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万引きJKGメン、盗賊に転生する。  作者: ざとういち
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第6話 襲撃、化け物トカゲ

「頭領!気が付きましたか!」


マイカとツムギがレオと合流してしばらく経った頃、ツムギに蹴り飛ばされ気を失っていた盗賊団の頭領が目を覚ました。


「……あぁ、クソ……。

 あのクソガキ共……。

 散々コケにしやがって……。」


盗賊団がアジトにしている洞窟、その奥には巨大な鉄格子が存在感を放っていた。中には唸り声を上げている黒い影が鎮座している。


「ヘッヘッヘッ。今に見てろ……。

 “こいつ”を解き放ってやる。」


一方その頃、マイカはアルバードを撫で回していた。


「うえへへへへ。アルバードぉ。

 うえへへへへへへ……。」


基本的に落ち着いた振る舞いをしているマイカだが、実は可愛い動物には目がなかった。若干引いているアルバードにはお構いなしに、マイカは愛情たっぷりに戯れていた…。


「いやぁ!マイカとアルバードが

 仲良くなって嬉しいねぇ!

 良かったね!アルバード!」


アルバードの様子には気付かずに、ツムギはとても満足そうに2人の様子を眺めていた。


ツムギは盗賊家業なんてものをやっている弊害で、歳の近い女の子と遊ぶことなど全く出来なかった。ツムギはマイカとなんとか親睦を深めたいと思っていたが…。


「これからマイカを

 近くの町へ送り、

 そこに住む俺の知り合いに

 預けようと思う。」


「……え?」


仲良くなりたいと思っていた矢先、レオがそんなことを言い出したのでツムギは固まった。


「ちょ、ちょっと兄貴!

 何言い出すの!?」


「落ち着け。良いかツムギ?

 マイカはカタギだ。

 俺たちと一緒にいると

 いろいろ迷惑掛けちまうんだよ。」


レオはマイカのことを気遣い、一刻も早く自分たちとの関係を断ち切ろうとしていた。


「……うん。わかったよ。」


その意図を汲み、ツムギは渋々納得した。明らかに落ち込み、一気に元気をなくしてしまったツムギを見て、マイカは胸が痛くなった。


(ツ、ツムギ……。)


マイカもツムギと仲良くしたいと思っていた。レオも誠実な大人の対応をしてくれる。マイカの中で2人の印象はかなり良かった。


だが、“盗賊団”という肩書き、その一点がマイカの心を迷わせる。本当にこの2人と行動を共にしてしまって良いのだろうか。マイカは覚悟を決めることが出来ずにいた。


その時。


『……ズンズンズンズンズン。』


地響きと共に、巨大な影が砂埃を撒き散らしながらマイカたちの元へと迫っていた。


「んん?なんだありゃ……?」


レオが目を凝らして砂埃の中を確認する。すると、山のように巨大なトカゲの怪物が猛スピードで突っ込んできていた…!


「ヤベェ…!ツムギ!急いで

 アルバードと馬車を連結しろ!!

 マイカ!馬車に乗り込め!!」


「わ、分かった…!!」


レオは的確に指示を出すと、トカゲを警戒しながら突如コイントスをした。宙に舞うコインを左の手の甲と右の手のひらで受け止める。


「……裏。」


レオが手のひらをどかす。コインは絵柄が彫られている表面を上にした状態で手の甲に乗っていた。


「チッ……!ダメか……。」


次はサイコロを手のひらから出した。手の中で一振りするとそのまま放り投げる。


サイコロは“1”の面を上にして止まった。


「やっぱ今日は運が悪い……!」


レオは“何か能力を発動させようとしていた”ようだが、一連の動作を終えても何も起きる気配はなかった。


レオはアルバードの連結とマイカが乗り込んだのを確認すると、自分も馬車に乗り込んだ。


「アルバード!出来る限り全速力で頼む!」


『グアッ!』


アルバードが返事をすると、強靭な足腰で巨大な馬車を引っ張りながら全力で走り出した。


「す、凄いパワー……。」


アルバードの可愛い顔からは想像もつかないような力で、人間を3人も乗せた馬車を引っ張る様子にマイカは驚いていた。


「だが、あんまり無理は

 させられねぇ……。

 なんとかあの化け物と

 ケリをつけねぇと……。」


「しかし、なんなんだあの

 馬鹿デッケェトカゲは……?

 あんな知り合い、俺には

 いねぇぞ……!?」


レオがトカゲに困惑している中、ツムギは汗だくで目を泳がせていた。


「……まさかお前。また俺が寝てる間に

 どっかの盗賊に手ェ出したのか?」


「ご、ごめん兄貴!

 だって兄貴が寝てる間

 退屈だったんだもん!!」


「許す!!」


「許すの!?」


レオが一瞬でツムギを許したあまりのテンポの良さに、マイカは思わず突っ込んでしまった。


「可愛い妹が謝ってたら

 まぁ許すわな……。」


「シ……シスコン……。」


巨大なトカゲに追われるマイカたち。その様子を遠くから双眼鏡で眺める人影が並んでいた。


「へへへへへ……。

 良い気味だぜ。

 “あいつ”は俺たちでも

 手に負えねぇ化け物だ。」


「あの小娘に蹴られた瞬間、

 腰布を引き千切っておいて

 正解だったぜ……。」


「小娘の匂いをたっぷり

 嗅がせて、“あいつ”は

 若い女が食べたくて

 しょうがなくなってる

 だろうよ……!!」


頭領の策略を、さすがっす!と子分たちは一斉に褒め称えた。頭領は上機嫌で笑い転げていた。


必死で化け物トカゲから逃げるアルバード。しかし、徐々にその距離は縮まり始めていた。


「マズいぞどうする……。

 何も策が思い付かねぇ……。」


体力を消耗し続けるアルバード。トカゲを止める術がなく焦るレオ。


ただでさえ絶望的な状況だというのに、トカゲは口を大きく開けて何やら不穏な動きを見せる。


「……ッ!!アルバード!!

 急いで右に曲がれッ!!」


『グエッ!?』


アルバードは慌てて指示に従い、体を傾けながら右へと進路を変える。


トカゲの口が赤く発光すると、勢いよく炎の弾丸が馬車目掛けて放たれた…!


…間一髪。レオが予測したおかげで火炎弾をかわすことが出来た。着弾した地面は岩が砕け散り、激しく炎上している。


「マジかよ……。あんなの

 反則だろうが……。」


…その様子を見ていたツムギが馬車の後部へと身を乗り出す。


「ツムギ……待て……。

 馬鹿な真似はやめろ……!」


「あのトカゲはあたいのことを

 狙ってると思う……。だから

 あたいが囮になれば兄貴たちは

 逃げられるはずだよ……。」


「お前はどうするんだ!?

 犠牲になるなんて絶対

 許さねぇぞ……!!」


「でも!!このままじゃ

 みんな全滅だよ……!!

 大丈夫……な、なんとか

 してみせるから……!!」


「ツムギッ!!」


そう告げるとレオの制止も聞かず、耳と尻尾を生やしたツムギは馬車から飛び降りてしまった…。


「クソォ!!俺には

 どうすることも

 出来ねぇのか!?」


壁を殴り歯を食いしばるレオ。その表情を見ていたマイカの目には、自分の先生、黒瀬の顔が重なっていた。


「…………。」


「お、おい!!お前まで

 何しようってんだ!?

 あんな化け物相手に!?」


マイカも馬車から身を乗り出そうとしているのを見て、レオは慌てて引き留めようとするが…。


「大丈夫……。

 ウチには策がある……。

 必ずあの化け物を止めて

 ツムギを連れ戻す……!!」


「レオさんはアルバードと馬車を

 お願いします……!」


力強い目でそう告げると、マイカもツムギに続いて馬車から飛び降りた。


「待てッ!!クソッ!!

 子供2人に任せて

 留守番してろってのか!?」


レオはサイコロを2つ取り出し投げる。どちらのサイコロも“1”の面が上を向いていた。


「クソッタレ……。」


「いざとなったら、

 俺があいつらの

 身代わりになる……。」


2人に危機が迫った時には、自らを犠牲に2人の盾になろう。レオは心の中でそう決めた。その時が来るまで馬車の中から戦況を見極める。

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