第18話 不運
“死神”と交戦するレオ。しかし、彼のスキルである“ギャンブル”で生み出したサイコロ2つは、唯一のハズレである“1”を出して並んでいた。
「どうしたの?攻撃しないの?」
“死神”は鎌を解除して素手になっていた。
「くッ……!!」
“1”を出したレオには戦う術がない。挑発には乗らす、距離を取りつつ再び1分経つのを待った。
レオはリスクを少しでも減らしたい心理状態になり、振るサイコロをひとつにする。
「……頼むッ!!」
“1”だった。レオは青ざめていた。普通は1が続けて出るなんてことは珍しいことではない。だが、運が良い時のレオが“1”を出すことはありえなかったのだ。
「な、なんで……ッ!?」
素手のまま“死神”がレオへ迫った。ショックで硬直しているレオをそのまま蹴り飛ばした。
「ぐあぁッ!!」
細身の男のただの蹴りで、レオの顔は激痛で歪んでいた。レオの打たれ強さすら最弱になり、なんてことない攻撃で大ダメージを受けてしまっていた。
「君の能力。面白いね。
自分で自分をそんなに
弱くしちゃうなんてさ。」
“死神”は地面に倒れているレオを見下ろしながらクスクスと笑っている。
レオは倒れながらコイントスをする。
「お、表。」
「……う、嘘だろ。」
裏だった。今日は運が良いはずだった。実際能力はフルに使えていた。それなのに何故かコイントスは運の悪さを表していた。
諦めきれずレオは再びサイコロを振る。
“1”だった。何度振っても“1”が出てしまう。
「あ、あぁ……。」
レオは絶望していた。先程までの威勢の良さは鳴りを潜め、変わることのないサイコロの目をずっと見つめ続けている…。
「ふふふふ。」
そんなレオの姿を満足そうに眺める“死神”。もはや勝敗は決していたが、レオに何故サイコロの目が“1”しか出ないかを説明し始めた。
「さっき鎌が当たってたよね?
あの時奪ったのは君の命じゃない。
……君の運気だよ。」
「運気は人間の命と
切っても切り離せない物だ。
だから命を司る僕の能力で
奪えちゃうんだよね。」
「…………。」
レオは何も言葉を返すことが出来なかった。“死神”は、何も反応しなくなってしまったレオに不満そうな顔をしていた。
「あ〜あ。つまんないな。
もっと遊べると思ったのに。」
“死神”は再び鎌を構える。今度は命を奪うつもりだった。
「さっきのでいっぱい
命使っちゃったからさ。
やっぱり君で補充させてよ。」
鎌を振り上げる“死神”。レオはそれをただ呆然と眺めることしか出来なかった…。
「レオッ!!」
突然、少女の声が辺りに響く。猫耳のシルエットが“死神”を鋭い爪で攻撃する。
「くっ……!?」
マイカだった。ツムギから力を借り、嗅覚と聴覚を強化させてレオの後を追っていたのだ。
「大丈夫!?レオ!?」
「マ……マイカ……。」
マイカは、目の前の人物がレオだと信じられなかった。あまりにも弱々しく、生きる希望を失ったかのような目をしていた…。
「レオに……何をした……!?」
マイカの髪が逆立つ。牙が生え、爪が伸び、猛獣の力を解放していた。
「君も見たことない顔だ。
それなのにツムギと同じ能力。
面白いね。君も。」
「……いや、そういえば
噂を聞いたことがある。」
「万引きJなんとかのマイカだっけ?
相手の能力を奪う厄介な力を
使う少女がいると、一部の盗賊の
間では話題になっているよ。」
“死神”はマイカのスキルを警戒していた。強力な能力を使う存在ほど、能力を奪われた時のリスクは高いのだ。
「僕の力、奪われたくないし。
もういいや。帰るよ。」
「帰れると思ってるのッ!?」
マイカが“死神”に飛び掛かろうと体を縮める。次の瞬間、“死神”はレオを狙って斬撃を飛ばしていた。
「思ってるよ。」
「“命の切断”!!」
「……ッ!!レオっ!!」
マイカはレオを抱えながら斬撃を回避した…!…“死神”は姿を消していた。
マイカは匂いを追って追跡しようかと迷ったが、放心状態のレオをほうっておくことは出来なかった。
…レオを連れ、馬車に戻ったマイカ。そこで目に入った物は、ベッドで苦しんでいるツムギの姿だった。
「ツ、ツムギ……?」
恐る恐るツムギに歩み寄るレオ。ツムギは虫の息と言えるほど弱っていた…。
「……さ、さっきお医者さんに
診てもらったんですけど……
て、手の施しようがないって……!」
リナが涙を溢れさせながら、嗚咽を漏らしてその場に崩れ落ちた。レオは棒立ちのまま、そのまま動くことはなかった。
リナの泣き声が馬車に響く。マイカはそれを聞きながら拳を震わせていた。
(な、なんで……?なんでツムギとレオが
こんな目に遭わないといけないの……?)
マイカは一人馬車の外へ出る。それに気付いたリナは、涙を流しながら慌てて後を追った。
「待ってよマイカ……!!」
「あいつにはレオさんでも
敵わなかったんでしょ!?
マイカ一人でどうする気なの!?」
「ウチには“オールハント”がある。
能力を奪えば、ツムギの寿命を
元に戻せるかもしれない……!」
「でも“オールハント”を
使っても、相手は能力を
所持したままじゃない……!?」
「生きて帰れなかったら
元も子もないわよ……!?」
マイカは頭を冷やす。リナの言う通りだと、友達の言葉に耳を貸した。
「うん……。そうだね。ごめん。
……だから、協力してくれる?」
「2人であいつを倒そう。」
「……っ!!」
「それがウチらの……。
2人への恩返しだよ!」
リナは涙を拭う。果たせていない2人への恩返しを今こそ果たそうと、マイカの覚悟に共鳴し、頷いた。
それを見たマイカが、懐から1枚の布切れを取り出す。
「それって……。」
“死神”が体に巻いていた包帯だった。マイカは爪で攻撃した時に“死神”から引き千切っていたのだ。
「これで匂いを追える……!!」




