八、【特別編】〈古来種〉が殺し合う終末の荒地
八、【特別編】〈古来種〉が殺し合う終末の荒地
〈大都〉の周り、〈楚〉の〈ファーロン河〉の河口には、同じく〈大都〉という名前を持って、〈大都〉島と呼ばれる細長い島がある。この島は、華南電網公司の黒歴史とも繋がっている。
長い間、この島は他の島々と同じく、ただ一つの無名の島にすぎなかった。
〈エルダー・テイル〉ゲームの運営歴史と共に、ギルド同士が同盟を結び、お互いに対抗するように、華南電網公司が〈ギルド戦争〉というシステムを開発し、一種のゲームのコンテンツとしてプレイヤーに提供し始めた。しかし、競争の力と競争の意欲を持つ大手ギルドの数が少ない。しかも、ギルド同盟関係と言っても、毎度の〈ギルド戦争〉が終了後、〈封禅の儀〉の利益の分配問題をめぐって、同盟の各ギルドの間にも争いが起こって、ゲーム内からインターネットの各ゲーム掲示板でも炎上し、プレイヤー同士の大規模な論争、口論になる。プレイヤー同士がオフラインでの殴り合い事件になるという話もある。そのため、ソロや中小ギルドのプレイヤーたちは、〈ギルド戦争〉への参加意欲が低下しつつある。
ゲーム運営会社華南電網公司の社内の分析結果、プレイヤーたちが嫌がるのは、集団戦争システムそのものではなくて、リアルのプレイヤーとの競争関係とそれによるインターネット上の口論である。そのため、会社が「NPC集団と結ぶ同盟による集団戦争」というゲームシステムの構想を検討し始めた。その着眼点は、ゲームコンテンツとして無限に提供できても、プレイヤー同士の直接的な競争にならないということだ。
その時(2010年前後)、インターネットの中国語コミュニティでは、〈大都〉のモデル、つまり地球世界の上海に関する一つの面白いトピックが話題になっていた。昔、核戦争後の世界での拳術名門の覇権戦争とテーマとする上海地方テレビ局でも放送された日本アニメ『北斗の拳』、その物語の舞台「修羅の国」実は上海の崇明島を舞台とするという。ただし、これはあくまでファンの考察で、この面白い結論は正しいかどうかは誰でも分からなかった。この時、華南電網公司はこの話題からヒントを得て、アタルヴァ社とも話し合って、〈エルダー・テイル〉の基本的な西欧風のファンタジーと違い、中国(中原)サーバーの中華風とも違う近未来終末世界風の集団戦争が繰り返し行うというゲームコンテンツ〈修羅島〉を開発に着手した。
〈修羅島〉は〈ハーフガイア・プロジェクト〉における崇明島のに相当する地域に設定された。こちらでは、〈神代〉の遺跡から出た六つの〈古代種〉集団のお互いの戦争が設定されていた。こちらの〈古代種〉は、物事の善悪で行動を決めるのではなく、自分が所属する集団の利益を最高の前提として考えて行動を決める。プレイヤーは、イベント期間中、一つ集団に加入し、〈古代種〉ギャング同士の殺し合い戦争に参入する。〈古代種〉集団はそれぞれの特色があって、どちらも自分の流派の武術や体術の特色を示す。また、もう一つ特徴として、これらの〈古代種〉が強力であるにもかかわらず、ゲームのコンテンツとして開発されたキャラクターである彼たちは、絶対〈修羅島〉を離れない。つまり、〈修羅島〉は〈エルダー・テイル〉のほかの地域と相対的独立したコンテンツとして開発された。実装した直後に、他の地域から〈修羅島〉にきて、この特別なゲームシステムを楽しむ中国(中原)サーバー以外のプレイヤーもいうという。
しかし,やがて、〈修羅島〉が話題になるとともに、教育分野の専門家や政府(自治体)の役員にも注目された。その暴力的なコンテンツと争い合う関係は子供の成長に悪影響を与えるということを教育専門家が指摘した。そして、政府の指示によって、華南電網公司は直ちに〈修羅島〉というシステムとその開発を中止させた。〈修羅島〉での全ての〈古代種〉は、直ちにじっと立っていて、同じセリフを繰り返して喋るNPCに変化させられた。そのセリフも「私たちは友達同士ですよ。」や「みんな頑張って仲良くしようね。」などになっていて、その優しい言葉は、むちむちな巨躯と滑稽なギャップになるにもなる。そのほか、地球世界の崇明島の地方自治体も要請を行った。行政面では、崇明島は上海に属するため、仮想空間でも、この島は上海(つまりゲーム内の〈大都〉)に属すべきという。崇明島の地方自治体の要請に応じて、華南電網公司はすぐに〈修羅島〉の名前を〈大都〉に変更させた。勿論、これはただのエリア名前の変更で、〈大都〉ゾーンに併入したわけではない。つまり、その後、〈楚〉地方の中には二つ〈大都〉という名前を持つゾーンがある。その一つはプレイヤー都市の〈大都〉ゾーンで、もう一つは島型のフィールドゾーンの〈大都〉である。これを知らないまま、海外から寄ってくる人あるいは白い馬〈白澤〉は、恐らくこの二つ同名のゾーンで勘違って混乱してしまうだろう(笑)。華南電網公司のこの黒歴史は、政府(自治体)の行政の干渉によっていい加減に結末をつけて、わずかの一年も経っていなかった。
しかし、問題となるのは、この〈真穿事件〉後の異世界〈セルデシア〉では、混乱の終息にはまだ程遠い、〈大都〉島へ往復する〈冒険者〉による実情の報告もまだない。今や、〈大都〉島には六つの〈古代種〉集団のメンバーが存在するかどうか、そして彼たちは平和に暮らしているか、あるいは何かの行動を行って、集団戦争(殺し合い)を行っているかについて、そちらの状況を気にかける〈冒険者〉は恐らく少ないだろう。とはいえ、この歴史を知っている人は漠然とした不安を覚える。
(設定意図の解説:私はこのような〈大都〉島、つまり〈修羅島〉ということを書く原因は、原作小説9巻の一つの文を引き継いで、否定する為である。それはログホラ小説9巻3章で、〈白澤〉になったKRが〈弧状列島ヤマト〉から〈アオルソイ〉までの見聞について述べたセリフ「こっちにわたってからいろいろ見たけど、中には陰惨な暴力が支配している都市もあるよ。大都なんてススキノがアホくさく見えるほどだ。レオナルドから聞いた、ニューヨークの状況が子どもだましに見えるような事件だって起きている。」という。
〈大都〉を背景として『ログ・ホライズン』の二次創作を書いた私は、この文を喜ばない。しかし、このは原作の設定である。私はこれを否定できないのである。そのため、私はそれを「引き継いで、そして、否定する」。
まず、私は〈楽浪狼騎兵〉や朱桓、春翠たちが〈大都〉早い段階での社会情勢の説明を否定するつもりがない。原作によって、このギルドは元々〈大都〉に本拠地を置いたので、彼らの〈大都〉に関する説明は信憑性がある。ただし、私のこの二次創作では、〈大都〉の混乱状況は初期段階に限って、つまり〈楽浪狼騎兵〉全員が〈大都〉から脱出後しばらくの間までである。
後ほどKRが述べた〈大都〉の悲惨な状況というと、私の考えとして、それを同名の廃島〈大都〉島での状況と設定する。つまり、〈真穿事件〉後の〈大都〉島は、〈古来種〉ギャング同士による集団戦争に巻き込まれた地獄のような終末世界で、この混乱は〈大都〉島の範囲内にとどまる。日本人〈冒険者〉のKRが見掛けたのは、この〈大都〉島の状況で、彼が勘違いして、それをプレイヤー都市〈大都〉のことを誤認してしまった。その後、この間違った情報をカナミたちにも伝わったのである。
以上、これは私の代替案だ。本当のプレイヤー都市〈大都〉の混乱がいつ収束し、どの形で収束し、そして、収束後、どのような社会形態が出来るかについて、私はこの文を読んでいる皆さんの二次創作を読みたい。)




