26.
「先輩みんな小道具室でずっと寝てたんですか」
グランバトのついた嘘は苦しい言い訳のようなものだった。
「もっとマシな嘘を考えられなかったのかい」とコガネはずっと愚痴を零している。
今日は卒業の日。
石像の前に立って手を組む。サクリの施設での最後のお祈り。
全ては天使様のお陰──
私は天使様に全てを捧げる──
マザーに連れられて不開の門の前に立つ。
チャヤ、ワカバ、メイデン、ヒラ、オバタ、に別れを告げていった。
門が開いていく。
私達は彼らを置いて向こう側の世界へと旅立った。
門はすぐに閉じた。
そのまま進むと道が出てくる。そこを右に曲がって、そこから真っ直ぐいく。
「これからはお仕えする天使様とともに暮らして貰います。新たな生活で、今のマザーやシスターのような大人達の役割を果たす天使様の中でも最も偉い天使様の集まりを聖徒会と呼んでいます」
歩きながら話していくマザー。
「その中でのナンバーワン─会長─とナンバーツー─副会長─のお方に会いますので、御無礼のないように。そして、これからは聖徒会の言う指示を聞くように」
歩いていくと二人の天使様が待っていた。
普通なら初めて見る方だが、クルマミチ以外は見たことがある天使様だった。
「私は会長のルシファー。そして、こちらは副会長の……」
「ガブリエル様だ」
自分で自身のことに「様」をつけるのはどうだろうか。と思いつつもそのことは心の中に留めた。
二人に連れられて天使様の園を進んでいく。
これからまだ能力の使えない未熟な天使様─チャイ─に仕えることとなる。執事としての新生活。私は期待を膨らませた。
チャイの館──
これから私達はそこで暮らすことになっている。
館を囲む壁と門。ここも悪魔の侵入を守っているみたいだ。
門が開く。
門より先へと進むと巨大な庭園が広がっていた。庭園、花畑、川、噴水、森、何より真ん中に聳える巨大な館。豪勢な敷居に目を輝かせた。
チャイの部屋は相当広いらしい。その内の一室が私達サクリのものとなるみたいだ。
私達はチャイの館で二つに別れた。私とコガネとフキはガブリエルに導かれながら二階へ。サヤとクルマミチはルシファーに導かれながら三階へ。
ガブリエルに導かれて進む。
「ここがコガネの仕えるホテイの部屋だ。入っとけ」
コガネが部屋へと入った。
私とフキが再びガブリエルに連れられていく。
そして、止まる。
「ここがナルミの仕えるテンマの部屋だ。入ってろ」
私は部屋に入った。
そこでいるのは男の子の天使様だった。
「お前が執事の…………あれ?」
「はい。今日から執事として仕えるナルミです。よろしくお願い致します」
「なっ、女だと! てっきり執事だから男だと思ってた」
すぐに感じ取るどこか空いた距離感。
「最悪だ!」
どこか一波乱の予感が渦巻いている。
一つ屋根の下で男と女。
天使様と執事。
新しい生活は期待と不安、波乱を引き連れてやってきていた。
【二人の主人公、テンマとナルミ。新たな物語が幕を開ける──】




