第7話 戦闘服のムキデレラ
お庭で日課のスクワットをしていると、いつもの男がやって来ました。仕事帰りのようです。
「おやお姉さん。武道会へは行かなかったのかい?」
「あら、おにーさん。ええドレスコートが必要らしくて行けませんでした」
「それは勿体無い。ああ、良かったらこれを使いなよ」
そう言って男は箱をムキデレラへと投げて寄越しました。
箱を開けると中にはゴージャスなドレスが入っておりました。
しかも通常のサイズではなく、結構大きめなサイズ。
「これは?」
「知り合いのドラァグクイーンから貰ったんだが、オイラは着ないから。良かったら。たぶんサイズは合っていると思うよ!」
ムキデレラは男の言う“ドラァグクイーン”とやらが何か分かりませんでしたが、取り敢えずお姉さん達よりも超絶ド派手なドレスを着る方というのは理解できました。
貴族なのでしょうか?
そう聞けば男は違うと言います。
世の中色んな方がいるものです。
「一応着てみてくれ、せっかくだからサイズが合わなかったら直してやるぞ」
男に薦められ、せっかくなのでとムキデレラは着てみました。
何ということでしょう。
女性にしてみれば筋骨隆々のムキデレラの体に、ドレスは違和感なく馴染みます。
ほんの少しお尻がきつめですが、そこは腰まで入っているスリットに備え付けられている飾りヒモを結び直せば何とでもなるといわれ、やってみるとピッタリになりました。
「コルセットは要らないのですか?」
「何を言っているんだお姉さん。オイラ達には筋肉という名の天然コルセットをいつも身に付けているじゃないか」
そう言って男は自慢のシックスパックをピクピクと動かしました。
「そう言われればそうですね」
ムキデレラも男に釣られてシックスパックをピクピクと動かしました。
その後、一緒に付いてきたらしい強化ガラスのヒールと合金の髪飾りを装着すれば。
あらあら何ということでしょう。
いかついゴリラがゴリラ女帝へと早変わり。
「うむ。思った通り似合うではないか。じゃあこれも身に付けてみてくれ」
男はムキデレラに素敵なナックルをプレゼントしてくれました。
「お前さんが武道会へ出たら使って欲しいと思っていたものだ。鉛が入っていて重いが、一撃一撃が重くなる」
「これは良いですね」
そう言ってムキデレラは近くの木に向かって試し殴りをしてみました。
すると木は一撃で折れて倒れてしまいました。
ナックルも傷ひとつありません。
「おにーさん、ありがとうございます」
「良いって良いって。あとこれも。仮面は女の華だからな。よし、これでドレスコートはバッチリだから参加できるな」
「ええ。きっと文句無しです」