサーンにいると決めた以上セラには他に言える言葉は無い。
「―――そうか」
マクシミリアンは呟くと、セラに手を伸ばし首飾りの鎖を切って指輪を手に取った。
そしてそれをセラの繋がった指に嵌める。
「マクシミリアン―――?」
数か月ぶりに戻った指と、ラインハルトが想いを乗せた王妃の指輪。
あるべき場所へ戻ってきた半身の様だった。
「傷ついても守り通したかったのだろう?」
指輪を?
ラインハルトとの想いを?絆を?
それとも―――
あの時は戦いを止めたかったから指輪を外す事を拒否した。
指を切られようとも絶対に渡したくないと思った。
ラインハルトが大好きで、何物にも変え難く愛している。
でもそれは今、セラの気付かない場所で少しずつ変化をもたらしつつあった。
「ありがとう。」
セラは指輪を嵌めてくれた事に感謝した。
大きな意味を持つ指輪を前に、自分では躊躇して嵌める事が出来なかったかもしれない。
馬に跨ったマクシミリアンをセラは大きく手を振って見送った。
「結婚―――ですか?」
六人いる大臣の一人に呼び止められ通された部屋で、セラは彼が口にした言葉を反復した。
財務大臣として在籍するクトフは気難しそうな四十代半ばの男で、セラは城の中で見かける事はあっても結して話をする様な機会は今まで一度もなかった。
そのクトフから呼び止めらえ伝えられた言葉…それはセリドの問題発言からなんとなく予測していたのかもしれない。改めて聞かされても大して驚きはしなかった。
「私共は貴方に、いつまでもこのイクサーンに留まって頂きたいと思っております。しかし貴方を狙ってくる輩は後を絶たない。先日リョクシェントの王女が起こした様な事が再び起きれば、いつ国と国との争いに発展してしまうやも知れません。それ故セラ殿には相応しいと思われる者と婚姻を結んで頂き、外部からの干渉を逃れて頂きたいのです。」
セラを確実にイクサーンだけの物にしたい―――セリドが口にした結婚問題はまさに妙案だった。
「あの…結婚とかって急に言われても困るんですが…」
セリドからはそんな事を言われはしたが、まさか一四歳になったばかりのセリドとの事を進めている訳でもあるまい。
「セリド殿下はまさに相応しいお相手にございますが、少々難が御座いまして…」
歯切れの悪い言い方の裏にある物はセラにも理解できた。
セリドは次代の王になる為に、民衆から望まれ生まれた王子だ。民衆が貴族腹の王子をと望んでリリスが妃となり生まれた、生まれる前から王となるべき宿命を背負わされていたセリド。兄である双子の王子らはもともと王位に執着もなく、それを理解し喜んで王位継承権を放棄した。
「セラ殿は陛下と同じで民衆にもすぐに受け入れられましょう。しかしいつまた同じような事が起きるやもしれないと言う懸念があります。」
闇の魔法使いを封印した娘は孤児院育ちでリリスの様な家柄には無い。目ぼしい貴族の養女として地位を作り上げるのは容易いが、そう言う人の目を欺く様なやり方はカオスが認めないだろう。
「このイクサーンにてセラ殿に思うお相手がおありでないのなら、不躾を承知でお勧めしたいお相手が御座います。」
ラインハルトは問題外で、目ぼしい相手がいないのならクトフらにとって有利な相手と結婚しろ―――そう言われているのだと思うとセラは嫌な気持ちになった。
しかしセラがイクサーンに留まる事を決めた以上、クトフの言う事も理解できる。
煩い蝿を追い払うには…セラをイクサーンから動けぬ状況を作り、近隣諸国に知らしめるのが一番なのだ。
「これは陛下のご意見ではなく、あくまで我ら大臣一同の意見としてお聞き願いたい。」
クトフはセリドの発言に肯定派の大臣であったがそれには大きな問題もあり、今回クトフが進める相手はセリドではない。
「宰相のシール殿は陛下の信頼も厚く、セラ殿も懇意にされているご様子。年の頃も丁度宜しいのではないかと―――」
「シールさんと結婚しろって言うんですか?!」
クトフは大きく頷いた。
地位も名誉もあるまがりなりにもイクサーンの第一王子は、セリドに次ぐ相手としては文句のつけようがない。シールが相手ならセリドも文句は出せないだろう。ウェインの名を上げなかったのは、ウェインは騎士であり国の有事には真っ先にその身を危険に曝さなければならないからだ。万一にもそれが原因で早くに命を落とし、セラが未亡人になってはもとの黙阿弥。その点だけで言えばシールにはその心配がない。
「貴方に対する扱い一つで国を左右しかねない問題に発展する…それを重々承知したうえでのお願いであります。結して強制ではございません。」
そう言って近寄りがたい雰囲気を持つクトフはセラに頭を下げた。
「こちらの内情をご理解し賛同していただけるのであれば、セラ殿から陛下に御進言して頂きたいのです。」
セラの意見としてでなければカオスは聞く耳すら持つまい。だからこそクトフはセラに接触して来たのだ。
「クトフさんが言う事は尤もなことです。」
シールにも言われたが、セラが闇の魔法使いを封印した事実がある以上それは一生ついて回る現実だ。身の振り方一つとってもセラ個人だけの問題ではなくなってしまった。クトフはセラをイクサーンに留め置きたいがために目の届く範囲の相手を選んで来たのだろう。その相手がシールだと言う事で、これがクトフの私利私欲の為ではないのだと言うのは理解できるが…
「でも、シールさんとは結婚できません。」
そもそもシールはこの話を知らないのではないだろうか?
「わたしはここで沢山の人にお世話になったし、ここ以外に行く所もありません。わたしはイクサーンから出るつもりはないんです。それだけじゃ駄目ですか?」
セラの意思だけでは駄目なのか?
つい最近経験した様な事がまた起こってももう迷う事はない。セラはこれからもイクサーンで歩いて行く。
セラがぎゅっと拳を握り締めると、指輪に嵌めこまれた青い宝石が煌めいた。
イクサーンで生きていく事はラインハルトと…セラの意思だ。
「それを私共が承知しても他国の亡者は理解できますまい。」
クトフらはそれを確実なものとして証を欲した。
「陛下は貴方を思い大事に扱うあまり、要らぬ手間ばかり掛けておいでた。セラ殿の婚姻一つでその苦労が一つ片付く。嫌な事を言うとお思いでしょうが、これが陛下をお守りする我らのやり方です。」
痛い所を付く―――
セラは目を伏せた。
守られてばかりの今を変えたかったのはセラも同じだったが、こんな展開は望んでいない。
しかしセラが結論を出さなければ、カオスは他国からセラに及ぶ要らぬ手を払い続けなければならないのだろう。
それに手を尽くすのはカオスだけではない。シールもウェインも、クトフら大臣達も勿論関わって来る。セラ一人に沢山の手が煩わされているのだ。
セラは今どうするべきか―――
クトフの意見に従うのが一番なのだろう。
だけどそれは…流されるだけの人生になってしまうのではないのだろうか。
「相手はともかく、クトフさん達はわたしがイクサーンの誰かと婚姻を結べば問題ないって事なのですね?」
「シール殿では御不満ですか?」
顎を撫でながら嫌味気味にクトフが口を開く。
「それはシールさんに失礼でしょう?」
そう言うと、セラは笑ってクトフを睨んだ。
「今夜カオスと話します、それで宜しいですか?」
クトフは自分達の意向が伝わったものだと思い、満足そうに頷いた。
クトフとの話を終えたその足で、セラはウェインをイルジュが幽閉されていた塔まで呼び出した。
ウェインが塔に行くと神妙な面持ちのセラがウェインを出迎え、その様子になんとなくこれから起こる事が予想された。
「ウェイン、わたし…なんて言ったらいいのかな?」
最初は言葉が上手く紡げなかった。
それでもしっかりと言わなければならない事を、セラは自分の言葉で伝えようとする。
「ずっと返事を引き延ばして甘えてた、ごめんね―――」
セラはウェインを真っ直ぐ見上げて続けた。
「やっぱりわたし、ウェインの気持ちには答えられない。」
無意識で指輪に触れるセラの行動にウェインは小さく溜息を付く。
「ラインハルト王の事が?」
セラははっとし、しかし違うと首を振る。
「ラインハルトの事は今も好き。一生忘れる事なんてできないと思う。でも、わたしは前に進むって決めたから原因はラインハルトじゃない。」
ラインハルトでないとすれば、今セラに持ち上がっている騒動以外には思い浮かばない。
「―――セリドを選ぶのか?」
まさかと言う思いでウェインが発した名に、セラは無言で頷く。
「何故セリドだ?!」
シールやマウリーの名が上がるならともかく、何故セリドなのだと疑問ばかりが頭に浮かぶ。
王太子だからか?!
一瞬浮かんだ考えにウェインは直ぐさま自分を責めた。
王太子だからとか言った事でセラが人を選ぶ訳は絶対にないのだ。自分を一人の人間として見て欲しいと願うセラが、セリドの事を王子だからとかそう言った類で選ぶ訳がありえない。
だとしたら―――
「セリドを愛しているのか?」
ウェインは唸る様に言葉を絞り出した。
何がどうしてそうなったと言うのだ?
セリドがセラの部屋で目を覚ましたと言うとんでもない話を耳にしても、ウェインは少しも危機感を覚えなかった。それ程セリドを安全視していたのだ。セリドがセラに対して興味を持っている事は薄々感じてはいたが、まさかセラがそれを受け入れようとは思いもしなかったし、聞いた今とて信じ難い。
その問いに、セラは微かに震えた。
「わからない。好きだって気持ちはあるけど、それはウェインを好きと思うのと大差ないのかも知れない。だけどセリド王子はわたしを必要だと言ってくれるの。今まで守られるばかりだったわたしを、セラが必要だって真剣に言ってくれるの。」
カオスやラインハルトの様に強い者の言葉ではなく、セリドは自分を良く理解したうえで言葉を紡いだ。
「絶対に無理だって思った。純粋な目で訴えて来るセリド王子に、王子だから駄目だって一番嫌な答えで拒否してた。だからこれからはちゃんと向き合いたいって思ったの。ラインハルトを愛した時の様に乗り越えられるように、ちゃんと時間をかけて考えてみようって。セリド王子はわたしより年下で子供だと思ってたのに…わたしなんかよりずっと自分を分かって訴えて来るの。」
真っ直ぐな心が怖くて、王子と言う身分を理由に向き合いもせず拒否して傷つけた。それでも構わず嫌になる程ひたすら向かって来るのだ。
「時間が経って、王子がわたし以外の人を好きになっても構わないって思う。お互いこれからどうなるか分からないけど…わたしは今、セリド王子と向き合いたい。」
その先はどうなるか分からない。
時間をおいている間にセリドとセラ、両者またはどちらか一方の気持ちが冷めてしまうかもしれない。でもそれはそれでも構わないのだ。とにかく、今は考える時間と距離が必要だった。
切実に訴えてくる言葉を聞いている内にウェインはセラに手を伸ばし、きつく抱き寄せていた。
セラは抵抗もせず、ただ大人しくされるがままだ。
そんなセラを、切ない気持でウェインは抱き締めていた。
暫くしてウェインが囁くように言う。
「決めたんだな―――」
立ち上がって前に進もうとするセラを引き止める訳にはいかない。
「うん。ウェイン、今までありがとう。」
「別れの言葉みたいに言うな。迷惑かも知れないが俺の気持ちはこれからも変わらないんだ。」
そう、気持ちは変わらない。
この先セラの選んだ道がどうなって行くかはまだ誰にも分からないのだ。
今はそれを引き止めるのではなく、大きな気持ちで見守るのが自分に出来る唯一の事ではないだろうかとウェインは思う。
先はどうなるか、誰にも分からないのだから―――
その夜、セラはカオスとの食事を終えてから話を持ち出した。
「わたし決めたの。ここを出て城下で暮らす。」
「その話は終わった筈ではなかったか?」
再び持ち出された話にカオスは溜息を付いた。
しかしセラに視線を向けると、前回とは打って変わって真っ直ぐな強い瞳がカオスに向けられている。
「決めたの、お願い。」
迷いのないセラの瞳に、カオスは真剣に向き合わなければならない問題が発生していると感じた。
「大臣らが接触でもして来たか?」
何か言われたにしても、それだけでこれ程強い意志を持ったとは思えなかったが。
「それもある。その問題を片付ける為にも城を出たいの。」
問題―――大方大臣のクトフ辺りが結婚相手でも押し付けて来たのだろうと予測した。
「どう対処するつもりだ?」
カオスはテーブルに肘を付いて顎を支えた。
「カオス―――わたしに王子をくれる?」
その言葉にカオスの目は見開かれた。
セラが王子と呼ぶ相手は一人しかいない。
「セリドを相手に選ぶと言うのか?!」
カオスとて予想にしなかった意外な名だった。
セラはセリドの求婚を全力で拒否していたし、クトフが進めるならシール辺りが妥当だろうと思われる。
「今直ぐにじゃない…その為に時間と距離が欲しいの。」
時間と距離―――
セラの言葉にカオスは深く息を付いた。
「己の気持ちを確かめ…セリドにもそれを科すと言う事か。」
セラは頷く。
「セリド王子はまだこれから知らなきゃいけない事が山のようにあるし、それはわたしも同じ。こんな状態で結婚なんて発言はちょっと可笑しいと思うの。でもそれを全否定出来る程わたしは大人じゃないし、今のままじゃ向き合う余裕もない。」
今のままでは自分の答えを出す前にセリドの真っ直ぐさに呑まれてしまう。
「ここでは無理か?」
カオスは椅子を立つと、セラの傍らに膝を付いた。
「守られるだけじゃない、ちゃんとした自分の道を決めたいの。お願い―――」
監視下にあってもいい。城を出てセリドと距離を持ち、お互いが自分に付いてきちんと考えるべきだ。特にセリドはカオスの後を継いで王となるべき責任ある立場にある。その過程に何をすべきか、セラをどのような形で必要とし望むのか…考えなければならない事は山ほどあるのだ。
青と赤の瞳は揺れる事なくカオスを見据えている。
カオスはセラの頬を大きな手でそっと包み込んだ。
「私にもセラは必要だぞ。」
それは肯定の意味だった。