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2話 四天王エリザベート

 薬草を採取した俺達は村まで戻ってきたのだが、予想もしていなかった光景が広がっていた。


 村が燃えていた。

 俺が何年もの時を過ごしてきた村が目の前で燃えていた。


「な、何で?」


 意味が理解できなかった。

 何が起きた?

 何が起きてるんだ?


 今俺の目の前で行われていることは現実なのか?


「た、助けてくれぇぇぇ!!!!」


 名前も知らない村人がモンスターのウルフに食い殺された。


「そ、そんな………」


 後ずさる。

 何が起きてる?


 何なんだこれは。


「ギィイィ」


 何匹ものモンスターが今この村にいた。

 そして村を壊し、人を殺し回っていた。


 まさに地獄のような光景。

 これは………


「ひっ!」


 あの時の記憶がフラッシュバックする。

 俺の心の奥深くまで刻み込まれているあの時の記憶が俺を襲う。


「………やめてくれ」


 もうやめてくれ。

 何の意味があるんだ?こんな事に。


 これ以上俺の過ごしてきた村に手を出すな。

 手を出さないでくれ………。


「あははははは!!!!死ね死ね死ね!死んじゃえ!」


 だが俺の希望は叶わずに声が聞こえた。

 声の主は。


「ゴブリン隊出撃だよー☆」


 女の子だった。

 俺と同じくらいの女の子がそんなことを言っていた。


 そして


「ん?」


 その子は俺に気付いたようだった。

 そしてその顔に残虐な笑みを浮かべてから近付いてきた。


 何も出来ない俺に近付いてきた。

 恐怖に足がすくむ。


「こんにちは!」


 こんな状況で挨拶をしてきた。


「ひ………」

「貴方がルイス?」


 な、何で俺の名を。


「私は四天王の1人エリザベート。気軽にエリちゃんって呼んでいいよ☆」


 は?

 四天王?


「こう言えば分かるかなー?魔王軍四天王の1人って、君に見せたいものがあるんだよね。付いてきて」


 そう言うと俺の手を引いて歩き始めるエリザベート。

 もう抗う勇気はなかった。


 俺の手を引いてエリザベートがやってきたのは俺たちが孤児院として過ごした場所の───────教会だった。


「入るよー」


 そう言って俺の手を引いたままエリザベートは教会の中に入っていった。

 そこには


「見てみて〜綺麗でしょ〜」


 俺たちが神として崇めていた像が逆さに吊るされて。

 そして


「ろ、ローエン………」


 神父がその像に磔にされていた。

 逆さまに。


「どう?綺麗でしょー」

「キュムキュム!」


 その時ボタンが突進していった。

 いつもなら頼りになる相棒の一撃。


 しかし


「あはっ☆邪魔だから」

「キュム………」


 ボタンはその体を剣で切り裂かれて俺の方に蹴り飛ばされた。

 まるで虫が自分の前に走ってきて邪魔だったから叩き潰したかのようなそんな様子だった。


「ボタン………」


 俺は膝を付いた状態で大怪我を負ったボタンを抱き抱えた。


「キュム………」


 俺の腕の中で消え行く命の灯火。

 体温が徐々に低下して命が削られていくのを感じる。


「あはっ☆ボアと仲良い人間なんて珍しいネ。でもざんねーん私をボア如きが倒せるとでも思ったのかしら☆」


 この時俺の中のリミッターは壊れた。


「殺す、殺してやる」

「何何?ヤル気出ちゃったカナ?」


 首を捻るエリザベートに俺はナイフを抜いた。

 使い慣れているわけじゃない。


 今向かえば死ぬだろう。

 でもどうせ死ぬのなら


「だから効かないって」


 斬りかかった俺の腹を蹴り飛ばすエリザベート。


「ぐっ!」


 強すぎる。


 視界が回る。

 ここまでか………。

 結局一矢すら報えなかった。


 その時俺の視界に見慣れないものが浮かび上がった。

 これは………スキルウィンドウというやつか?


【ボタンの死亡が確認されました。ボタンと契約しますか?】


 この文字の下には

 →YES

 ・NO


 この2つの選択肢があった。


 どうせ………死ぬのなら。

 悪趣味がどうとか言ってる場合じゃない。


 人間極限状態になると形振り構っていられないようだ。


「………」


 黙ってYESと答えた。

 すると


【ボタンの状態をアンデッドに変更しました。これでボタンの所有権は貴方にあり、貴方の駒です。最後の作業です。ボタンにステータスポイントを振りますか?】


 YESを選ぶ。


【現在のステータスは以下です】



━━━━━━━━

【名前】ボタン

【ジョブ】アンデッド

【レベル】5

【体力】68

【攻撃力】23

【防御力】5

【すばやさ】23

【魔力】0


━━━━━━━━


【アンデッドはマスターの悲しみや苦しみなどの負の感情などで成長します。その感情がステータスポイントとして反映されそれを使い使い魔を強化することができます。現在のステータスポイントは9999です。なお憎しみという項目がこのステータスです】


 俺は適当にステータスポイントを振った。


━━━━━━━━

【名前】ボタン

【ジョブ】アンデッド

【レベル】118

【体力】2000

【攻撃力】3200

【防御力】2800

【すばやさ】5400

【魔力】0


━━━━━━━━



 そのウィンドウが現れた直後だった。

 ムクリと立ち上がるボタン。


「は?」


 目をまん丸と見開くエリザベート。


「え?さっき死んだ………あんた………ネクロマンサー?」

「………」


 答えずにボタンに指示を出した。


「キュムキュム!」


 突進するボタン。


「だから効かないっての!」


 彼女の振るった横凪の剣は


「う、そ、」


 ボタンを捉えることはなかった。

 ボタンが彼女の素早さを上回った結果だった。


「な、何で?!」

「キュム!」


 エリザベートの腹に頭突きを食らわせるボタン。


「きゃっ!な、何で!」


 明らかに狼狽えて口から血反吐を吐き出す。


「さっきまであんなにとろかったじゃない?!」

「キュム!」


 更に突進を続けてエリザベートを追い込んでいくボタン。

 やがて


「こ、降参!降参だから!お願い!ルイス!止めて!」


 黙ってエリザベートに近付く。


「ゆ、許して本当に」

「………」


 エリザベートが涙を流し始めた。


「ご、ごめんなさい!死ぬのは嫌ナノ!怖い!やだやめテ!」

「都合のいいことばかり口にするなお前 」

「ご、ごめんなさい」

「お前は俺から何個奪った?」


 エリザベートに問いかける。


「………」

「やれ」

「そ、そんな!まだ私は!」


 言いかけたエリザベートを殺して黙らせるボタン。

 もう………神父たちは帰ってこない。


 そんなことを思いながら俺は磔にされたローエンを見上げた。





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