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冒険者

「ねぇ……トーヤ、なんか今変な音しなかった?」


「大丈夫だって! いつまでたってもお前はビビりだなあ、折角Cランクに上がったんだからシャキッとしようぜ!」


 アスガル王国冒険者ギルド、ガルドレイク支部の新進気鋭の若手コンビ、トーヤとレティは森の中をおっかなびっくり進んでいた。薬草採取から始まり三年間、先日灰色熊(グリズリー)を討伐した功績が認められ昇級、その勢いのままにと少し背伸びした依頼を受けてしまった。

 胸膨らませる期待、そしてほんの少しの恐怖と後悔、ランクが上がった後の冒険はいつもよりほんの少し楽しくて怖い、暴走しがちなトーヤを諌めるのは大変だけど私がしっかりしなくちゃとレティは胸元で杖を握り締める。


「でもダンジョン探索とか私達にはまだ早いんじゃない? 新人冒険者の死亡原因の一番はダンジョン探索なんだから……」


「新人って……俺らもう三年もこの稼業やってんだぜ? 心配しなくても俺の剣とお前の魔法があれば俺らは最強! 魔物だろうが何だろうがかかって……ヒッ!?」


 突如、樹上から落ちてきた影、思わず出た情けない悲鳴を誤魔化すかのようにトーヤがレティを背に庇う。


「なっ……なんっ……? 人……?」


「わぁ……綺麗な人……」


 銀髪をなびかせ飛び降りて来たのは森に似つかわしくない軽装の美しい女性……、いきなり目の前に現れたのにも度肝を抜かれたが一際目を引いたのはその美貌と特徴的な巻き貝のような形の長い耳。


「エルフ……? 初めて見た……」


「あっ! あんた一体何者……」


「ちょっとごめんなさい、この辺で男の子を見なかったです? 年齢は……あなた達より少し下位の! おっきい獣を連れてるんですけど」


 言葉を遮られた事よりもそのエルフの必死さに面食らう、自分達よりも年下? そりゃあ自分達だってまだ二十も来てない若造だけど、子供がこんな森の中で行方不明? そりゃ必死になっても仕方ない。


「い、いや、見なかったけど……」


「迷子になっちゃったんです?」


「あ~、うん、迷子……なのかな? 薬草採取してたら気付いたら居なくなっちゃってて……」


 どことなく歯切れの悪い反応も気になるがこんな危険な森の中で行方が知れないのは一大事、凶暴な魔物や獣も跋扈する中いつまでも無事でいる保証もない。


「捜すのを手伝おうか? 俺ら土地勘ありますし」


「何かあったら大変ですからね!」


「助かります! ほんと……()()()()()()大変ですから……」


「そういや自己紹介がまだだったな、俺はトーヤ、こっちはレティ、エルフのお姉さんはなんて呼べばいい?」


「あっ、私はラスティっていいます、ほんと当てもなく捜すの大変で困ってたんですよ~、ありがとうございます!」


「それで……その子の行った先に心当たりとかはありますか?」


 レティの質問にラスティが腕を組んで考え込み、腕に押し上げられ強調された胸元に釘付けになっているトーヤのわき腹にレティがすかさず肘を叩き込む。


「あ、もしかしたら……この近くに洞窟とかダンジョンってあります? ギルドで聞いて興味を持ってたみたいだからひょっとすると見つけて潜ってる可能性が……」


「ゲホッ……そ、それなら俺らの目的地と同じかも、道は分かってるから良かったら一緒に行こう!」


「こう見えて私達強いですから大船に乗ったつもりで頼って下さい♪」


 レティが自信満々に胸を叩く、普段ギルド内で子供扱いされてる分頼られるってのは悪い気がしない。首から提げた冒険者タグを見る限りラスティは駆け出しのF級、ここは先達者として格好いい所を見せなければ!

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