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万引きJKGメン、盗賊に転生する。  作者: ざとういち
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第8話 万引きJKGメン、盗賊になる。

盗賊兄妹と別れ、マイカは異世界で平穏に暮らそうとしていた矢先。町にはマイカの手配書が貼られていた。


「……ウチが万引きJKGメンと

 名乗ったのは昨日が初めて。」


「じゃあ、やっぱり“これ”の

 犯人はトカゲの盗賊団しか

 いねぇな……。よく見たら

 依頼人がリザード盗賊団って

 書いてあるわ……。」


「クソッ……。あいつら

 名前も知らねェ盗賊団の

 クセに、なかなか鬱陶しい

 真似ばかりしやがる……。」


「昨日の今日だ。まだ

 そこまで広まってない

 だろうが……。」


「盗賊同士で情報を共有して、

 マイカのことが広まるのは

 時間の問題だろうな……。」


「そ、そんな……。」


盗賊になるつもりはなかったマイカだったが、もう自分の意志ではどうすることも出来ない状況に追い込まれていた。


「じゃ、じゃあ!マイカは

 あたいたちとお別れしなくて

 良いってこと!?」


「ツムギ……。お前

 マイカの顔見てみろ……。

 嬉しそうにすんじゃねぇよ。」


「あ……。ご、ごめん……。」


マイカと離れたくないツムギはつい喜んでしまったが、困惑しているマイカに気付くと申し訳なさそうに顔を伏せた。


「いや、大丈夫だよツムギ。

 ……ウチが悪かった。」


「マイカ……?」


「覚悟を決めたよ。

 ウチはこの世界で

 盗賊として生きる。」


「……!!」


ツムギはまだ喜んで良いのか分からず、嬉しそうにするのを思わず我慢してしまう。


「でも、ふたりの迷惑に

 なるなら、ウチはやっぱり

 ここで別れるけど……。」


「その必要はねぇよ……。」


「俺たちはお前を誘いたくて

 ウズウズしてたんだからな!」


「レオ……!」


「おう、ツムギ。

 もう喜んで良いぞ。」


「…………や。」


「やったぁーっ!!

 ありがとうマイカ!!

 これからよろしくねっ!!」


「うん。よろしく……!」


マイカに抱きつき、猫の力を使うのに犬のように喜ぶツムギ。マイカはツムギの温もりを感じると、ようやく安堵した気持ちになれたのだった。


3人になったペルーシャ盗賊団。一行は町を離れ、次なる標的を探すため、旅を再開した。


数日は平和な馬車の旅を楽しむマイカたちであったが、食料調達である町に立ち寄った時。レオが盗賊の手配書を仕入れてきたことで空気が変わった。


「あったぞマイカの手配書。

 もうこんな離れた町にまで

 広まってやがった。」


「うわぁ……。」


「保安官が各地に

 配布してる手配書に

 紛れ込んでた。」


「本当に懸賞金を払う

 つもりがあるか怪しいが、

 金に目が眩んだ盗賊は

 お前のことを狙ってくる

 だろうな……。」


「だ、大丈夫だよマイカ!

 あたいも賞金首だし!

 もちろん兄貴も!」


それは大丈夫なのか…?と心の中で思いながら、マイカは励まそうとしてくれているツムギに笑顔を向けた。


「さてと、次の標的は誰にすっか。」


レオはピラピラと手配書の束をめくる。…ある人物の写真で指が止まった。


「……こいつにしよう。」


「……あ。」


突然、手配書を見たレオとツムギの空気が重くなる。マイカはただならぬ雰囲気を感じ、緊張感を高めていた。


「あ、兄貴……。で、でも。

 マイカはまだ入った

 ばっかりだし……。」


「問題ねぇ。俺が片を付ける。」


そう言い放つと、レオはコイントスをする。


「……表。」


コインをキャッチした手を退けると、コインは表を向けていた。


「今日は絶好調だ……!」


好戦的な目で笑うレオ。レオのこんな表情を見るのはマイカは初めてだった。2人が見ていた手配書がテーブルの上に置かれている。マイカが覗き込むと、そこには鎌を持った男の写真が印刷されていた。


…一行は食料と手配書を調達した町へ再び戻ると、レオは手配書を手にしながら、あちこちで情報収集していた。


一方、マイカとツムギは、手配書の件はレオに任せ、2人仲良く服飾店を物色していた。


「見て見てマイカ!

 これ可愛いよね!?」


ツムギは可愛いと言いながら、何かの動物の牙で作られたネックレスをマイカに見せてきた。


「う、うん……!」


マイカとは趣味が違っていたので、なんとも言えない反応になりそうなのを、必死に取り繕う。


「あ!これも可愛い!」


ツムギは牙やら爪やら骨やら、動物で作られたアクセサリーをやたらと気に入っていた。


(ツ、ツムギって

 こういう趣味なの……!?)


動物好きなマイカは冷や汗を流しながらも、思いっきり買い物を楽しむツムギを微笑ましく思っていた。


「あ!これなんて

 良いかも……!?」


するとツムギは、今まで興味を示していた物とは全く違う、綺麗な赤い布を広げていた。


何やらマイカのオレンジの髪色と見比べているようだった。マイカは不思議そうにその様子を眺めている。


「……うん!似合う!

 すみません!これください!」


散々いろんな物を物色していたツムギが、突然あっさり買い物を済ませた。そして、買ったばかりの布をマイカに手渡す。


「マイカ……。これ巻いてみて?」


「こ、これ……ウチの……?」


こくんと頷くツムギ。友達からのプレゼント。そんな経験がほとんどないマイカは、思わず涙ぐんでしまった。


「これで少しでも手配書と

 印象が変われば

 良いなと思って……。」


(な、なんて良い子なの

 この子は……!?)


涙目になりながら、さっそく赤いバンダナを頭に巻いてみるマイカ。


店内にあった鏡にオレンジと赤の色合いが並ぶ。少し派手だが、明るく女の子らしい雰囲気を感じさせた


「うん……。凄く良い……。

 最高。ありがとうツムギ!」


「えへへへへ……。」


服飾店の店主も、2人の様子に思わずほっこりしてしまうような、そんな温かい雰囲気に包まれていた。


…店の外からマイカのことを狙っている影以外は。


(あれが万引きJKGメンのマイカ。

 ふふふ……。アタシがその首頂くわ。)

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