第10話 謎の少女
鎖鎌のジャックを倒し、彼から金品を巻き上げたマイカたち、ペルーシャ盗賊団。(ジャックは保安組織に手配されている。当然、そんな機関に引き渡したら自分たちも捕まる恐れがあるので、彼らは懸賞金を得ることは出来ないのだった。)
一行は新たな盗賊のターゲットを探すため、旅を続けていた。
「……水が切れそうだな。」
飲料水の備蓄を確認していたレオ。人間が生きていくには水は必要不可欠な物。どうしても蓄えてもすぐに無くなってしまう。
「どっかにオアシスでもないか
探してくっか。」
「オアシス!?はいはい!
あたい行きたーい!」
ずっと馬車の中にいたツムギは、外に出たくて出たくてしょうがなくなっていた。
「じゃあ、ツムギよろしく頼むわ。」
「マイカも一緒に行こっ?」
「うん……!」
マイカとツムギは水を求めて、オアシス探しに出発した。ツムギは猫耳と尻尾を生やして猫の力を引き出しながら、蛇口の付いた大きな空のボトルを背負っている。
「……くんくん。」
ツムギはなにやらずっと鼻をヒクヒクさせながら、辺りを見回している。
「……ツムギ?何やってるの?」
「あ、これ?猫の力使うと嗅覚が
物凄く良くなって、水の匂いとか
分かるようになるんだよ!」
「えぇっ!?そんなことまで
出来るようになるの……?
凄いなぁ……ツムギの能力は……。」
マイカはツムギの能力に感心しながら、自分のスキルのことを考えていた。
(ウチの“オールハント”は
強力だけど、相手への
依存が大きすぎる……。)
(一度に奪える力もひとつだけ。
他の力を奪おうとすると、
今まで持っていた力を上書き
してしまう……。)
(そして、手に入れた相手の力は、
翌日には消失してしまう……。)
(何より、相手に触らないと
力を手に入れられない……。
この前の鎌男の時も、分身能力を
奪えてたら、レオが来る前にウチが
なんとか出来たかもしれないのに……。)
もっと上手く使いこなせないものかと、マイカは考えていたが、なかなか良いアイディアが浮かばなかった。そんなことを考えながら歩いていた時だった。
「……あっちから水の匂いがする!」
「見つけたの!?」
「……そ、それと……
ひ、人の匂い……?」
「……人?ど、どんな人?」
「さすがに匂いだけだと
あんまり分からないけど……。
女の子の匂いかな……。
動いてなくて、ずっと
同じ場所にいる……。」
「だ、誰なんだろ……?
ツムギ……少し慎重に
行こうか……?」
「う、うん……。」
自分たちはいつ誰に狙われるか分からない。敵が潜んでいるかもしれないと警戒しつつ、オアシスに向かうマイカたち。
「緑が見えてきた……。
あれがオアシスかな……。」
本来ならば、すぐにオアシスの元へ駆け出したいところだが、得体の知れない人間が近くにいるので、2人は緊張感に包まれていた。
「くんくん……。近いよ……。
そこの茂みの近く……。
やっぱり女の子の優しい匂い。」
恐る恐る茂みの先を覗き込む。すると。
「……ぅ。」
ツムギの言う通り女の子がいた。綺麗な青い髪をポニーテールに結わえている少女。しかし、マイカたちの予想と違い、その少女はぐったりとした様子で地面に倒れていた。
「た、倒れてる……!?
ど、どうしよう……!?」
「え、えーっとえーっと!」
2人とも医術の心得などほとんどないので、あたふたしながら少女の体の様子を見る。外傷はない。しかし、顔色が悪い。体の内側に何か異常があるようだった。
「水は近くにある……。
もしかして食べ物が
なかったのかな……。」
「この子お腹空いてるの!?」
「い、いや分からない……。
でも、やつれてるから……。
病気かもしれないし。」
「外傷がないなら、運んでも
大丈夫かも……。ツムギ、
水はウチが運ぶから、
ツムギは猫の力でその子を
運んであげられる……?」
「とりあえず馬車に運んで、
そこでレオにも診てもらおう。」
「うん、まかせて!」
人間の力に獣の力を上乗せして筋力が増しているツムギは、少女を軽々と抱える。マイカも目的の水を手に入れるため、大きな空のボトルに水を汲み、それを背負う。だが…。
「お、重っ!?」
マイカは動けなくなった。少女が運ぶにはあまりにも水の入ったボトルは重かった。こんなところで手間取っている場合ではないと、マイカは思考を巡らせる。
「そ、そうだ!ツムギ!
ちょっとこっち来てくれる!?」
「う、うん!」
「“オールハント”!」
ツムギにタッチし、ツムギから猫の力を借りる。マイカの頭にも耳が生え、お尻からは尻尾が生えた。
「うおっ!?楽っ!!
凄い!!猫の力っ!!」
先程は上がらなかった水入りボトルが軽々と持ち上がった。ツムギは猫の力と呼称しているが、虎やライオン等の猛獣のような力も発揮しているようだった。
「マイカとおそろだ!
マイカ可愛いっ!
猫耳似合うねっ!」
キャッキャと猫化したマイカに喜ぶツムギ。そして、ハッと我に返る。
「おっと!今はそんな
場合じゃなかった!
馬車に戻ろうっ!」
マイカとツムギはそれぞれ猫耳を生やしながら、水のボトルと少女を運ぶのだった。




