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17.

 ここは"サクリの施設(いえ)"。

 ここに住む子ども達は"サクリ"と呼ばれている。サクリはここで育ち、最後には試験を受ける。その試験に合格したものは偉大なる存在である天使様に仕えることができる。


「執事としてのテストは終わりです。この後は本試験が残っていますので心して準備しておくとよろしいでしょう」


 試験は最も重要なイベント。

 しかし、何をするのかは一切分からない。

 そんな試験が目の前にやってきていた。

「不安だよね」隣でそわそわしているサヤに向けて発した。

「ふっ。僕にかかれば何がきても合格できるからね。そうはならない君たちは心配していればいいよ。ほんと可哀想にね」

(サヤ)は心配なんてしてないから」

 試験を受ける私、コガネ、サヤ、フキ、クルマミチ。みな気が立っていた。

「今から試験を始めますよ。呼ばれた人から一人ずつあちらの部屋へ向かってください」

 マザーの説明。前までは疑いに明け暮れていたが、今はマザーへの疑いは一切ない。そもそも、それ以上に試験への不安が上回っている。

 コガネさん──

 フキさん──

 徐々に人の減っていく待合室。一方で不安は増していく。

「ナルミさん──」

 呼ばれたので指示通りに部屋へと向かう。そこは茶道室のような畳の上だった。

「爪を切らせていただきます」

 右手を差し出すと、マザーは爪切りで切り落とした。赤色の爪の破片が皿の中へと落ちる。

 爪の垢を煎じて飲ませたい、という(ことわざ)があるが、マザーはその落ちた爪を煎じていく。

 液体の入ったコップに入る私の赤い爪の破片。液体は綺麗な赤色に染まっていた。奥底には何か文字が書かれている。

「綺麗な(あかね)色ですね。色は──赤」

 茜色の液体が私の前に置いてある。

「ナルミさん。コップの底に描かれたものを教えてください?」

 大きな文字で「R」というものがあり、上の丸の部分は何故かくものようにモコモコになっている。

 そのことを伝えたらマザーは優しく微笑んだ。

「これで最初の試験を終わります。二つ目の試験がありますので、向こうのドアから別室へ移動して下さい。次の試験は全員が揃い次第行います」

 次の部屋に向かった。

 そこには終わったコガネとフキが待っていた。

「終わったかい。僕は爪の入った色水の底に描かれたものを当てる試験だったよ。君たちもかな」

 私達もそうだ。

「全く何をさせたいのか分からないよ。それより、描かれていた雲と雷は何を示しているんだ?」

「雲と雷? 描かれてたのは丸の部分がモコモコとした「R」じゃ……」

 ふと気づく。モコモコした丸の部分が雲であって、文字の下の部分が雷のようなものだったら。私は絵を全く捉えられていなかったようだ。

 段々と焦っていく。

 私は大きなミスをしていたのかもしれない。テストに落ちてしまう不安が余計に大きくなった。私は最初のスタートダッシュをしくじった。

「ふん。モコモコした「R」がある訳がないじゃないか。面白いね。答えは雲と雷だった。答えを間違えたんだ。残念だったね」

「いや、何言ってるんだ? 答えは植物の園だろ?」

「どういうことなのかな?」

 サヤもこの部屋にやってきた。

「あれは植物が描かれた絵だろ? モコモコした丸や雲はあれは花びらだった。他にも至る所に植物が描かれてた。その(つた)が文字や雷に見えたんだろうな」

 フキはさらに上をいっていた。

「なにそれ。サヤ、全く見えなくて口って言っちゃった」

 一方、サヤはさらに下をいっていた。

「何。どーいうこと? サヤの水がすごく濃い金茶色で全く見えなかったんだけど」

「僕は黄金色だったけど、サヤよりかはマシそうだったね」

「俺は透けた小麦色だった。透けていたお陰で絵全体が見れた」

「ふん。今回は負けを認めてあげるよ」

 クルマミチがやってきた。

 これで試験を受ける五人が出揃った。

「…………少しだけ待て、と。マザーが」

 クールに伝言を伝えた。

 今の彼に結果を聞ける気がしなかった。

 少し時間が経った後、マザーが道具を持ってやってきた。


「これから第二試験を行います。この試験では五人で銃撃戦を行って貰います。銃撃戦ではこのカラーボールを用います。互いに敵同士となり沢山相手にカラーボールを当てた方が得点が加算されます。逆に当てられると得点が減点されます」


 色のついたボールが専用の銃の中に閉じ込められていく。

 マザーが引き金を引いた。

 放たれたカラーボールは勢いよく壁にぶつかり、壁に色鮮やかな色をつける。


「このように銃に入れて放つなど投げる以外の方法があります。みなさんひとまず手のひらを裏にして手を前に出してください」


 マザーは一人ずつの手の(こう)に向かってカラーボールを当てていく。当てられたサクリは「痛っ」と声を漏らす。

 私の手にもカラーボールが当てられる。

 全身に電撃が通ったように体に痛みが走る。

 白いインクは擦っても落ちない。

「今から濡れた雑巾を渡しますので、色のついた部分をこれで拭いて下さいね」

 マザーは雑巾を渡していく。そのまま残った雑巾で色のついた壁を拭いた。そうすると壁について色は取れていった。

 私についた色も雑巾によって取れた。


「さて、カラーボールは痛みを伴いますのでご注意下さい。もちろん、死には至りませんが受けすぎると半日は動けなくなる場合もあるのでお気をつけて」


 マザーから幾つかのカラーボールが入った袋を渡された。さらに袋の中には地図が入っていた。

 エリアは講堂を除いた施設。所々立ち入り禁止の場所があるが、そこは立ち入り禁止テープがあるのでひと目でわかるようだ。至る所に設置された監視カメラがあるので立ち入り禁止区域に入るなど不正はできない。


「さて、これから第二試験の大切なルールを説明します」


 突如真っ黒な人間型の人形が人間のように歩いてきた。

 とても奇妙な存在だった。

 全部で五体。試験を受ける私達と同じ数だった。

【謎の人形。第二試験は何をするのだりうか?】

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