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実々 : 白い世界へいざ行かん

実々視点の古墳時代編最後の話の前編です。


 12月2日(日)就寝時


 現在時刻23時半ちょっと前…。

 正直……凄く眠い。もう瞼が今にも閉じてくっ付いちゃいそうな程には眠い。


 『そんなに眠いなら寝たら良いじゃん!自分の欲求に素直になっちゃいなYO!!』


…とは残念ながら今日に限ってはならない。

 だって寝てしまったら何もない白い世界で墨汁の匂いを嗅ぎながら多神さんにあーちの生死を聞かないとならないから。……非常に不服である。

 一度は了承したものの、そもそも不本意だったし、寝ているのに寝た気がしないあの感じは慣れない。ましてや常連になりつつある『うどん屋』じゃないし……。人見知りならぬ場所見知りしちゃうよー。


 ああぁぁああぁっ……!!イヤだよー!あーち自分で聞きに行けよー!!

 自分の生死が掛かってるんだから尚更自分で行って多神さんの足に纏わり付けば良いじゃんか!!


 ……うっ!!抗えない睡魔が来た……ふわぁぁ……もうダメ……寝ちゃ……う………



***


 うわぁ…寝ちゃったよー…。


 そしてリクエスト通りに何もない白い世界だ…。

 嬉しいような嬉しくないような……まぁ嬉しくないんだけどね。

 それにしても…あーちの言う墨汁の匂いも勿論するけど、それに加えてなんか新しい家具の匂いもするような?

 新しい木の匂いっていうの?多神さん家具でも新調したのかなぁ?古くなってもずっと使い続けそうなイメージだったけど…。まぁ墨汁の匂いが一番強いかな?……ってうちは別に匂いを嗅ぎにきたんじゃない!

 この状況どうしたら良いの?『こんばんは〜、実々が来ましたよー♪』って声張れば良いの?……絶対ヤダ!!


 あーちの奴め…。

 あーちの野郎っ…。

 もう本当に嫌だ。

 本当に最悪。


 以上四つのワードが私の頭の中でぐるぐるループしていたら、恐る恐るといったような声が、どこからか全くと言って良いほど見当が付かないけど頭の中に降ってきた…――


 「みっ、実々…聞こえるか?」


 この声は多神さんだ。

 そしてその多神さんは、開口一番に噛んだ。それをイジりたいのをグッと抑え、取り敢えずお返事しなきゃと私は自分を律した。


 「……はい。たがっ…神様、お忙しい中お時間を作っていただいて申し訳ないです。会い方の指定までしてしまって、何て言ったら良いか……(あーちのせいとしか言えません。あーちの奴め…)」

 

 あっ!ついついあーちとの話しのノリでまた『多神さん』って言おうとしちゃった!神様なのに…。いっけね☆


 「気にするな…」


 気にしなくて良いだなんて『流石神様、器がデカいわ〜』と思っていたら、「こほんっ!余に質問があるんだよな?」と、空気を変えるように一つ咳払いをして多神さんの方から聞いてくれた。この神…デキる!!


 「は……い。えーと…私の質問と言うか、あーちが代わりに聞いて来てって言うので代理質問なんですけど…。あーち、どうにかなっちゃ……ん?違うな。あーちに近いうちに神罰が下っちゃいますか?」


 嫌々という感情を捨てきれずに、やっつけ感満載で質問しちゃったけど、はてさて多神さんからのお返事は……如何に?


 「………は?はぁぁぁぁぁぁっ!?」


 WAO!!なんでか多神さんの言葉が乱れております…。

 まぁ神様の同僚が急に殺人鬼…もとい死神に変身するかもしれなかったら怖いもんね…。というか急に叫んで多神さんは一体何を見たんだろうか。過去に戻ってあーちの問題発言を聞いて絶叫しちゃったのかな?

 正直、神罰が下るとしたら言った瞬間だっただろうし、大丈夫だと思うけどね。

 そもそも、多神さんがあーちの想像通り死神だとしたら、もうあーちはジダンした時に死んで……違うな、睫毛を目蓋に挟んだ時点で死んでるよ。瞬殺だよ。


 それにしても……はぁぁぁ~。

 本当に何で私が……安眠したかったのに。


 あぁ~っ!あーちの事ばっか考えて、自分恋する乙女みたいになってるよ~。ドキドキじゃなくてイライラしかしないから何にも自分にプラスになってないよ~。心的ストレス半端無いって!


 …………あれ…………?

 ……てか、多神さん一向に話してくれないな…。

 きっとあーちに呆れてるんだろうな。分かります分かります。

 多神さんに心の中で同意の意を示していたら、突然強めの咳払いが聞こえてきた。

 どうやらお沙汰が出るようだ。

 多神さんは私の意識がしっかりと自分へと向くのを待ってから、判決を述べた。


 「実々、神は人間の発言に干渉したりしないから麻来は大丈夫だ」

 「あ、そうですよね。あーちがピンピンしている時点で薄々そう思っていました」


 そもそもあーち如きに神様が審議の時間設けるとかないもんね。

 まぁ良かった良かった。そして多神さんは更に大丈夫な理由までご丁寧に教えてくれた。……親切!


 「そうだな……麻来には憲法19条で思想と良心の自由が守られているからと言えば伝わるだろう」

 「憲法19条……。はい、分かりました。ありがとうございます」


 『憲法19条』ってだけ言って、あーちピンと来るかなー?絶対分かんなそう。試してみよう♪

 思わず明日の朝のあーちを想ってほくそ笑んでしまったが、きっと多神さんには気付かれてはいないだろう……。そう思いたい。

 代理質問も終えて、もうこれで今日はお開きになっちゃうのかな?と思ったら多神さんが声をかけてくれた。


 「実々自身の質問もあるようだが…?」

 「えっ!?……はい。お会いする機会があれば聞こうと思っていたんですけど、過去(ここ)で身に付けた料理のスキルって元の時間に持って行けますか?」


 いやぁ〜、昨日の今日で、まさか翌日に質問出来るとは思ってなかったわー。

 それにしても……何で質問あるって分かったんだろ?何処かから私の顔見てるのかな!?

 というか、本当に何でほぼ墨汁の香りだけする真っ白な空間なの!?あーち良く普通に多神さんとここで会話できるな……私は無理だわ。墨汁の香りで安心☆…ってならないし。

 などと思っていたら、暫しの沈黙の後、多神さんから返事が返ってきた。……多神さんはしっかり頭の中で考えてから返事をするタイプなのか。


 「大丈夫だぞ。環境は1年前の過去だが、実々の精神と肉体は本来の時間そのままだからな。何も無駄になる事は無いぞ」

 「なら良かったです!」


 多神さんやるぅ~っ↑↑私の頭の中で大輪の花火が乱れ打ちになるくらい嬉しい!!

 これでかなちゃんを…かなちゃんを見返せる!!


 「あ……あぁ」


 多神さんの返事は何故か少し疲れていたけど、まぁ今は気にしないでおこう。

 それよりも他にまだ何か聞きたいことあったかな?

 ………あ、そうだ!ついでに前回聞きそびれた事も聞いちゃおう!この前、多神さんが噎せて有耶無耶になっちゃったからねー。


 「神様!こっちで新たに出来た友好関係って、元の時間に戻ったら無かった事になっちゃいますか?」


 私の頭の中では最近出会った『天ちゃん』『おもじぃ様』『レジのお美しいお姉様である大豊さん』の姿が浮かんだ。

 はぁ〜、もっとお近づきになりたい…。


 「うーーん……」


 多神さんが思いっきり唸っている…。


 「やっぱり難しいですか?」


 そもそも一年前に出会ってなかった人たちだもんね…難しいか。


 「んえあっ!?そっ、そうだな…何せ前例が無いからな!こればっかりは元の時間に戻ってみない事には分からないな」

 「そうですか…」


 私の心の中は暴風雨が吹き荒れていた。寂しい……。

 多神さんの『んえあっ!?』が気にならない程寂しい…。


 「袖振り合うも多生の縁であるから、また縁があれば繋がると思うぞ。麻来の為にわざわざご苦労だったな」


 多神さんが労いの言葉で締めてくれた。


 「はい……。神様もお忙しい中、お時間をありがとうございました。お疲れ様でした。では、お休みなさい」


 『ご苦労だったな』って何に対して多神さんは言ってくれたんだろ?

 あーちの代役に対しての労い?…だとしたらあーちを一刻も早く黙らせるために不可抗力だったから来ざるを得なかったんですよ、多神さん。あ、脚に纏わりつかれたの思い出してストレス!……はぁ、安眠したい。


 「あ…あぁ、ではまたな……」



*****


12月3日(月) 朝


 シャララララ〜ラ〜……プツッ!!……もぞもぞ……


 ね、寝た気がしない……っ!

 あーちの野郎!待ってろよ!!


 えーっと、憲法何条だったっけ??……そうだそうだ!19条ね!!

 ………ふふふふふふふ。

                               end.


次回は同日の後編です!


作中の1日を1話で投稿する予定が、どんどん文章が長くなって2話になる今日この頃です…。

あと花粉の季節がやってきて、戦々恐々する今日この頃です…。

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