11.
夜が更けていく。
ベッドの上で浅い夢を見ていた。
ガサガサ。
ベッドから出る音が聞こえた。それが目を覚ますトリガーとなってしまった。
眠れない──
何かするにも同じ部屋の他のみんなに迷惑がかかるだろうし、結局寝る以外にすることはない。
残尿感はそんなにないが、体も動かしたいしトイレに行くことにした。
私もまたガサガサと音を立てて部屋を出た。
手洗い場への道のり。
そこへといくまでの道のりの中、謎の声が聞こえていく。
なんだろうか。
気になって声のする方へと向かっていく。
「星聖魔図。闇に出でし悪魔を退りぞむ。悪極伐斬。闇にくる悪魔を切り消す」
聞きなれない言葉の羅列。
そこにはヘンテコな衣装のクルマミチとそれに従える三人が謎の儀式を行っている。彼らは星型に作られたテープを囲むように立っていた。
「何……してるの?」思わず口から出た。
「…………ナルミか。これは星の儀式。悪魔を退ける儀式」
へー。という感想しか出ない。
あまりにも突拍子的なことであははと苦笑いしてしまいそうになる。
「…………ともに儀式を行わないか? 今日、四人に声をかけたのだがチャヤが辞退した。それで一人だけ人数が……足りない」
唱えが一旦中止し、復唱できなくなった他の三人が私の方を見た。
「えっ? フキもこんなことやってるの?」
「上級悪魔は怖いからな。せめてもの儀式に縋りたいと思って話に乗ったんだ。俺は僅かな可能性を高めたい」
クルマミチ、フキ、ワカバ、メイデン。
彼らは何かカルト的な雰囲気を出している。
「あまりよく分からなかったからもう一度言うけど。何してるの?」
「普段は開くことのない不開の門があるのを知っているか。その門が開くと悪魔が侵入してしまう可能性がある。一年に何度かその門が開くのだ。卒業の時ぐらいしか開かないと思っているだろうが、今日のような日は違う。マザーが門を開けることがある」
「何のために……?」
「それは……我の知る由じゃない」
クルマミチは続ける。
「門が開くということは悪魔が侵入してしまう可能性があるということ。そこで我々は秘密裏に門を開く時を事前に入手し、その日の夜中に悪魔退散の儀式を行い、密かにサクリの施設を守っているのだ」
なるほど、それでこんなカルト的なことをやっていたのか。
それよりも……
「シャドウ、めっちゃ喋るじゃん」
「我は……夜行性だからな」
彼は夜型人間のようだ。そのため朝や昼間は無口になりやすいのだろう。今まであったミステリアスなイメージは軽く崩れ始めていった。
少し笑ってしまいそうな穏やかさもありつつ不穏さもありつつ。
マザーは何故門を開けているのだろうか。その理由も分からないから余計に疑惑の念が高まるばかり。
この中に人間に化けた極悪魔七がいる──
それはもしかしてマザーではないのだろうか。仲間を呼ぶためか連絡をするために定期的に門を開けている。いや、もしかしたら悪魔の協力者という線もある。
謎に包まれているからこそ、想像は膨らみ、怪しさはさらに倍増する。
私の顔に傷をつけた悪魔を突き止めたい。その衝動に駆られていく。
「この儀式は基本五人でやるのがベストとされる。できればナルミにも加入して貰いたいのだが」
この儀式がやる時は誰かが扉を開ける時。
それに加入すればその時を知ることができる。
はやくマザーの謎を解明したい。その想いが先行し、私は加入することを選んだ。いつかこのカルトを出し抜き、外へと出て、マザーの行動を目撃する。
真夜中はまだ始まったばかりだ。
【マザー何の目的で不開の門を開けたのか──】




