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5話 死者の国の王になる

 その日の夜俺たちは宿を借りていた。


「はぁまじはぁ」


 エリザベートがそんなことを言っている。


「ねぇルイスもう少しステータス上げてくんない?どうせ私ルイスのこと裏切れないんだし、いいじゃナイ?」

「お前は信用ならんからな」

「ぶーぶーぶー」


 そんな反応をしてもダメなものはダメだ。


「………」


 ニーナもエリザベートを厳しい目で見る。


「許されるなんて思ってないけど………そんな目で見ないで欲しいカモ。てか何で私なんて使い魔にしたわけ?こうなるの目に見えてたヨネ?」

「お前が敵だったから。味方の死体を動かすのは気が引けるが敵なら別にそうじゃないしな」

「酷い理由だネ?!」

「でもそんなものだろ?俺はニーナの死体が動く姿なんて見たくないしな」


 初めはエリザベートみたいな敵の死体すら動かすつもりはなかったけど、吹っ切れていた。

 殺らなきゃ殺られるという状況こそが俺を突き動かしていた。


 それにボタンが殺されてしまったのが俺のリミッターを解除した。

 いつのまにか俺はボタンをネクロマンスしてエリザベートにも同じようにしていた。


「俺はネクロマンサーだ。使い魔がいなければどうしようもない。エリザベートこれからも宜しく頼むよ」


 そう言って手を差し出す。


「ウン」


 頷いて俺の手を取ってくれる。


「ところでルイスこれからどうするの?」

「そうだな………」


 特に何も考えていない。


「ニーナは賢者だろ?なら、俺に着いてこずとも1人で何とかなるんじゃないのか?」


 わざわざ俺についてくる必要はない。

 何たって賢者は俺みたいなネクロマンサーとは違って引く手あまただ。


 というより賢者は魔法を扱うジョブの中でもかなりの上位ジョブであり王都が全力で育てようとしている程のジョブだ。


 何処へ行っても歓迎されるだろう。

 それこそ試験を不合格にされた俺に何時までも着いてくる必要は無い。


「それに修行して魔王を倒す。それがニーナの夢なんだろう?」


 なら俺にそれを邪魔する資格はないし応援するだけだ。

 というより目指す場所は同じ。行き方が違うだけだ。


「う、うん。でも状況が状況だし」

「それは俺も理解してるけどお前は王のところに行った方がいいと思うぞ」


 強制ではないので修行するかどうかは個人に決める権利がある。

 しかし行かないということは彼女は夢を自ら捨てることになる。


「うーん」


 悩み出す彼女。


「精一杯悩んでくれ。大事な事だ」


 そう言って俺はエリザベートを連れて夜風に当たりに行くことにした。

 色々あり過ぎて1人になって整理したいところだった。



「おいあれ、ネクロマンサーなんだろ?」

「そうらしいな。ったく同じ宿とは最悪だぜ」


 どこから俺の話が漏れたのかは分からないが同じ宿に泊まっている連中に陰でそう言われていた。


「死体動かして戦わせて恥ずかしくねぇのかな」

「しかも自分は後ろで引きこもってるだけ。楽なご身分だよな」


 そう言いながら俺の事を汚物を見るような目で見て去っていく2人組の男。

 ネクロマンサーになったのは仕方ないとはいえ、スキルを使ったのは俺の意思だ。


 今更何を言われても気にしないと思っていたが


「………はぁ」


 やはりそういう言葉は傷付く。

 兎に角一度頭を冷やそう。

 状況も整理したい。


「あいつらムカツクンデスケドー」


 急にエリザベートがそう口にした。


「人のことジョブで見下して最悪だよネ」


 思わず目を見開いて彼女を見た。


「どうしたノ?」

「いや、まさか俺の味方をするような事を言うとは思わなかったから」


 こいつの性格からして一緒になって笑ってきても不思議じゃないと思っていたが。


「別に味方した訳じゃないシ。てかさ気になってたんだけどルイスって格闘術とか習ってたの?あのエルフチャン助けた時の動き練習してなきゃ無理デショ?」

「神父に教わった。ネクロマンサーとして戦わないならせめて自分の身くらいは自分で守れってな」

「ヘーソウナンダ」


 特に興味もなさそうな彼女。

 別に何か言うつもりもないが、ローエンのことを思い出して憎しみが湧き上がってくる。


「キュムキュム」


 相変わらずキュムキュムしているボタンが横にいた。


━━━━━━━━

【名前】ボタン

【ジョブ】アンデッド

【レベル】138

【体力】2500

【攻撃力】8300

【防御力】3000

【すばやさ】5400

【魔力】0


━━━━━━━━


 適当にボタンに自分の憎しみを振っておくことにした。


 自分から憎しみを解き放つような感じだから、気が一時的に晴れるが、それでも憎しみなんていくらでも溜まるから減る様子はない。


「ぴえーん。同じ使い魔なのに扱い違いすぎナイ?!私にも力返してヨ?!」

「当たり前だろ」


 何で俺を殺そうとしてきたお前と俺と一緒に家族のように過ごしてきたボタンを同列に扱う必要があるのだ。

 そんなことを答えながら歩いていたら


「た、大変です!!!!!」


 金髪の女が慌てた様子で叫んでいた。


「剣聖が!剣聖のカイリがやられました!」


 そう言って街の中心に叫びながら走っていった少女。


「あ、あの剣聖がやられたのか?!」

「あの人がやられるなんてそれだけやばい任務だったんだ?!」


 周りの人間がそんなことを言いだす。

 その言葉を聞いて考える。


「やられた、か。いいことを聞いたな」

「いいこと?マサカ?」


 隣でエリザベートが首を捻った。

 俺はもう既に振り切っている。


 ネクロマンサーとしての力を振るうのにもう戸惑いはなくなっていた。

 これは俺が選んだ道だ。

 

「使い魔にしよう」


 俺は思っていたことがある。

 俺が魔王を憎む気持ちは誰にも止められない。


 だから俺は人間と協力して魔王を討伐しようとしていたが、考え方を変える。


「俺はアンデッド達を束ねて死者の国の王になろう」


 口元を歪める。

 誰にも俺の憎しみは止められない。


 人間が俺を受け入れないというのなら俺は死者の国の王となる。

 邪魔をするならば人間たちも潰す。

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