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6話 くっ………殺せ

 倒されたという剣聖の情報を手に入れた俺は次の日、朝早く起きてニーナ達も連れて剣聖と呼ばれたカイリという少女の倒れている場所までやって来ていた。

 場所は白骨の森という場所だった。


「ここ白骨の森だけど大丈夫?」

「白骨の森、生きて帰れる者はいないと聞いているっす」

「当たり前だよネ。ここは私達四天王ですらギリギリで生還できる場所なんだカラ」


 既にエリザベートが四天王であった事は話してあるので特に隠すことでもない。


「ひぃぃぃぃっすぅぅぅぅ!!!ルイスさん帰るっすよ!!!!!!!」

「そ、そうだよ。ルイス危険すぎるよ」


 フィーネとニーナが俺にそう抗議してくる。

 が帰る訳にも行かない。


「俺が付いてるから安心しな嬢ちゃんたち」


 それにどうやらボタンが守ってくれるらしい。

 それなら嬢ちゃんじゃなくても安心するというものだ。


「ほらキュムキュム言ってボタンも帰ろうって言ってる」


 ボタンの声が俺以外に聞こえないのを思い出した。

 実際には真逆の事を言っているのだがニーナは自分にとって都合のいい解釈をしたらしい。


 言った方がいいのだろうか?ボタンが守ると言っていることを。

 ふーん悩むな。


「それにしても」

「どうしたの?」


 俺のつぶやきにニーナが反応を示す。


━━━━━━━━

【名前】ボタン

【ジョブ】アンデッド

【レベル】138

【体力】2500

【攻撃力】8300

【防御力】3000

【すばやさ】5400

【魔力】0

━━━━━━━━


 ボタンは1匹で世界を滅ぼせそうな気がする。

 魔力こそないが物理に極振りしたこのステータス。


 走るだけで山は崩れ川は氾濫し天は泣くことになるだろう。

 そして思い出すボタンの言葉を


『俺がついてるからよ』


 頼もしすぎるな。

 こんな奴がそばに居てくれるなんて頼もしすぎるということに気付いたのだ。


 俺のボタンは最強で世界を滅ぼせる。

 それに比べて


「………」

「なんナノヨジーッと見つめチャって」


 エリザベートを黙って見つめることにした。


「はぁ………」


 思わず溜息が出てきた。


「溜息吐かれタ?!!!」

「いや、ごめんな。俺がステータス振ってないからだもんな」

「あ、謝られタシ?!!!」


 だから気にする必要は無い。

 うん、本当に俺がこいつを信用していなくてステータスを振っていないだけだからボタンに負けていることについて責めるつもりはないのだ。


「な、何だシ?!その可哀想なものを見る目は?!」

「人間からは嫌われて、俺の駒になって居場所がないなんて自業自得とは言え可哀想だよな、なんてこと別にそんなこと思ってないよ」

「そんなにさらさら言葉出てくるってことは思ってるヨネ?!」

「思ってないよ」

「ムキーーーー!!!!!」


 さてと、こんな下らない会話している場合じゃなかったな。


「行こうか。白骨の森の奥へ」



 俺たちは白骨の森の奥深くまで辿り着いていた。


「暗いっすね」

「当然だカラ。白骨の森は私達魔王軍の庭なんだモン☆」


 その庭で死にかけるお前は何なんだ?エリザベート。

 生きて生還することがギリギリの庭って何なんだ?


 つい先ほど自分も生きて帰るのが精いっぱいって言ってたよな。


「ねぇ、ルイスさんこの四天王ムカつくんだけど解雇して欲しいっす」

「ちょ、やめ!やめて!それだけはやめて欲しいナー?」


 俺を上目遣いで見てくるエリザベート。


「安心しろ。お前は俺の使い魔。お前以上に使い勝手のいい使い魔なんてそうそう出ないだろうから解雇なんてしないぞ」

「それは喜んでいいのカナ?」

「次から次に戦えと言われて喜べるなら喜んでいい」

「ダメじゃん!」


 流石に魔王軍の四天王だった奴と言えどそりゃそうか。

 そんなことを思いながら薄気味の悪い森を更に進んでいく。


 あちこちには底なし沼があってそこに足を取られたのか白骨化した死体なんかも見えた。

 泥沼以外にも至る所にそれがあるから、白骨の森というのはつまりそういう事なんだろうな。


「どうダ白骨の森の恐ろしさ思い知っタカ?!」

「何故お前が胸を貼る」

「私達の庭だし、ここにいるモンスター達は私のペットだからだヨ」


 そう言っているエリザベート。


「キシャァァァァァ!!!!!!」


 その彼女に飛びついてくるウルフが1匹。


「ひ、ひぃぃぃぃ!!!!」


 逃げるエリザベートに


「ブヒッ!」


 そのウルフに体当たりするボタン。


「キャウン!!!!」


 そうして吹き飛ぶウルフ。


「ペットに襲われた飼い主を助ける俺のペット。序列が決まったなエリザベート」

「な、何の話カナ?」


 何も答えずに笑っておくことにした。


「な、何なのカナ?!その笑顔?!」


 そんなことを言っているが構わずに歩き続けることにした。

 すると


「はぁ………はぁ………」


 荒い息が聞こえた。

 耳を澄ますとよく聞こえてくる荒い声。


「何か聞こえるな」


 そう呟いてから俺はその声の聞こえる方に向かっていく。


「はぁ………づぅ………」


 その声の主は大きめの人が1人くらい隠れることの出来そうな岩の後ろにいるようだ。

 そこから声が聞こえてくるのが分かった。


「誰かいるのか?」


 岩に手を当てながら後ろを覗いてみた。すると


「………」


 綺麗な青い髪を伸ばした綺麗な少女がそこにいた。

 凛々しい青い瞳に青い髪。


 それに見た目は騎士という感じの風貌で。

 優しそうでありながら厳しそうな少女………いや女性だ。


「何者だ?」

「あ」

「悪魔の手下か?!」

 

 何も言っていないのにそう言われた。

 話を聞いて欲しい。


「だか」

「抱かせろ、だと?!死んでも嫌だ!死んだ後もやめてくれ!私を穢すな!」


 こいつ話を聞く気0なのか?


「くっ………悪魔の手下まで私の元に来てしまったのか………もうダメだな」


 そう言って力なく項垂れる少女。

 そのポーズはまるで騎士が無念のあまり膝を着いてしまうようで


「くっ………殺せ………。貴様に穢されるくらいなら死んだ方がマシだ」


 更に台詞まで女騎士だった。


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