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悪戯坊主達の夜会

「さて、あの者どもが誰の手の者か割れたのか?」


 深夜、マスクル邸の執務室にフリード、ラスティ、ダグラスの三名が机を囲む、地図を示すフリードの問に対し、ダグラスがその上に資料の束を投げ眉間に皺を寄せる。


「はぁ……生き残りに吐かせたが九割が身内だ、下は男爵から上は伯爵まで、よっぽどお前ぇに跡継ぎが出来たのが気に入らんらしい。ラスティがもうちょい生け捕りにしてくれたらもっと早く背後関係が摑めたんだろうが……」


「むぅ……だって無理に生け捕りにしようとしてラスティちゃんの可愛い顔に傷でもついたら世界の損失じゃないですか? ならば彼等は必要な犠牲ということで……」


 マスクル邸への深夜の来客、()()()()()()である彼等は以前から少なくない数が来訪していたが、マルスが養子に来たその日から明らかにその数が増加していた。その理由は至極簡単。


「ふぅ……マルスが居ようと居なかろうとこいつらの身内に領地継承の話は行かんと思うがな……」


「余程この辺境領が魅力的に見えるんだろうさ。実際は周囲を敵国に囲まれた陸の要所、お前ぇの睨みが効かなくなったらどうなることやら……」


 事実、休戦協定の結ばれている今、マスクル領は陸の玄関口として各国との貿易の中継点として栄えている。だがそれはフリードという抑止力あってこそ、骨の髄までその恐怖を知っているからこその今の平和である。故に各国は今も虎視眈々、フリードという脅威の排除される日を手ぐすね引いて待っているのだ。


「ただでさえここって各国が奪い合ってそれぞれに領有を主張してた場所ですからねぇ、火中にわざわざ飛び込む奴らの気が知れないです。自己犠牲の博愛主義なら財産寄付して出家したらいーんですよ」


「だが、参ったな……外部ならばまだやりようはあったが今回は身内だ、余り事を荒立てて騒ぎにするのもいかん」


「国王陛下が心を痛めては……か? まぁだが落とし前はつけねばなるめぇよ、首謀者は第二王子派の筆頭、テイケレッグ伯爵だ。あれだな、警告がてらなんかやっとくか?」


 ダグラスの提案にフリードとラスティがニンマリと笑みを浮かべる、二人の脳内ではどのような意趣返しをしてやろうかとフル回転、浮かべる表情はイタズラ小僧のそれである。子供の頃から変わらぬフリードのその表情を見てダグラスが溜息をつきつつ頭を掻く。


「まぁ提案した俺が言うのも何だが程々にな? やり過ぎたら事態は悪化しちまうぞ?」


「大丈夫大丈夫♪ぱ~っと行ってパパッと始末して帰ってきまっす!」


「始末してんじゃねぇよ! 飽くまで警告、これ以上はこちらもただじゃおかねぇぞ? って思い知らせてやんだよ、睡眠時間奪われた恨みはあるが……そこは警告を聞かなかったときまで取っておけ」


 ダグラスの忠告にもラスティはどこ吹く風、フリードはと言えば最近暴れられなくてフラストレーションがたまっているのだろう、何かいい策はないかと思案の真っ最中。果たして大丈夫なのかと不安に思うダグラスだが、この緊張感の無さもこのマスクル領のらしさと言える、まぁこれまでもどうにかやってきた、何かイレギュラーな事態でも起きない限り大丈夫だろう。

 ダグラスは不安渦巻く胸の内に酒を流し込み、知らぬ存ぜぬを決め込む事を改めて決意するのであった。

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