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残されたモノ  作者: momo
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訪問

 イルジュは地下牢にではなく、小さな塔の最上階…と言っても三階建てだが…に幽閉と言う形で閉じ込められていた。


 セラは鍵を開け、塔の中に入る。

 階を上ると扉があり、そこの鍵も開けてやっとイルジュの姿を捕える事が出来た。

 椅子に座り、小さな窓の外を眺めていたようだった。

 イルジュは突然現れたセラにはっとしたが、その後ろに立つウェインを目にすると明らかな敵意を向け黒い瞳で睨みつける。

 限界に近かったとは言えイルジュの術を破りレスティオの思惑を阻んだウェイン。彼だけではなく、その場にいた者達をイルジュは誰一人余す事なく記憶していた。

 そんなイルジュの態度に構わずセラは歩み寄る。

 するとイルジュは椅子から立ち上がり、壁に向かって後ずさった。

 「何しに来た―――」

 「あなたと話がしたくて。」

 後ずさったイルジュにセラはそれ以上近付く事はなく、一定の距離を保つ。

 「話す事なんて無い、帰れよ。」

 セラとの対峙が苦痛であるかに顔を背ける。

 「わたしはあるの。あの時…傷の手当てをしてくれてありがとう。」

 その言葉にイルジュは目を見開くと、セラの見えない企みに恐怖して壁にのめり込みそうな程体を押し付けた。

 「何言ってんだよ…俺はお前の指を奪ったうえに拷問したんだぞ!」

 「指を奪って拷問したのはレスティオ、イルジュはそれを手当てしてくれた。手足をさすって体を温めてくれたのはあなただったでしょう?」

 意識を失ってはいたが毛布を巻かれ、誰かが必死に手足をさすって温めてくれていたのは覚えている。あの状況でそんな事をしてくれるのはイルジュ以外には考えられなかったのだ。

 「あれは…レスティオ様の願いを叶える為に仕方なくやったんだ。」

 「そう―――それでもわたしには生きる力になったよ。」

 イルジュはカタカタと小刻みに震え、壁を背にその場に座り込んだ。

 セラの力を封じていた時には感じられなかった恐怖がイルジュを襲う。

 殺されるとか拷問されるとかそう言った命の危険に伴う恐怖ではない。

 何か未知なる力に押し潰されそうな気がして、イルジュは腕で顔を隠した。

 「やっぱりあんたは馬鹿だよ」

 「イル―――」

 「触るなっ!」

 手を出そうとしたセラを拒絶したイルジュは、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 「あんたに俺の気持ちなんか解ってたまるか。何で今更こんな所に閉じ込める?処刑でも何でもやってレスティオ様みたいにさっさと殺せばいい!」

 イルジュは膝を抱いて小さな子どもの様に泣き出し、すすり泣きはやがて嗚咽を交えたものになる。

 「イルジュ」

 今度は手を触れようとはせず、セラはイルジュの前に跪く。

 慰めの言葉を呟くのは容易いけれど、今のイルジュに必要なのはそんな見せかけの代物ではない。

 すすり泣く姿は、まるで幼い自分を見ている様にセラの目に映った。

 「また来るよ―――」

 言い残してセラは部屋を後にした。




 「あいつ…口きいたな」

 セラの後について歩くウェインが素っ気なく呟く。

 あの日から一切口を開こうとはしなかったらしいが、セラを前にイルジュは意外にもお喋りだった。

 「辛そうだったね。」

 どんな人間であってもイルジュにとってレスティオは唯一無二の人だった。

 「お前は何であいつに構おうとするんだ?」

 同じ魔法使いだからか―――

 「わたしがカオス達と一緒に旅をしたのは、もう人が死ぬのを見たくなかったのが理由の一つ。でも、一番大きな理由は一人になりたくなかったからなんだと思う。カオスが別れを言いに来た時また捨てられる…一人になるって思った。」

 戦火に焼かれた街から命を救ってくれたカオスに言われるまま救護所に身を寄せて一年、再びカオスに会った時、カオスは今生の別れを言いに来た。もう二度と会いに来てはくれないのだと悟ると、セラの心に冷たく悲しい風が吹き荒れた。フィルネスがセラを連れて行くと言った時、カオスの反対を押し切ったのはセラ自身。当時のセラには一人になる事は死よりも恐ろしい事だったのだ。

 「あの日からわたしはずっと誰かに守られて来た。一人になる不安も吹き飛ばしてくれたし、今もカオスはわたしを見捨てたり不安にさせたりは絶対にしない。でもイルジュはやっと得た安心を失ってしまったのよ。」

 手の届く場所にその人がいる。

 「綺麗ごとじゃなくて気になるの。このままだとイルジュは死ぬわ。魔法使いに生まれたってだけで牢に入れられて…拷問を受けて処刑を待ち続けた子供が得た光はもうないの。せっかく生きてる命なんだもの、絶対に死なせたりしたくない。」

 イルジュに力があれば憎悪が生きる糧となり復讐に出ただろうが、彼の魔法はそれに及ぶには力不足過ぎる。光を失った者はいとも容易く自ら命を絶ってしまう。

 それだけはどうしても嫌だった。



 セラもイルジュもまだ十代半ばだと言うのに、経験した人生の重みはウェインのそれとは比較にならなかった。そんなセラだから、大して知りもしない命であっても大事にしたくなるのだろう。いつかセラがマクシミリアンに言っていた『誰であっても人が死ぬのは嫌』と言う言葉が蘇る。もしレスティオが生きていたとしたら、セラはその命すら懇願するのだろうとウェインは思う。

 今のウェインにはセラにとやかく言える資格も何もない。


 「俺は今から鍛錬場に顔を出す事にするがお前はどうする?」

 一応騎士団長…しばらく留守にしていたので色々確認せねばならない事があったし、また今のは、剣の稽古を始めるかともセラに問うていたのだ。

 「リリス王妃にも挨拶しなきゃだから…ここまで付き合ってくれてありがとう。それと―――助けに来てくれてありがとう。嫌われたと思ってたから本当に嬉しかったよ。」

 屈託ない笑顔を見せるセラに、ウェインは嫌な予感が過る。

 「何で俺がお前を嫌う必要がある?」

 「えッ…だって―――」

 赤と青の瞳が同時に揺れた。

 「あれから…ずっと苛々して怒ってたじゃない。わたし…嫌われたんだと思って―――」

 切なくて辛かった―――

 「違うの?!」

 ウェインの大きな溜息に自分の考えが間違いだったのかとセラは慌てだす。

 だったら悩みぬいたあれはいったい何だったんだ?!


 「いや、あれは俺が悪かった―――」

 思わず手を出しそうな自分への苛立ちを、八つ当たりの様にセラにぶつけていたのは事実だ。

 ウェインは大きな手でセラの頬を拘束するように包み込むと、そのまま強引にキスした。


 「う―――――っ?!」

 突然の事に驚き一瞬茫然としたが、前回と違いセラは唸るとウェインを引き剥がそうと抵抗を見せる。

 しかしそこは大男と小娘、セラに軍配が上がる事はない。

 抵抗するセラを余所に、ウェインは執拗にセラの唇を奪い続けた。

 セラは頬を挟んで離さないウェインの腕を掴むと、その腕にぶら下がり体重をかけ―――両足をウェインの腹にのめり込ませる。

 条件反射で腹に力を入れたウェインにダメージは無かったが、それでもやっと唇だけは離れた。

 両手でウェインを掴んだままで半分崩れ落ちながら唖然と見上げると、獲物を狙う獣の様な眼がセラを見下ろしていた。

 「嫌った事など一度も無い、その逆だ。この通り俺はお前が好きで惚れてるんだ。」

 確実な言葉で突き付けられ、セラは返す言葉が無かった。

 (だってわたしは…わたしが愛してるのは―――)

 呪縛するかにセラの心に思い浮かぶ。

 ウェインはセラの心を読むかに一呼吸置くと、ふっと口の端に笑みを浮かべた。

 「いいか、覚えとけ―――俺はお前の全部に惚れてるんだ。」

 ウェインはセラの腕を引っ張り雪の積もった地面に立たせる。

 「忘れるなよ―――」

 最後に引っ付きそうな程顔を近付けて告げると、ウェインは騎士の鍛錬場へと向かって行った。

 

 


 その場に一人残されたセラは、暫く唖然としたまま去り行くウェインを見送っていた。

 「だってわたしは―――?」

 ぽつりと呟き、首に下がる指輪を握り締めた。

 今はもう生きる場所が違うと言ったラインハルト。

 離れていても愛し合い続ける―――それがセラの望み。

 愛している―――だけどラインハルトはセラの新たな出発を願っていた。

 「だからってやっぱり―――」

 そんな理由でウェインにすがりつける訳が無いし、ラインハルトに対する愛は少しも揺ぎ無い。

 考えないようにしていたのに、思い出すとやっぱりどうしようもない想いが溢れ出す。

 愛する人は戦いの世界に身をおいて、セラは戦いの無い世界を求めてやまない。

 「ラインハルト―――」

 このままここにいていいのだろうかと、セラは指輪に語りかけた。

 

 


  

 気持ちを落ち着けてからリリスに会いに行くと、待ち構えていたように大手を振って迎え入れられる。

 「本当にご無事で何よりでしたわ。心配で胸がつぶれる思いでしたけれど…お元気そうで安心いたしました。」

 自身の不手際からセラを危険に曝してしまった事に心を痛めてはいたが、貴族と言う育ちのせいなのか無事なら無事でよかった、はいお終い的考えが身についている様である。

 イクサーンに実害はなかった事だし―――?

 楽観的…なのだろうか?

 笑顔で迎えた王妃はいつもと変わらぬ様子だった。


 そこからリリスの怒涛の攻めが始まる。

 「わたくしちょっと焦り過ぎた様ですわ。セラさんに新しい恋人をと思いましたけれどそれはちょっとお預けにして、暫くは殿方との楽しい恋の駆け引きと言うお勉強を一緒に致しません事?陛下もセラさんさえ笑って下されば大して文句は…いいえ、陛下に口出しなどさせは致しませんわ。それで丁度セラさんにお勧めの方がおりましてまずはわたくしと一緒に―――」

 口を挟む間もなく続けるリリスからセラを救い出したのはシールだった。

 「セラ殿はこれから陛下と夕食のお時間です。話が尽きない様ですのでリリス王妃も同席なさいますか?」

 「あら、まあ…」

 あの殿方はどうだ、この殿方の好みはどうだとか息せき切らず話し続けたリリスが、シールの一言で突然話すのを止めたかと思うと…扇を口元に当て大きく息をつきながら青い顔をして長椅子に腰を下ろした。

 「何だかわたくし気分がすぐれませんの、この様な状態ではとても陛下にお会いできませんわ。」

 「そうですか…では、セラ殿参りましょう。」

 「え…あの、シールさんっ?リリス王妃が―――」

 さっきまでは具合が悪いとはとても思えなかったが、今のリリスは顔色も悪く辛そうだ。

 置いて行くには忍び難く、しかしセラはシールに腕を退かれてリリスの部屋を出される。

 「仮病ですよ。レトから戻って以来あの調子で陛下を避けられておいでなのです。いつもの事ですからどうぞお気になさらず…」

 カオスの大事なセラを危険に曝してしまった為、後ろめたさでリリスはカオスと会うのを避けていた。今のリリスを黙らせるのにカオスの名は極めて有効なのだ。

 シールはそのままセラを部屋まで送り届ける。

 「カオスの所に行かなくていいの?」

 「残念ながら陛下は急な仕事が入りまして今宵はセラ殿とお過ごしになれません。」

 シールはイルジュを幽閉してある塔から戻って来ている筈のセラの姿が見えなかったので捜していたのだ。

 案の定セラはリリスに捕まってくだらない話しに付き合わされていた。

 「セラ殿もお疲れでしょうから食事はこちらへ届けさせます。今日はゆっくりとお休みになられて下さい。」

 「そか…じゃあご飯の後にお風呂に入ってもいいかな?」

 「勿論かまいませんよ。そのように言いつけておきましょう。」

 「ありがとうシールさん。それじゃあお休みなさい…かな?」

 セラは首を傾げて笑う。

 お休みには早いけど今日はもう顔を合わす事は無いだろう。

 セラの笑顔にシールはほっとした様に笑顔を返した。

 城を出た時は何かに苦しんでいる様子だったセラだが、その時に比べると今は幾段にも元気そうである。

 「お休みなさい。」

 シールは扉を閉めると、溜まった仕事を片付ける為に執務室へと戻って行った。

 

 






 さすがに今日は疲れた、そろそろ寝るかぁ~

 ご飯をいっぱい食べてゆっくり湯につかり暖まった。

 腕を伸ばして欠伸をしながらセラは「あっ!」っと声をあげる。


 「マウリーさんの所に行くの忘れてた…」


 城の前で出迎えてくれたマウリーは腕を骨折していた。

 剣を握り馬を操る騎士にとって骨折は致命傷だろう。

 いつ何があるか分からない生活をして来たセラにとってそれは非常に気になる事態だったし、指とは違い腕を動かせないのはかなり不自由しているに違いない。

 しかし―――

 既に夜の帳は下り、だからと言って皆が寝静まっている訳でもない。シールに許可を求めても許されるかどうか分からないし、ついて来ると言われてはまたもや迷惑をかけてしまうではないか。

 (よしっ、こうなったら仕方が無い。気は引けるけど…)

 セラは自分の周りに結界を張ると、マウリーのいるであろう騎士宿舎を目指した。

 

 そんなに強い結界ではなく気配を消す程度の物だったが、日頃魔法に慣れ親しんでいない者達には有効で、誰もセラを『見よう』とは思わない。魔法使いやセラを見ようとする者がいないため、擦れ違う人は皆セラに気付く事なく通り過ぎて行く。


 騎士宿舎は深夜になっても明かりが消される事は無く、役目での身回りや夜の自由時間を楽しむ者たちが行き交い出入りしていた。

 擦れ違いざまに体が触れないように気を使いながら、前に訪れた事のあるマウリーの部屋を思い出しつつ廊下を進む。

 多分ここだろうと思うが、周りは皆同じ扉かつ隣はウェインの部屋だと言う。

 (間違えたらまたお説教ね…)

 緊張しながら、セラは戸惑いがちに扉を叩いた。


 「…」

 (いないのかな?)

 叩いた音が小さすぎたかもしれないと思い恐る恐るもう一度…やはり遠慮がちに扉を叩いてみる。


 「―――留守だ。」


 一呼吸置いた後で返事が聞こえた。 

 留守?

 「あの…マウリーさん?」

 セラは扉に張り付いて、他に聞こえないよう小さな声で囁く。


 「…」


 返事が無い。

 (聞こえなかったかな?)

 セラが再び張り付くと同時に扉が開かれ、鈍い音を立ててセラの鼻にぶつかる。

 「痛だっ!」

 「セラちゃん?!」

 セラが鼻を押さえて見上げると、驚いたマウリーが翡翠色の瞳で見下ろしていた。

 「どうしてこんな所に―――?」

 マウリーは夢でも見るかにぽかんとしていた。

 一度連れ込んだ事があるとはいえ、騎士宿舎に女がいる事自体が不思議な事態。しかも目の前のセラは何処となく霞んで見えていて―――やがて少しずつ確実な実態を持って来る。

 結界と言うやつか―――?

 初めて目の当たりにした現象に、目の前のセラが魔法使いであった事をマウリーは実感する。

 その時廊下の向こうで騎士達の話し声が聞こえ、セラはビクリと肩を震わせ焦った。

 「取り合えず中へ―――」

 マウリーはセラの手を引っ張って部屋に連れ込むと扉を閉めた。

 

 セラは勧められるまま椅子に座ると、マウリーは寝台の上に腰を下ろした。

 「ウェインと何かあった?」

 セラは昼間の出来事を思い出しピクリと体を揺らす。

 「マウリーさんの手当てをしようと思って―――」

 肩から布で吊るされたマウリーの左腕を指す。

 「こんな時間に?」

 「後でって言っておきながら忘れちゃってて…ごめんなさいっ」

 セラは勢いよく頭を下げる。

 「ああ、その事。こんなの気にしなくていいのに。でも嬉しいな、ありがとう。」

 腕を怪我したお陰で訓練はサボれるし、何かといい訳に出来るしで都合のよい事もあったが、実際生活するにおいては不便さを痛感していた所だったので、セラの申し出は喜ばしい限りだった。


 「僕なんかの為に内緒で城を出て来たの?」

 マウリーは初めて完全な魔法のみによる治療を受けながら訪ねる。

 「明日より今日の方がいいかと思って…シールさん忙しそうだし、それに言ったらついて来るに決まってるんだもん。もう子供じゃないんだからそんなの必要無いのにね。」

 子供じゃないから必要があるんじゃないのかなぁ~

 小声で呟くマウリーにセラは「え?」っと顔をあげたが、直ぐに触れたマウリーの腕に視線を戻した。

 触れた部分は青白い光を発している。

 セラは真剣な眼差しで手元を見つめていて、時折金色の睫毛が瞬きで揺れていた。

 間もなくして光が陰り消滅すると、セラはほっとした様に肩の荷を下ろす。

 「ちょっと動かしてみてくれる?」

 マウリーはセラに言われるまま腕を上げたり回したり、触れてみたりとやってみる。

 久し振りに添え木から解放され、とても軽くさっぱりした気分だった。

 「すごいな―――」

 感嘆に呟きが漏れた。

 これが魔法の治癒力と言う物なのか。

 折れた腕がこんなにも簡単にあっさりと治ってしまう。

 「ありがとうセラちゃん。何か…感動!」

 マウリーの翡翠色の瞳がきらきらと輝いた。

 「よかった。」

 セラはほっとすると立ち上がる。

 「それじゃマウリーさん、またね。」

 「え、もう帰っちゃうの?」

 意外そうにマウリーは投げかける。

 「だってもう遅いし…それに黙って来ちゃったから見つかったら大変だもん。」

 セラの言葉にマウリーは人差し指をたてて左右に振る。

 「夜はまだまだこれからだよ?」

 不自由さから解放された途端、マウリーの悪い虫が騒ぎだした。

 「城の外に出るにも何にしても許可許可って…それじゃセラちゃん息詰まるでしょ?治療のお礼にいい所連れて行ってあげる。」

 マウリーは上着を着込むと言うが早いか窓を開け、セラに手を回して軽々と抱き上げた。

 「うえぇっ、マウリーさんっ?!」

 「いやあ爽快爽快!」

 腕は軋みも痛みもなく絶好調。

 開けた窓枠に足を掛けると、マウリーはセラを抱いたまま何の躊躇もなく飛び降りた。 

 ここは二階だ。

 『ぎぃぃ――――』

 セラは両手で口を覆って悲鳴を飲み込んだ。

 マウリーは殆ど衝撃も無く雪面に着地すると、愕然とするセラを下ろす。


 「さ、行こっか?」

 マウリーはセラの手を引いて、上機嫌で街へと繰り出して行った。

 

 





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