24.
サクリの施設の外。
秘密基地であるツリーハウスで悪魔メフィストフェレスが現れた。それと同時に、天使様のガブリエルが現れた。
忌々しいサーベルの矛先が天使様に向かう。
「ガブリエル……ココデマケルウンメイ」
「俺様が負けるって? 馬鹿言うなよ。俺様が誰か、その体に染み付かせてやるぜ。その前に殺しちまうかも知れねぇけど」
指パッチンとともに空中に浮いている銃が輪を描くようにガブリエルの周りを回っている。
悪魔が分身? した。
その数は計六つ。
その内二体がサーベルを振って攻撃した。
が、ガブリエルの付近に近づいたサーベルの先側は消えて、離れると元に戻った。謎の現象によりガブリエルに攻撃は当たらない。
「俺の能力でテメェらの攻撃は当たらねぇんだよ。諦めな」
再び指パッチン。
空中に浮いた銃が自由自在に舞い、そこから銃弾が放たれる。無数の銃弾が跳弾し、悪魔のみを滅多うちにする。
けれども、その攻撃では倒しきれない。
その時、一体の悪魔がニヤリと嗤った。
『ウルドス』
その攻撃がガブリエルを斬り裂いた。
残酷なまでに赤い血が舞う。
「嘘だ。俺に攻撃が当たるだと? そんなはずは……」
「コレガゲンジツダ。オマエハミライヘアトマワシニスルダケ。タダソレダケ」「ナルホド。ミライノワタシヨ。リカイシタ」
銃での応戦も虚しくガブリエルを襲う剣撃。
ガブリエルはその場で倒れ込んだ。
「くそっ。万全な体制でいったのに。負けるのか。クソやろぅ」
そこに一人の天使様が舞い降りた。
重症のガブリエルの近くに立つその天使様に見覚えがあった。
「アナタサマハ!」悪魔が一同に改まり立膝をついて頭を下げていく。
「ルシファー サマ!!」──
どういうことだろうか。
天使様が悪魔と仲間?
「どういうことだ? 私は貴様のことなど知らないのだが」
彼自身にも分かっていなかったようだ。
では何故、悪魔は身を改めていったのか。それは全く分からなかった。
「こんなに無様になって……まさかだが、油断したのか?」
「ちっ。そのまさかだ」
「相手は天使に危害を成し得る強大な五つの上級悪魔だ。油断なんてしていられないだろうにな」
ルシファーが剣を手にかけた。
ビリビリと威圧感が周りへと広がっていく。
その凄まじさがひりひりと感じ取っていた。
「なあ、天使様がおっしゃった上級悪魔って五つじゃなくて七つじゃなかったか?」
ルシファーの言葉が風に乗ってここまでやってきた。
その天使様に危害を成し得る強大な悪魔とは極悪魔七だと教えられた。しかし、天使様が言うには五つという。
「それは未来で呼ばれる名称だからですよ。残る二体はまだ天使に危害を与えるかも知れない強大な悪魔にはなっていないですから」
後ろにはグランバトがいた。
いつの間にここへと来たのだろうか。そもそも何故ここを知っているのだろうか。
「ルシファー様。ここは私めに任せて頂けないでしょうか」
「グランバトか。何か知ってるのか。この時間、この場所に悪魔が来ると伝えたのも貴方だった。一体貴方は──」
「私めはただ【日】の能力を扱えるだけでございますよ」
鋭い剣が抜かれた。
彼を覆うのは数体の悪魔。はっきり言ってフリだった。
「ヤハリアラワレタカ。ワタシヲタオスモノ。ココデキサマヲタオシミライヲカエル!」
悪魔が総出でグランバトを狙うが、彼は全ての攻撃をいなしていき全ての攻撃に対処する。
「貴方方では勝てませんよ。それが定められた未来ですから。そろそろ反撃しますね」
サーベルが彼の体に向かって振られる。
『クロノス』
サーベルの軌道は確実に彼の体を通っているのに、なぜなのか知らないが攻撃は当たっていないように見えた。まさにガブリエルの時と同じ特殊な能力に見える。
「ナゼソノワザヲ……」
彼が数歩引いて飛距離を保つ。そこから勢いよく悪魔を挟んだ向こう側へと剣を振りながら瞬間移動した。
『スクルドル』グランバトは悪魔一体を斬り裂いた。
だが、斬られたはずの悪魔は斬られていないように見える。ダメージが一切ない。何が起きたのだろうか。
沈黙の風。
ザンッ。
数分の時間差でその悪魔は斬られた。
「未来を斬る剣撃でございます」
斬られた悪魔は動けなくなり、そのままふっと消えた。
残りは五つ。
『ヴェルダンディオ』
その攻撃が悪魔を斬る。
その悪魔もまた負傷しふっと消える。残るは四体。
「これは現状最強の剣技でございます」
「ドウシテソノワザヲツカエルンダッ!」
「その前に二人を未来に返さなければなりません。それが過去の決定事項ですから」
彼の圧倒的強さによって悪魔が二体負傷し、ふっと消えた。
「ヤハリマケルノカワタシハ……」
「ええ負けるのです。この攻撃を受け、今までの信念を変えて因縁を断ち、貴方は新しい自分を探すのです。この技で終わりに致しましょう」
私達はグランバトと悪魔メフィストフェレスとの決闘を見守ることしかできなかった。
悪魔がサーベルを持って襲いかかる。
グランバトは冷静に技を放った。
『ウルドス』──
グランバトの放った攻撃がサーベルを真っ二つに折り、そして、悪魔に肩から骨盤まで斜めに伸びる一生消えない傷を負わせた。
悪魔がその場で立ち膝をつく。
この決闘はグランバトの完全勝利となった。
なぜ彼はメフィストフェレスの技を使えたのだろうか。疑問が湧いてくる。
「グランバト……。キサマニハドウシテモカテナイ。ナンナンダ、オマエハ!」
「執事長。略称、グランバト。貴方には本当の私の名前を知らなければならない」
「ホントウノナマエ……ダト?」
「ええ、私の名前は……」
戦いが終わり慌ただしく戦々恐々とした風が今や穏やかな風となって吹いていた。
ゆっくりと二人の会話に耳を傾ける。
「そう、私の名前は、メフィストフェレス。以後、お見知り置きを」
【グランバトはメフィストフェレス──? 明かされる真相とは?】




