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捨てられない気持ち

作者: 磨雄斗

私は、吾妻苺(あづまいちご)

なんだかんだあって大成功を収めた学園祭から、まだ気分が抜け出せないこの頃を生きている高校生だ。


そんな私は、今日、1人で部室に閉じこもっている。

作業をしながら、ぼーっと1人考え事をしている。


──私は、まだヤツのことを忘れられない。


ヤツ、とは副部長のこと。

招集かかってたのにサボって来なかった、私の元好きな人。大大大大っ好きだった人。


悩む私を慰めてくれた周りの人達の力もあり、その時よりはマシになったこの怒りと葛藤。

最近は落ち着いてきて、その代わり、また想う気持ちが強くなっている。


これは困った。あやつ裏切り者ですよ、私さん。


あのさあ、

招集かかってんのにサボるとかまじ無いからね?

あとあと部長が「まあ初めてじゃないし期待もしてないからいいよ(苦笑)」とかボヤいていたからね?

なんだよほんとにサボり魔じゃねぇかよあいつ……あいつ!!!!!!!!!


「あいつぁぁ!!!!」

バンッッ

と資料を乱雑に棚に置いた。棚だったからいけなかった。上から資料がヒラヒラ落ちてきた。はぁぁぁ。


大人しく拾っていると、ふと、部室のパソコンに目がいった。そういえば、しばらく起動してなかった。

使用頻度少ないと壊れるとか言うし、つけるか。


拾った資料を持ったまま、パソコンの電源をつける。


起動するまで資料を棚に置き終わり、パソコン前の椅子に座った。あ、なんか新しい動画がある。見てみよ。


カチッとクリック。

黒い画面から、パ、と出たのは、あの副部長のクラスの演劇監督の男子だった。どこかのスタジオで、ドラムを叩く様子がアップに写し出された。


これもしかして、学園祭のやつ?


この高校では、毎年「バンドをしたい!」という生徒たちのために、発表の時間が設けられている。

今年は動画での発表となり、バンドだけでなく、ツインボーカルや漫才、マジックをする生徒もいると聞いた。


そういや、あの監督の生徒は、合唱部に入っている。そして、今年の文化部のイケメン第1位とかに選ばれていた。

歌も歌えてドラムも叩けて更には演劇の監督も出来るしルックスもよしって神すぎない?何なん?それ1つでもいいからください?


そんなことを考えながら、ぼーっと見ていた私がダメだった。

そのまま、色んな男子生徒がギター弾いたり歌ったり女装して踊っているのを見ていたら、いつの間にか動画が終わった。

最後にベース担当だの歌手担当だのが書かれた短い出演紹介の中に、そう、いたのだ。


心臓がドキッとした。


副部長の名前があった。


動画編集、のところに。


え?


は?


これ1人で作ったの?


は?


は????


パソコン凝視。していたら完全に動画が終わった。


急いで動画を巻き戻し、彼の名前をまじまじと見る。


うわ、ほんとにいる。



なんで?


そんな才能もあるの?


え?


あんたも神じゃない?


演劇の音響監督もやって動画編集もするとか神じゃない?


はぁ?


「なんだよコイツ……」


私はうずくまった。


彼が………彼が私を嫌いにさせてくれない。


本当の神様が、彼のいいところを突然見せ始めて、私を混乱させているんだ。


そう、きっとそうだ。そうに違いない。


こんなの私の意思であるはずがない。


てか、意思じゃない。


神様がまだ、私にこの恋心を捨てさせてくれないんだ。


中途半端にどうしようもない人への恋を


私はまだ捨てきれていない。


止まったままの動画。


データを消すことは出来ず、タブを閉じてパソコン電源を切った。


捨てたい気持ちが、まだ心に残っていた。

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