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彼女の親父


  七話

 【彼女の親父】


「さあ、話をしようじゃないか」


奏の父に招かれリビングに連れて行かれた。

付き合ってん2ヶ月弱で親に強制挨拶ってなんて鬼畜なイベントなんだよ。

誰か助けてくれー。

心の中でそう叫んでも誰も助けてくれないので大人しく話し合いをした。


「娘さんの彼氏の神原真司と言います」


うおー、緊張で頭がおかしくなりそうだ。

世の中のカップルは凄いなこんなイベントを乗り越えてるなんて。

俺の父さん俺に似て陰キャ陣営だから苦労しただろうな。


「ああ、よろしく頼むよ。娘とはいつ付き合い始めたんだ?」


「も、もうやめてよパパ!」


顔を真っ赤にしながら怒っている。


「いいじゃないか、久しぶりに神原くんと話したいんだから」


えっ?ひ、久しぶり?

やべー全然思い出せないわ、俺この人あった事あったっけ?


「に、2ヶ月前からです。一つお聞きしたいんですが以前ど、どこかでお会いしましたか?」


「あったよ。覚えられていないのは少し寂しいな。小さい頃は一緒に遊んでたんだよ2人とも」


「「え、えーーー」」


2人の声が重なる。

そんな事より俺昔に奏と会ったことがあったんだ。

でもどこでだ?あったなら忘れるか?こんな可愛い子を。


「ちょっ、ちょっとどう言うことパパ!」


「今から説明するよ。まずは、君のお父さんすなわち和樹との出会いから話さないとな」


「父さんも知ってたんだ……」


正直驚いた。俺と奏にこんな接点があったなんて。

まるで運命みたいだな。

考えてて、恥ずかしいけど。


そして奏のお父さんは話始めた父さんとの出会いを。





時を遡ること数十年前


中学の入学式


「俺隣の席の四条亮太って言うんだよろしくね」


「こ、こちらこそよろしく。な、名前は神原和樹です」


この時の父さんはめちゃくちゃ『きょどって』いたらしい。

さすが俺の父さんだ。

そんな姿が面白く、ちょこちょこ話すようになったらしい。

でも、1番の要因はやはり先が隣だった事だろう。

想像しなくても分かる。

だって俺の父さんだぜ。絶対喋りかけてもらったに決まってる。


「おい、和樹今日はどんな漫画書いてるんだ。見せてくれよ」


「や、やめてくれよ。四条くん」


この頃の父さんは毎日学校で漫画を密かに書いていたらしい。

だか、ある日たまたま放課後書いてるのを見つかってしまいこんな感じで絡まれるようになったのだ。


「わ、悪い。いやか、俺に見せるの」


「そ、そう言うわけじゃ………。そのちょっと恥ずかしいんだよ」


「大丈夫だって、前作超面白かったし」


「じゃ、じゃあ」



こんな感じの毎日を高二まで続けていたそうだ。だが、高三になった途端父さんは漫画を描くのをやめたそうだ。


「なあ、和樹なんで最近漫画描かないんだろ?」


「もういいだろ、亮太。俺には才能なんてなかったし受験勉強しなきゃだし。才能ないし」


この一言聞くだけで俺の父さんだなと思う。

特にこのネガティブっぷりは。

父さん譲りみたいだ。


「才能ないなんて言うなよ。しっかり面白いと思うぞ」


「亮太には、分からないよ。創作が上手くいかない辛さが。ないんだよ才能が」


「そんな事ないって。絶対あるよ」


「お前には理解できないだろ、いろんな才能を持ち合わせたお前には。1番言われたくないよ亮太に才能があるなんて」


「あっそう、そうかよ。そうやって『受験勉強』って言って言い訳しとけよ。後悔するのはお前だぞ」


「ほっとけよ、関係ないだろ」


「もう一度言ってやる。逃げるなよ受験勉強なんて言って、今逃げたら一生に逃げ続けるぞお前はそんな人生を歩むのか?それでいいのか?後悔するぞ本当に」




「…………………っかてるよ」




この日父さんと亮太さんは出会って初めての大喧嘩をしたらしい。

結局卒業まで口を聞く事はなかったらしい。

でも、俺には分かる。

上手くいかない時の創作の辛さは。

尚更親しい人が期待してくれている時は。

それにしてもこの卑屈っぷり聞いてるだけでほんと俺の父さんだなと思う。


卒業式で事件があったらしい。

それは、全ての教室の黒板に1ページずつ漫画が描かれていたらしい。

卒業式が始まるまでずっとこの話題だったらしい。

話題になったのにはいくつか理由があった。

それは、隠してはいるが登場人物がこの学校の生徒だったこと。

話が面白い上絵がとても上手かったこと。

そしてなによりも話題になったのかラストに誰か宛のメッセージが書かれていた事だ。

これは告白では?となり盛り上がったらしい。



『この学園に最も相応しくない場所で待っている』


そうこのメッセージは父さんが亮太さんに送った物だった。

決して告白ではないぞ!

父さんホモじゃないし。

まぁ、それでも一種の告白だったのかも知れない。




亮太さんは卒業式後の写真撮影などをすっぽかし『屋上』に向かった。


「よう、和樹久しぶりだな」


「亮太なら来てくれると思ってたよ」


「まぁな、最下位のお前にこの学校の頂上は相応しくないよな。でもいい加減やめろよ、そう言う自虐ネタは」


「違うよ、ここ以外じゃ余計な人に見つかるから読んだんだここに。あれは、そのためのものであそこまで思ってもないよ」


「で、なんだよ?」


「亮太は、言ったよな俺に『逃げるな』って、俺ほんとその通りだと思ったんだよ。自分が情けなくてカッコ悪くて、ダサくて、才能のせいにしてて。だから見返してやろうと思って………」


「言いたい事はそれだけか?なら俺はもう行くぜ」


「だから、書いたんだ。俺たちの6年分の思い出を。お前には知って欲しかったんだ、認めて欲しいんだ。俺がこの一年近く頑張った証を誰よりも傷つけてしまったお前に。あんだけ酷いことを言って遠ざけたくせに、都合がいいのは分かってる、でも、でも俺はお前と仲直りしたいんだ」


「それで、終わりか………」


しばらく間があった。

まるで6年分の思い出をしっかりと溢れなく思い出すように。


「おっせーんだよ。謝るのが!」


「許してくれるのか?」


「ああ!それより見たぜあの漫画!超面白かったぜ。絵も見やすくなったしストーリも完璧だし、このバカやろうが」


泣きながら照れか隠しのように言った。


「すまなかった、あの時は」


「おう、また遊ぼうぜ!これからは楽しい事だらけだ」


それから父さん達は肩を組みながら泣いて騒いだらしい。

実に一昔前の青春の理想の過ごし方だと思う。


大学は別々だったが定期的に会い遊んだらしい。

結局父さんは大学で漫画を描くのはやめたらしい。

その時は喧嘩にはならなかったみたい。父さんがしっかりと理由を話したから。

そして、今の職に就くために頑張ったみたいだった。


数年後

俺たちが生まれた。

よく家族ぐるみで出かけたらしいが全く覚えてない。

海に行ったり、キャンプに行ったり、温泉に行ったり。

俺が年長の頃まで交流が続いていたのに何故か覚えていない。

年長と言ったらある程度は覚えいるもんなんだが………………。

俺の父さんの仕事の都合上遠くに引っ越し交流は無くなったらしい。








「これがパパが知ってる君の父さんの話で君たちの小さい頃のお話だ。聞いてみてどうだった?君のお父さんは」


こんな事聞かれたら答える解は一つに決まっている。


「やっぱり、父さんだなと思いました」


「そうかい、そうかい」


一つ疑問に思ったことを聞いた。


「そ、そのお義父さん……」


「君のお父さんではない!だから特別に亮太さんと呼ばせてあげよう」


「で、では亮太さん何故俺も奏も全く当時の事を覚えてないんでしょうか?」


長い長い沈黙があった。

慎重に言葉を厳選し極めて辛い表情で言った。


「まだ、知らない方がいい」


そんな顔で言われたらこれ以上は追求できないな。


「そうですか、ありがとうございます。ではそろそろお暇させていただきます」


「ごめんね真司、時間使わせちゃって」


「全然気にしないで、俺嬉しいよ奏と小さい頃会ってたって知れて」


「うん!私も」


本当に嬉しかったのだ。

好きな人とずっと昔会っていて遊んでいたなんて。全国の男の子が憧れるようなシチュエーションだと思う。

やっぱり俺は運命を感じた。


「それじゃ、また」


「また今度ね」


「いつでも和樹を連れて遊びに来い」


笑顔で送り出してもらった。


そして、今度こそお別れした。本当に長い1日だった。

初デートで彼女に嫌な思いをさせちゃって一杯楽しんで、亮太さんに会いめちゃくちゃ緊張し、昔会ったことが分かって嬉しくて。

いろんな感情を今日だけで感じることができた。

けど、見過ごせない点もあった。

『まだ知らない方がいい』あの一言にはいったいどんな意味が含まれているのだろう。

全く想像出来なかった。


どうだったでしょうか?面白かったでしょうか?

今回のお話は主に2人の父親の過去について触れていきました。

やっぱり似ていますね。

親子だけに。

奏は父のカリスマ性を受け継ぎ、逆に真司は父のネガティブさと不器用なカッコ良さを遺伝しました。

いやー薄々気づいてると思いますが後書き書くの苦手なんですよね。

何か書きたいけど、何書いたらいいか分からない!という最高のジレンマを抱えています。

ですから次回からはその日どんな事があったのかをちょこちょこ書いていければなあと思います。

では、次回の後書きでお会いしましょう。


ブックマーク登録をしてくれると励みにつながりますのでどうかお願いします。

次回も見てくれると嬉しいです。

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