表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万引きJKGメン、盗賊に転生する。  作者: ざとういち
21/21

第21話 イチかバチか

「マイカ!私におぶさって!

 ツムギの力で一気に

 馬車まで行くからっ!!」


「う、うん……!」


リナはマイカを背負うと、嗅覚と聴覚を頼りに、馬車の元へ急いで駆け出した。


(ツムギ……。)


リナの背中で揺られながら、マイカは間に合うか心配になっていた。“死神(ライフスティール)”と戦闘を始める前からツムギはかなり弱っていた。“死神(ライフスティール)”はさすがに手強く、リナと2人がかりでもかなりの時間をロスしてしまった。


「大丈夫……!ツムギは

 強い……!レオさんも付いてる!」


リナが声を震わせながら、自分に言い聞かせるように呟く。森を抜け、遠くに馬車が見えてきた。


馬車の前で、マイカがリナの背中から降りると、すぐさま馬車の扉を開けた。 


「ツムギっ!レオっ!

 命を取り戻してきた!!」


馬車は静まり返っていた。レオはツムギのそばで立ち尽くしている。マイカとリナはすぐにツムギの元へ駆け寄った。


「はぁ……はぁ……。」


リナが荒い呼吸を上げる。なんとか言葉を捻り出そうと喉をこじ開けた。


「ね、ねえ……。ツムギ……。」


「い、息してないんじゃ……。」


「そ、そんな……。」


ツムギは人形のように、微動だにすることもなく固まっていた。マイカはとにかくツムギに命を返そうと、奪ってきた能力を発動する。


「“死神(ライフスティール)”!!」


巨大な鎌を片手に持ちながらツムギの体に触れ、少し多めに90年程の命をツムギに注ぎ込む。…いや、注ぎ込もうとする。


しかし、ツムギに命が流れていかない。


マイカが触れているツムギの肌は冷たくなっている。…間に合わなかったのは明らかだった。


「…………うぅッ!!」


マイカは目を瞑りながら、ツムギに触れている手に力を込める。だが、いくら命を注ぎ込もうとしても、ツムギを生物だと認識せず、“死神(ライフスティール)”は命を渡そうとしない。


「なんで……!!なんで

 流れていかないのッ!?」


「お願い神様……!!

 ツムギを返して……!!」


マイカは涙を流しながら、諦めることなく力を込め続ける。リナも涙を零しながら、両手を組み、奇跡を祈り続けている。しかし、奇跡が起きることはなく、ツムギが蘇ることはなかった…。


「マイカ……リナ……。」


ツムギのために戦い、涙を流してくれる2人に、レオは心を打たれていた。ふと、リナを見る。猫耳と尻尾が生えていることに気付いた。


「お、おい。マイカ……。

 お前の持ってる力って、

 他の人間にも渡せるのか?」


「え……?う、うん……。

 さっき初めて出来たんだけど……。」


「もし俺に“死神(ライフスティール)”を渡したら、

 俺は“ギャンブル”も同時に使えるのか?」


「う、うん……。使える……。」


「マイカ頼む……!!

 俺にその力全部渡してくれ!!」


「えっ……!?」


レオの突然の提案。今まで死んでいたレオの目には光が戻っている。それを見たマイカはレオを信じることにした。


「分かった……!

 奪った力も命も、

 レオにまかせる……!!」


レオに奪った命と“死神(ライフスティール)”が渡された。レオはサイコロを3個振る。しかし、レオの“運気”は戻っていない。これは本当に“賭け”だった。


(ここで賭けに勝たなきゃ、

 俺たちは今までなんのために

 頑張ってきたんだッ!!)


(絶対に出す……!!

 一番デカい数字を!!)


(そして、ツムギを

 蘇らせるための力を

 手に入れる……!!)


レオがサイコロを3個投げた…!

1つ目のサイコロの目は“6”だった。続いて2つ目のサイコロも動きが止まる。これも“6”だ。そして、最後のひとつ……。


“1”が見え、そこで止まりそうになる…!


全員、固唾を呑んで見守る…。レオは最後まで諦めない…。


“6”だ。6のゾロ目で止まった。“死神(ライフスティール)”の力が、“ギャンブル”で引き上げられる最大の18倍まで跳ね上がった。


「……頼むッ!!」


ツムギに触れ、手に力を込め、命を流す。

だが、やはり流れない。それでも、レオは命を注ぎ続ける…!


「ツムギ……ッ!!

 お前の友達が……!!お前が

 起きるのを待ってるんだ!!」


「起きてくれ……!!ツムギッ!!」


レオの涙がひと粒、ツムギの体に落ちる。


『ドクン。』


ツムギの胸に触れているレオの手に、心臓の鼓動が一度響いた。レオはそのまま命を注ぐ…!


「うわあああああッ!!」



「…………。」


「…………あ。」


「あに、き……。」


ツムギの目がゆっくりと開いた。涙で顔がグチャグチャになっているレオを見ながら、ツムギは笑っていた。


「泣かないで……。」


レオに手を伸ばし、指で涙を拭った。


「うああああああっ!!

 アアアアアアアアッ……!!」


レオは我慢出来なくなり、思いっきり泣いていた。マイカとリナも涙が止まらなくなった…。



…それから、数日が経過していた。


「ふぅー……。」


マイカは椅子に座りながら、ひとりで紅茶を飲んでいた。


「あれ。マイカがティータイム……?」


通り掛かったリナが、信じられない物を見るかのような目で見ていた。


「……聞いたよツムギに。」


「な、何をかしら……?」


「ウチがティータイムも

 しないような女子力の低い

 女だと、リナが言ったって。」


「そ、そんな言い方してないわよ!!」


「リナはウチをナメてる!!

 ウチだって優雅に紅茶を

 飲む時だってあるんだよ!!」


「わ、分かった!!ごめん!!

 分かったからそんな

 怒らないで……ッ!!」


マイカとリナが揉めてる声を聞き、ツムギが馬車の中に入ってきた。


「またケンカしてるのふたりとも?」


「け、ケンカなんかしてな…」


「……してる。」


「だからごめんって

 言ってるでしょ!?」


「ふふふふふっ。

 あはははははっ!」


ツムギが楽しそうに笑っているのを見て、マイカとリナは揉めていたこともどうでも良くなるのだった。ツムギの首には牙のペンダント、耳には爪のイヤリングが揺れていた。


「おーい。お前らそろそろ

 出発するぞっ!!」


「はーいっ!!」


レオが声を掛けると3人は元気良く返事をした。馬車の一角にある棚の上には、レオが毎晩楽しみに飲んでいるお酒のボトルが置かれていた。


ペルーシャ盗賊団は、新しい冒険へと旅立つのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ