第17話 復讐
通常の8倍の速度で走るレオ。その驚異的な速度で、あっという間にターゲットを捉えていた。
「……今日はそういう
気分じゃないって
言ったのにな。」
レオの気配に気付いた“死神”は空間から鎌を生み出す。
男が鎌を構えるのを確認したレオは、遠距離からナイフを投げつつ同時にサイコロをひとつ投げる。“5”が出た。
ナイフは5本に増え“死神”を襲う…!
“死神”は鎌をプロペラのように回転させナイフを全て弾いた。
「探したぜ……。いつも顔なんか
隠しやがって……。そんなに
復讐されるのが怖いのか?」
「僕は顔を見られるのが
好きじゃないだけだ。」
“死神”は包帯の他に、仮面やマスク等、その日によって顔を隠すアイテムを変えていた。目撃情報が一致しないため、手配書を発行しても広まらなかったのだ。
「君は前、僕に手も足も
出なかったじゃないか。
勝てると思ってるの?」
「……あの時は運が
悪かっただけだ。」
不運に不運が重なり、ツムギが“死神”に襲われた時のレオは、“ギャンブル”で“1”しか出せない状態に陥っていた。“死神”に相手にもされず、みすみす取り逃がしてしまっていたのだった。
「この鎌で相手を攻撃すると、
生命力を自分に吸収しちゃうんだ。
でも、今の僕は生命力に溢れている。」
「500年は生きられるくらいに
なってるだろうね。……だからもう
いらないんだよ。しばらくは。」
「知らねぇよ。こっちは500年分
殺すつもりで来てんだ……。いや、
1万年あっても足りねぇと思え。」
レオはサイコロを投げる。“4”が出た。腕力が4倍に上がり、岩を地面から引き抜き、“死神”に向かって投げた。
「……乱暴だな。」
鎌を振り岩を切断する“死神”。鎌を振り上げた隙を狙い、一気に接近するレオ。
「……ッ!?」
「ウオラアアアアアッ!!」
今までの恨みを込め、4倍の威力の拳で“死神”を殴り飛ばした…!
「ぐあぁッ!!」
血を吐きながら体を錐揉させ、森に生えている木を貫通し、何本もへし折りながら“死神”は吹っ飛んだ。
「はぁ……はぁ……。どうだ……?」
手応えは十分すぎる程あった。細身の体であれだけの威力の攻撃を耐えられるとは思えなかった。
「…………。」
「痛いなぁ……。」
遠くから声が聞こえた。ゆっくりと足音が近付き、たった今殴られたはずの“死神”が綺麗な顔で立っていた。
「な、なんだと……ッ!?」
効いていない訳はないとレオは困惑する。“死神”は呆れながら、今起こった現象について説明し始めた。
「だから言ったじゃないか。
500年分の命があるって。」
「怪我を治すのにその
エネルギーを少し使っただけだよ。」
「……クソが。マジで500年分
殴り殺さなきゃいけねぇのか。」
それを聞いた“死神”は、玩具を見るような目でレオを見つめながら呟いた。
「良いのかな?そんなことして。」
「あァッ!?」
「君が今、僕から削ってる命には、
ツムギの命も含まれているんだよ。」
「うッ……!?あ……。」
「君は自分の手でツムギを
殺しちゃうのかい?」
レオは怯んだ。“死神”はもしかしたら命を返す術を持っているのかもしれない。だが、大人しく返すとも思えない。
そう思っていたレオは、殺すつもりで“死神”を探していたが、ツムギの顔を思い浮かべると迷いが生じ、手が出せなくなってしまう。
「ふっ。じゃあね。」
レオが戦意を喪失しているのを見ると、“死神”は森の奥へ姿を消そうとしていた。
(……馬鹿か!?ここで逃したら
何も変わらねェじゃねぇか!!)
レオはサイコロを2つ振る。“10”が出た。レオの声量が10倍になった。息を大きく吸って全力の咆哮を“死神”に浴びせる…!
『グオアアアアアアッ!!』
「なっ……!?」
木を薙ぎ倒しながら声のエネルギー波が“死神”を吹き飛ばす…!“死神”は鎌を地面に突き刺し、これ以上吹き飛ばされまいと踏ん張った。
「……さっきの話聞いて
なかったのかな?」
「……どうせ俺が何しようが、
ツムギの命は返って
来ねぇんだろが……。」
「もし、ツムギが死んだら、
……俺も死んでやる。」
「君は本当に野蛮な奴だな。」
レオはサイコロを2つ投げる。“9”が出た。レオは9人に分身すると、チャンスと言わんばかりにレオの本体を残し、“死神”に向かって分身8人が一斉に突撃した。
「くっ……!!」
分身が攻撃されても命が奪われることはない。分身を利用し、ここで勝負を決めようとするレオ。“死神”は必死に鎌で8人を相手に立ち回っていた。
「ぐっ!がはっ!うわっ!?」
四方八方からの拳や蹴りが“死神”を襲う…!攻撃されながらも“死神”は蓄えた命を消費し、回復してしまっていた。そのまま分身の攻撃を1分耐えきった。
「チッ……。駄目か……。」
「酷いね。こんなに殴るなんて。」
肉体のダメージは回復されてしまったが、精神的には多少ダメージを与えたようであった。レオはこの勢いのまま攻め立てようとする。
いよいよレオが鬱陶しくなった“死神”は、本気で退けようと鎌を構えていた。
レオがサイコロを2つ振る瞬間を狙い、“死神”は攻撃を仕掛けた。
「“命の嵐”!!」
“死神”が鎌を振ると蓄えた命を消費し、激しい竜巻を巻き起こす。地面に転がっていたサイコロがレオごと吹き飛ばされる。レオはなんとか着地するが、2つのサイコロの内のひとつが“1”になってしまった…!
「し、しまった……!!」
“ギャンブル”はサイコロを2つ以上振ったとしても、ひとつでも“1”が出れば全ての能力が最弱になってしまう。レオの力は衰え、動きも鈍る。1分間しのがなければ次のサイコロも振ることは出来ない…!
レオは必死で体を動かし、“死神”の攻撃をなんとか回避しようとする。しかし、そんなレオの健闘虚しくあっさり追い付かれる。
「ふんっ。」
“死神”の鎌がレオの体を貫いていた。
「がはっ……。」
しかし、痛みはない。外傷もない。だが、レオの体に何か異変が起こっているのは確かだった。
「く、クソッタレ……!
命を盗られたか……!?」
「こっちは死ぬ気で戦ってるんだ!
生きてる内は何も変わらねェ!!」
“死神”は一撃加えると追撃もせず、ただただレオを見ながら1分待っていた。
頭に血が上っているレオはそんな様子にお構いなしに、素早く地面スレスレの高さでサイコロを2つ振る。
「今日の俺はツイてるんだ!
邪魔さえされなきゃ“1”が
出ることはねぇッ!!」
そうレオが言い放った時であった。
“1”のゾロ目。サイコロは2つとも“1”が出てしまった。
「なッ……!?」
「そ、そんな……馬鹿な……!?」
驚愕するレオを見ながら、“死神”は肩を揺らしながら静かに笑っていた。




