18.
私達は天使様に仕えるために試験を受けている。
第一試験は爪を水に溶かし、色付いた水を見てコップの底に描かれたものを読み取るものであった。
そして、第二試験は──
「あなた達には一人一人ずつこの人形と一緒に試験を行って貰います。人形はあなた達の後ろを着いてきます。指示することもできますが、その場で止まることしかできません」
真っ黒な人型人形。それはパートナーに着いていくこととその場で止まることしかできない。
「一人に一つの人形。この人形にカラーボールを当てれば一点が加算されます。逆に、この人形にカラーボールが当てられればマイナス三点されます」
「なるほど。当てるよりも当てられる方が得点の増減が高いのか。これは当てにいくよりも守りに入った方が良さそうだな」
「人形以外にカラーボールが当たっても得点には関係ありません。もちろん、体に当てても少し痛いだけです」
「つまり、人形に当てて、人形を守ればいいんだね。僕にかかれば簡単だね」
私の後ろについた人形。無音でそこにいる。
私達はスマートウォッチとインク銃を手渡された。
「これを使って人形を指示することができます。そして、この時計からミッションや連絡事項などを通達しますのでよく注意して確認してください。また御手洗などに行きたくなった場合はこの時計で連絡を送ってください。こちら側が指示しますので。時間は二時間です。その間に他の四人に勝てるよう各々の作戦で戦ってください。これより十分後に第二試験を開始します。各自分かれてください」
第二試験は銃撃戦だ。
ルールは以下の通り。
①一人につき一体の人形が後ろにつく。
──その人形は自動で後ろを着いてくる。また、その機能を止めて、その場で留まらせることができる。
②人形にカラーボールを当てれば一点。
③人形にカラーボールが当てられればマイナス三点。
──人形以外にボールが当たっても得点の増減はなし。もちろん、体に当たっても増減はない。が、少し痛い。
④試験中に幾つかミッションが送られる
──参加する、しないは自由。だが、参加にはリスクが伴うがその分のリターンも大きい。主な指示はスマートウォッチから送られる。
⑤インク銃が初期の武器
──カラーボールをそのままスローインしてもよいし、ミッションで手に入れた武器を使ってもよい。
私達は施設のそれぞれの場所に散り散りとなった。
腕につけたスマートウォッチから開始始まりの合図が放たれた。
二階の窓から外の様子を眺める。
まだ騒がしい気配はしない。きっと誰もが相手の動きを警戒しているのだろう。それもそうだ。当てられればマイナス三点。取り返すためには三回も当てなければならない。リスクがでかすぎるのだ。
今のままだと誰もきっと動けない。
この試験にはミッションがある。それによってどう動いていくのか。それが試験の結果を左右しそうだ。
きっとみんな様子見している。
私の予感は見事に外れた。
「見つけたわ。勝負よ、ナルミちゃん」
彼女と私の人形の直線上の真ん中に立つ。こうして当てられるのを防ぐ。
彼女が動くのに合わせて私もまた動く。
お互いに銃口を真っ直ぐ向けている。
緊張状態が続きそうだ。
唾を飲む。予断を許さない。
ピビビッ。
スマートウォッチが響いていく。
今すぐにでも読みたいが、それどころではない。しかし、その情報が大切なことだったら?
私は一ついい提案を思いついた。
「ミッションかも知れないし、一旦、休戦しない? 私が読み上げるから、それまで絶対にボールを投げない……。いい?」
「いいよ。サヤはコガネと違ってそんな卑怯じゃないしね」
私はスマートウォッチに書かれた文字を読み上げていく。
「ミッション。今から図書室を一時的に解放する。図書室には戦闘に役に立つ四つの道具を置いた。早い者勝ちで一人一つずつ持っていってもよい。道具は以下の四種類。インクライフル、アクリル板、人形の行動追加メモリ、網鉄砲、の四つである」
読み上げ終えると再び銃を持った。
お互いが銃を向け合う。
「さあ、続けましょう。サヤが直々に倒してあげる」
緊張状態が続けば続くほど時間が進んでいく。
早くしなければ道具は選べなくなっていく。さらに、道具が残り一個になった時にサヤに出し抜かれれば道具は手に入れられない。
できれば早くこの場を離れたいがそうはいかなかった。
「絶対に点を取るから覚悟しなさい」
サヤは自信満々の笑みを浮かべていた。
【ナルミ対サヤ──。どちらが勝つのか!】




