第12話 爆弾魔
「う、うぅん……。」
「ツムギ……!気が付いたか?」
「あ、兄貴……。」
水の弾丸の流れ弾を喰らい、意識を失っていたツムギが目を覚まし、レオはほっと胸を撫で下ろした。
「マイカとリナは……!?」
「分からん……まだ帰って来ない。」
レオはツムギに危害を加えられてしまい、リナに少し苛立っていた。その様子に気付いたツムギが優しく諭す。
「兄貴、あたいは大丈夫だから……。
リナが帰って来たら許してあげて……。」
「でも、お前は……!」
「あれくらい大丈夫だって……。
本当に全然大したことないから!
……あたいは明るく笑って過ごしたい。
それが一番の願いだから……。」
「……っ!わ、分かった……。」
レオはツムギの気持ちを汲み、リナを迎え入れることを決めた。…一方。
マイカがリナを追い詰めた矢先、謎の爆発が2人を襲った。そこにはロックバンドのような格好をした男が立っていた。
「な、なんなのこいつ……!」
リナが負傷した足を引きずりながら男を睨む。マイカもこの男に心当たりはない。初めて見る顔だった。
「俺は盗賊、爆弾魔のガウディ!!
よろしくお願いしますゥア!!」
男はガウディと名乗ると、その辺に落ちていた石を鷲掴み、マイカとリナに向けて放り投げた。
「リナ……っ!!」
マイカは、足を負傷してまともに動けないリナを突き飛ばしながら、なんとか石を回避する。
ガウディが投げた石は地面に触れると、一斉に光を放ったのち爆発した。辺りに轟音が響き渡る…!
「爆弾のスキル……!?」
「そうだYO!!俺は
触れた物を爆弾に
変えられるんだYO!!」
「生き物は
無理だけどNA!!」
強力なガウディのスキルに身構えるマイカとリナ。
すると今度は、ガウディは手配書を何枚か取り出し、折り紙を始めていた。
「YOYOYO!!
折るぜ折るZE!!」
「な、何やってるのあいつ!?」
「見ててもしょうがないでしょ!?
今の内に攻撃を!!」
ガウディの奇怪な動きに呆気にとられるマイカ。リナはその隙に攻撃しようと手をガウディに向ける。
「遅ぇYO!喰らえ!!
紙爆弾ッ!!」
ガウディが複数の紙飛行機をマイカたちに投げた。リナはそれを撃ち落とそうと狙う。
「“水鉄砲”!!」
水の弾丸と接触した紙飛行機が次々と爆発していく。爆風でガウディの姿は見えなくなっていた。
「あ、あいつはどこに……!」
マイカがガウディの姿を探そうと、煙を掻き分けて前へ出た。その時。マイカが蹴飛ばした小石が光り始める。
「……え?」
マイカは咄嗟にスキル“集中”を発動させる。スローモーションの中、少しずつ小石が爆発していく…!マイカは少しでも爆発範囲から逃れようと必死で足を動かす。
「くっ!間に合え……!!」
“集中”は視覚がゆっくりに感じるだけだ。実際にスローモーションになっている訳ではない。
マイカ自身は普通の速さで動いているに過ぎず、対処するにも限界があった。
逃げ切れないと感じたマイカが、自分の足元に手をかざす。
「バ、“炭酸”っ!!」
炭酸水の爆発を放つ。その弾ける衝撃で飛び上がり、間一髪爆発を回避した。
しかし、今度は地面に叩き付けられそうになっている。マイカは“粘液”の粘度を自分なりに調節して放った。
「“粘液”っ!!」
コンニャクのような弾力を持つ液体が地面に放たれ、マイカはそれをクッションにして衝撃を減らした。
「ジ、“粘液”にそんな
使い方が出来るなんて……!!」
自分以上に能力を使いこなすマイカに、リナは驚愕していた。
「リ、リナ!気を付けて……!!
ここ、辺り一面地雷だらけに
なってるよ……!」
ガウディは、2人が紙飛行機に気を取られている隙に、地面に落ちている小石を地雷に変えていたのだった。
「そんな物、撤去してしまえば……!!」
リナが“水鉄砲”で辺りの地雷を吹き飛ばそうとしていると、再び紙飛行機の隊列が飛んできた…!
「そらそら!空と大地の
爆弾ショーだYO!!」
「くっ!!鬱陶しい……!!」
リナが苛立ちながら紙飛行機を撃ち落としていく。その最中、煙幕から小石の爆弾が投げ込まれた。
「……ッ!!」
リナは回避しようと後ろに飛び退けたが、今度は設置されていた小石の地雷に足が当たってしまう…!
「あぁっ……!?」
「リナッ……!!」
リナの顔が引きつる。爆発に巻き込まれそうになっているリナを救おうと、マイカは再び“集中”を発動させる…!
(考えろ……考えろ……!!
リナを救う方法を……ッ!!)
(君は必ず、ウチが助ける……!!)
マイカはイメージを膨らませ、“粘液”で新たな武器を作り出した…!
「“粘液鞭”ッ!!」
粘液で作った鞭をリナに向けて伸ばす。鞭がリナを絡め取り、マイカの元へ一気に引き寄せた…!なんとか爆発からリナを救うことに成功した。
「……うっ!」
「リナ……!大丈夫……!?」
「う、うん……あ、ありが……。」
「何ベタベタくっついてんだYO!!
俺の爆発を大人しく喰らえYO!!」
再び紙飛行機を飛ばすガウディ。度重なる爆弾攻撃にマイカはキレていた。
「いい加減にしろっての……!!」
“粘液鞭”で紙飛行機を叩き落としながら、鞭をそのまま地面に叩き付け、設置された地雷をも撤去していく…!
「な、なんだTOッ!?」
そのままガウディに接近し、鞭で攻撃し続ける。ガウディはそれを必死に避けている。
「クソッ!?離れろYO!!」
ガウディは鞭を避けつつ、小石を蹴り飛ばしながら爆弾を作り、マイカを狙う。マイカはなんとか鞭で撃ち落とす。なかなかガウディを追い詰めることが出来ない。
「“水鉄砲”は私のスキルよ……!
あの子に負けていられない……!!」
リナは右手を左手で支えると力を集中させ始めた。炭酸水の弾にバチバチと稲妻が走る。…そして、慎重にガウディに狙いを定めた…!
「喰らいなさい……ッ!!」
「“強炭酸”ォッ!!」
極限まで高められた炭酸のエネルギー弾が、ガウディに向かって放たれた…!マイカに気を取られているガウディは寸前までそれに気が付いていなかった。
「なッ……なんだY……ぐ、
ぐわあああああああッ!!」
凄まじい炭酸の爆発がガウディを襲った。ガウディは遥か彼方まで吹き飛ばされ、星になって姿を消した。
「す、凄いね……リナ……。
リナのおかげで助かった……。」
「それは……こっちの台詞……。」
リナはマイカを羨望の眼差しで見ながら、次第に目を逸らし俯いてしまった。
「リナ……?馬車に戻ろう?
リナが盗賊だったとしても
ウチらは大丈夫だって……。」
「違うのッ……!!
わ、私は……。」
リナは体を震わせながら、思い出した記憶をマイカに話そうと覚悟を決める。
「わ、わた……私は……。」
「私は……人を殺した……ッ!!」
「……え?」
予想していなかったリナの言葉にマイカは動揺してしまう。マイカに拒絶されても断罪されても構わないと、リナは話を続ける。
「朧げだけど……私には確かに
人を殺した記憶がある……。」
「誰かが倒れてて……ずっと……
私を見てて……ち、血が……
血がたくさん流れてて…!!」
「う、うぅ……ッ!!」
リナはボロボロと涙を流しながら嗚咽を漏らす。マイカは心を落ち着けながら、リナの言葉を静かに聞いている。
「だ、だから……ッ!!
私は人殺しなの……ッ!!
私と関わらない方が良い!!」
「……無理だよ。」
マイカは静かに歩み寄る。そして優しくリナの手を握った。
「だって、リナは今、
自分を殺そうとしてる……。」
「じ……自分を……?」
「ウチは、いろんな人を
たくさん見る仕事をしてたから、
その人の言っていることが
嘘か本当かなんとなく分かる……。」
「確かに、リナは本当に
人を殺したのかもしれない。
でも、その時具体的に何が
あったかまでは思い出せてない。
そうなんでしょ……?」
「う、うん……。」
「ここでリナが一人になったら、
また荒野で行き倒れて
しまうかもしれない……。」
「誰も頼る人がいなくて、
困ってしまうかもしれない。
また盗賊に襲われて、酷い目に
遭ってしまうかもしれない。」
「そんなのウチは許さない……。
もっと自分を大事にして……!」
「じ、自分を……大事に……。」
リナは涙を零しながら、真剣な眼差しで語るマイカの言葉に耳を傾ける。
「少なくともウチには、
今のリナは悪い人には
見えない……。」
「もしも、リナが悪い人
だったとしても……。
罪悪感で押し潰されそうに
なって涙を流している
今のリナを、大事にして欲しい。」
「……なんて。ウチも昔、
罪を犯した人間だから、
偉そうなこと言えないけどね……。」
「マ、マイカが……?」
「うん……。でも、ウチの
先生が助けてくれて……。
今でもウチはその罪を
自分で許せてないんだけど……。」
「でも、あの時、先生が
許してくれたから……。
ウチは前向きに生きて行こうって
そう思えた……。だから……。
ウチはリナを許してあげたい……。」
「…………!」
「……さ、おいで。一緒に帰ろ?」
「マ、マイカ……。」
リナはマイカの手を取り、2人はゆっくりと馬車に向かって歩き始めた。馬車に戻ると、ツムギとレオが、リナを笑顔で迎え入れたのだった。




