11話 根はいい奴かもしれない
新しい拠点を目指す前に俺たちだが先にあの村を訪れることにした。
幸いまだ日にちは浅いため、それに掃除している暇がないため死体は殆どが残されているしあの時の状態のまま放置されているそうだ。
「大丈夫なの?」
ニーナが聞いてくる。
「そっちこそ」
「私は大丈夫だよ!」
力強い返事をくれた。
そうか。
そんなことを思いながら滅び去った村を見ていく。
ここに来た理由は一つ。
孤児達を使い魔と言うよりはアンデッドにする目的でやってきていた。
俺のネクロマンスは使い魔にするというよりは第2の生を授けるという表現の方が近いらしいからとりあえずネクロマンスするというのは悪くないと思う。
もし不要なのなら解除も出来るみたいだし。
何より意見を聞いてみないと分からない。
ということで俺は村で倒れていた孤児たちの死体に対してどんどんスキルを使っていく。
そうしていたら俺の周りにはいつの間にか100を超えるアンデッドの群れがいた。
「ルイス、蘇らせてくれてありがとう」
「私もルイスに感謝してる!」
そしてその誰もがこの蘇生を望んでくれていた。
「いいのか?本当に」
「うん。僕達もあのまま無意味には死にたくなかった!」
俺の質問にもそう答えてくれる村人。
「そうだぜ!お前ら!ルイスの力でせっかく蘇ったんだ!俺たちの手で魔王の奴らぶっ飛ばそうぜ!」
「そうだ!俺たちの敵は俺たちで討つ!」
皆でそう盛り上がっていた。
それを見て俺はとりあえずあの教会に向かうことにした。
最後に残していたのだ。
「………」
無言で中に入ってみたがそこには
「いないのか」
「みたいだね」
横にニーナが並んできた。
「あの神父さん1時代を築き上げた人みたいだから特別に回収されたのかもね」
「そうだろうな」
残念といえば残念だがそれでもいいか。
あの人が安らかであるのなら俺はそれで構わない。
欲を言えばまた俺と一緒に戦って欲しかったがどうやら叶わぬ願いになりそうだ。
「俺が付いてるじゃねぇか坊主」
ニーナのいない方に立ってくれるボタン。
「キュムキュム言ってるけど何言ってるんだろうね。それにしてもボタン可愛いよね」
中身親父だぞ?
「ガハハハハ。俺を可愛いとは変わった嬢ちゃんだな」
「あはははキュムキュム言ってるー。可愛いー」
そう言いながらボタンに餌付けを始めたニーナ。
「何上げてるんだ?」
「んーとね。この前倒したゴブリンの干し肉」
ボタンの好きなやつだ。
「ボタンこれ好きだもんねーほれほれー」
「俺で遊ぶな!早くよこせ!」
「わーやっぱり遊んでもらえると喜ぶんだー」
相変わらず全く逆の解釈をしている。
まぁ知らない方がいいかボタンの中身なんて。動物は可愛げがあってなんぼだ。
中身こんな親父みたいなのを知りたくはないだろう。
「さて」
「どうしたの?ルイス」
踵を返した俺を見てそう聞いてくるニーナ。
「次に向かおうかって、さ」
「次?」
「俺の国を作る。死者の生きる国だ」
そう答えて俺は歩き出した。
目指すは次の場所だ。
俺の国を何処にするか、というのは予め大雑把にだが決めている。
※
俺達は廃墟となった街へやってきた。
瓦礫が積まれて、半壊した町だ。
「ここを俺たちの国にする」
そう口にして俺はここに来るまでに集まってくれたアンデッド達に指示を出す。
「瓦礫を退かしてとにかく家を作ろう」
「家、ですか?」
1人の少女が聞いてきた。
「あぁ。家だ。何をするにしても家が必要だろう?それを作ろうって訳だ」
「な、なるほど!」
ポンと手を叩いて納得したような顔をする少女。
「理解してくれたか?」
「は、はい!」
俺は細かく指示を出していく。
「先ずは自分たちの住む家、だな」
そう言って道具や素材の指定をしていく。
「モンスターの襲撃とかにも備えて出来るだけ強い素材を作りたいな。耐久性がある方がいいし」
そう言って俺は物作りに携わっていたアンデッドに色々任せることにする。
俺はこの手の知識がない。
どの素材がいいのかとかも分からないため任せた方がいいだろう。
「さぁ、とりかかってくれ」
そう言ってパンと手を叩くとアンデッド達に任せることにする。それから
「お前たちも必要に応じて手伝ってやってくれ」
ここに来るまでに使い魔にしたゴブリン達にも指示を出す。
「ガウ(分かりましたマスター)」
「期待しているぞ」
中にはゴブリンを使い魔にするのかという意見もあったが俺はゴブリンも使い魔にした。
人手は多い方がいいだろうしここは死者の国だ。死者ならなんでもいいという考えがあってのことだ。
「私達は何したらいいっすか?!」
指示を出し終えてからそう聞いてきたフィーネ。
ふむ。別に特に考えてはいないのだが。
「暇ならちゃんとやってるか監視しといてくれないか?」
俺を裏切れないとはいえサボる程度なら出来るはずだからな。
少しくらいは別に構わないが余りにもサボられては終わらない。
「分かったっす!」
それを聞いてフィーネ達は歩いていった。
「さて、吉報は寝て待つというやつか」
大人しく待つことにするか。
そう思っていたら
「何か面白いことないカナー」
エリザベートがやってきた。
「面白いこと探す前に国作りをしてくれ」
「マスターが王様の国?」
「形だけはな」
別に本物の王様になるつもりはない。形だけのものだ。
「指示を出したりはするかもしれないがそれくらいだな。別に王様の言うことは絶対だみたいなことをするつもりはない」
「へー、そうなんだ。魔王様とは別だネ」
あいつと同列にはなりたくないからな。
「俺は皆が幸せな国を作りたいと思ってるよ」
もう誰もあんな事に巻き込まれなくていいそんな世界を俺は作りたいと思ってる。
「フーン。優しいねルイスって、でも私ルイスの使い魔になれて良かったかも」
そう言ってくれるエリザベート。
その言葉を聞いて思った。
こいつは根はいい奴なのかもしれない、と。




