第19話 足手まとい
“死神”はレオとの戦いを終えた後、一時的にアジトにしている小高い洞窟へと戻っていた。辺りに滝が流れ、遥か下には滝壺が見える。
その洞窟で、しばらくレオとの戦いの疲労を癒やしていた。
「……さてと、そろそろ行くか。」
“死神”はゆっくりと立ち上がると、再びツムギの元へ向かおうとしていた。
「待っててね。ツムギ。
寿命が尽きそうな女の子の顔を
見れるなんて、今から
楽しみでしょうがないよ。」
“死神”の異常な性癖、死期が近い少女の苦しむ顔を見て楽しむ。ただそれだけのためにツムギの命は奪われていた。
“死神”がツムギの想像に夢中になっていた時、水の弾丸が彼を直撃した…!
「ぐわっ……!」
マイカとリナだった。マイカは猫の力で嗅覚を人間の数十万倍に引き上げ、なんとか居場所を特定していた。リナの“水鉄砲”が直撃した“死神”だったが、今まで盗んだ命を使い、そのダメージをすぐに回復していた。
「こっちから君たちの所へ
向かおうとしていたのに、
わざわざこんなところまで
来ちゃったんだね。」
「せっかくだから、
君たちの苦しむ顔も
見せてもらおうかな。」
マイカとリナ。ツムギとはまた違うタイプの少女を見比べ、“死神”は舌なめずりをしていた。その視線にリナは鳥肌が立っていた。
「絶対に許さない……。
こんな奴のためにツムギが……!」
「リナ。落ち着いて……。
ウチはこれから“集中”を使って
“死神”に接近戦を仕掛ける……。」
「隙を見つけたら即座に
“オールハント”で能力を奪う。
リナは後方から援護して欲しい……!」
「わ、分かった……。気を付けて……!」
猫の力を発揮し、四つん這いで構えるマイカ。“死神”は大きな鎌をゆっくりと掲げていた。
「はぁッ!!」
視界をスローモーションにしながら、マイカは四肢で地面を蹴り、勢いよく“死神”に飛び掛かる…!
身体能力は上がっている。感覚も研ぎ澄まされている。“死神”の動きは手に取るように分かっていた。
鎌がマイカの頭上を通り抜ける。“死神”の攻撃速度はマイカに追い付いていなかった。あっさりと“オールハント”を狙える状態になり、マイカは拍子抜けしながら“死神”に手を伸ばしていた。
「マイカ!!危ないッ!!」
緊迫したリナの声が洞窟内に反響した。マイカは慌てて後ろに飛び退ける。リナは“炭酸”を放っていた…!
炭酸の爆発が巻き起こる。“炭酸”が着弾した場所に“死神”の姿は無かった。マイカは急いで“死神”の姿を探した。
…マイカの背後に“死神”は立っていた。頭には猫耳、臀部には尻尾を生やしている…!
「な……!?なんで
ツムギの能力を……!?」
「おかしなこと聞くね。
君も使ってるクセにさ。」
「僕は命を奪ったんだよ?
そしてその命を自分の力に
変換出来る。能力くらい
使えても不思議じゃないよね?」
「……くッ!!」
“死神”の速度はマイカと互角になっていた。誰にも捕まらず暗躍し続けていた盗賊だ。やはり一筋縄ではいかなかった。
苦戦し始めるマイカを援護しようと、リナは手のひらを“死神”の足元へ向ける。
「“粘液”!!」
粘着性の弾丸が数発発射され、“死神”の周囲に着弾した。マイカは“粘液”を“死神”に踏ませるように誘導しながら戦い始めた。
「そんなしょうもない手に
引っ掛かると思ってるの?」
「“命の嵐”!!」
突如、命を消費した暴風が巻き起こり、マイカは上空へ吹き飛ばされていた。
「ま、マズい……!」
空中で身動きが取れなくなったマイカの背後に
“死神”が回り込むと、“粘液”が大量に飛び散っている地面へ蹴り飛ばした…!
「あぐっ……!!」
「自分で喰らいなよ。」
「マイカ……!!」
あれだけの“粘液”に体が触れたら抜け出せなくなる。リナは咄嗟に以前のマイカの真似をして、武器を作り出した。
「“粘液鞭”!!」
粘液で作った鞭を最大限引き伸ばし、マイカを空中でキャッチし、自分の元へ引き寄せた…!
「あ、ありがとうリナ……!」
「いや、ごめん。私のせいで……。
余計なことした……!」
「ほんとだよね。その子は
マイカの足引っ張ってるよね。」
「……っ!!」
ショックを受けている場合ではないのだが、リナは足手まといになっていることを感じ、“死神”の言葉に怯んでしまった。
「リナ……!そんなことない……!
リナがいないとウチは困る……!!」
そう告げるとマイカは再び“死神”に接近戦を仕掛ける。鎌の攻撃をかわしながら必死に“死神”へ手を伸ばすが、なかなか触れることが出来ない。
リナは援護しようと手をかざすが、また足を引っ張ってしまうのではないかと恐れ、弾丸を発射出来ずにいる。
すると、“死神”は何やら拳を握り、そのまま回転させ始めた。初めて見せる“死神”の奇っ怪な動きに、マイカは警戒を高める。
“死神”が手を開くと、そこからサイコロが放り投げられた。
「……ッ!?」
見覚えのある光景。サイコロは“5”の面を上にして止まっている。
“死神”の速度は5倍になっていた。
マイカは“集中”を使用しているにも関わらず、“死神”の姿はマイカの視界から消えていた。必死で辺りを探すが姿を捉えられない…!
「マイカッ!!う、上…」
「遅いよ。」
上空から鎌を振り下ろしながら“死神”が落下してきた。マイカの体を鎌が貫いた。
「うああああっ……!?」
「マイカっ!?」
マイカは、体から何かが抜けるような感覚に襲われていた。
「ごちそうさまでした。
10年くらい盗っちゃったかもね。」
「くっ……。」
「そ、そんな……。」
マイカは“集中”し直し、猫の力で再び立ち向かおうとする。“死神”はサイコロを2つ振った。“10”が出た。レオから運気をも奪っている“死神”は大きな数字を容易に出してしまう。
“死神”は10人に増えた。マイカを取り囲み、鎌で一斉に攻撃しようとしている。
「くっ……!!」
マイカはなんとか隙間を縫って攻撃を回避するが、手数が多すぎる…!一撃、二撃と鎌が直撃してしまう…!
「20年、30年……。ほら。
どんどん寿命が無くなっていくよ?
マイカこのままじゃ死んじゃうよ?」
「あうぅ……!!」
「や、やめて……ッ!!」
リナが“粘液鞭”を構え決死の特攻を仕掛ける。そして、“粘液鞭”にさらなる属性を加えた…!
「“熱湯”ッ!!」
高温の鞭が“死神”の分身をまとめて薙ぎ倒す…!分身は全て消え、“死神”は一人に戻っていた。
「はぁ……はぁ……!!」
「ははははは!凄い。
君は追い詰められると
力を発揮するタイプなのかな?」
マイカは寿命を奪われ続け、リナは精神的に追い詰められていた。そんな中、“死神”はレオの強力な“ギャンブル”をも使いこなしている。…絶望的な状況だった。




