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実々 : ラブストーリーは突然に

実々視点のファミレスの話です。


11月30日(金) 朝 



 「HEY!そこのお嬢さん、一緒に小洒落たランチでも行かないかい?」


 (…何処のお嬢さんだよ。)


 「きゃっ!びっくりした~。誰かと思ったらトムじゃない!あなた、いつこの街に帰って来てたの!?も~っ…連絡1つ寄越さないなんて、どれだけ心配したか分かってんのっ!?ケンもムカミも凄く心配してたのよ!………それに…私だって」


(まさかの知り合いパターン??「きゃっ!」って…無理してカワイコぶるな。そしてこのお嬢さんはツンデレ気味なの?)


 「HAHAHA~!ごめんよミミ~。連絡をしなかったのは驚かせたかったのもあるし、それに何より本当に今戻ってきたところなんだ。1番にミミ、君に会えて嬉しいよ」


(…まさかのミミ!!)


 「そんな調子の良い事言ったって簡単には許さないんだからねっ!………美味しいものご馳走しなさいよ」


 (はい。早くもデレがきました。)


 「ミミ、ただいま」

 「ばかトム……おかえり(小声)」


 パチパチパチー。[拍手]


 (パチパチパチ〜じゃないわ。なんなの?このチープな小芝居は。)


 「ねぇ……私は何を見せられてるの?」


 今日は初日と同じようにあんバターのホットサンドを食べているところに突然始まった小芝居を強制的に見せられてまぁ…苛立っちゃうよね☆

 しかし向かいの席のあーちはなんで伝わらないかなぁ?という顔をしながら理由を口にし始めた。


 「えー…分かんなかった?みーちをランチに誘っていますよってアピールだったんだけど」


 …………は?ランチ?


 「分かるかっ!」


 そもそもトムは『美味しいものをご馳走しなさいよ!』ってコメントをスルーして『ただいま』って濁してんじゃん!

 と、頭の中でツッコんでいたらあーち(トム)が、改めて説明し始めた。


 「ほら、昨日で弥生時代が終わったでしょ?図書館も行かなきゃだし、【わたにほ】の文字数が1万字超えたから、ちょっと贅沢しようやってこと。食べに行こうよ~う」


 …最初からそうやって誘えば良かったじゃん。

 ふむ、でもここは一つユーモアで返してあげよう。


 「う~ん……あっ、ト、トムがそこまで言うなら、行ってあげないことも無いけどっ!」


 ミミは中途半端なツンデレだったからこんなもんでしょ。

 あーち(トム)はどうでる?ワクワク。

 あーちの方をチラ見すると口元を緩ませながら自分を落ち着けるべくお茶を一口飲むところだった。

 私もちゃんとミミになりきるように横を向いて口を尖らせつつ、不機嫌な顔で毛先を指先でイジイジして待ってみる。

 待つこと3秒。

 あーち(トム)は柔らかい表情で、

 

 「嬉しいな。旦那のいっさんには絶対内緒だぜ?」と言ってきた。


 …待て待て待て!!

 トムはミミの待ち人じゃないの?ミミは人妻なの?やだよそんな展開!

 もうミミが吹っ飛んじゃったよ!

 そんで、そりゃ亮には絶対に内緒でしょうな。

 『一年前にタイムスリップしてあーちとファミレス行ったんだよー♪』って言った瞬間に神に消されちゃうよね。『次に会うのは法廷ね!』どころじゃ無くこっちが消滅しちゃうからね。

 だからね、「……でしょうな」ってセリフしか返せなかったわ!


 「うん……」

 

 あー…うん、あーちに憑依したトムも吹き飛んじゃったよね。

 でもね、そもそもあーちのセリフのチョイスが悪いんだもん!嫌でも現実見ちゃうでしょ。

 ミミとトムの世界にケンとムカミ以外を入れちゃった無粋なあーちが悪いんだよ?


 こうしてなんとも言えない朝食が幕を閉じたのだった。

 


*****


お昼前 


 「みーちは何着て行くです?」


 お腹も少し空いてきたし、移動の時間等々考慮してそろそろ出発しようということになった。

 そこで部屋着から着替えるにあたり、この家の服を貸してくれるあーちが日本語に不慣れな感じで質問をしてきた。

 私はクローゼットの中を一通り「う~ん…」と言いながら見渡しつつ、本日のTPOを今一度考える。

 うーん…うん、よし。


 「こっちに連れて来られた時の服で良いや」と言った途端に、

 「えっ?つまんなくない?」


と私に被せ気味に、尚且つ信じられないものを見る様な目をしながらあーちに言われた。


 「なんで高々ちょっとの外出に面白みを求めるのさ…。んー…なら下は借りようかな」


 たかだが近所のファミレスなんだから背伸びしないで良いのに…。

 まぁ下の服くらいは借りても良いかと思いあーちの立ち位置を変わる。

 そして暫しの物色の後、あろうことかあーちが振り向きざまに無骨な感じで私に渡してきたのは青紫のロングプリーツスカートだった。


 「んっ!これを着てお行きなさい」


 (何処へだよ?!これから行くのファミレスでしょ?)


 「嫌です。それ着たら私じゃなくなる」


 思わず敬語になっちゃったわ!

 でも、あーちと無意識に距離を取りたくなっちゃうくらいそのスカートは嫌だ!!紫は昔の人と同じように私にとっても禁色なの!

 でも悲しいかな、あーちには全然伝わっていないようで、私がワガママを言っているだけに取られた。…解せん。

 そして呆れたように、


 「髪型や髪色じゃないんだから、服で性格変わんないよ。そもそもそんなフワフワ漂った性格してないじゃん。……まったく、仕方無いなぁ…ならこっちね」


と次なるスカートを差し出してきた。

 (フワフワ漂った性格してないって分かってるならそのスカート履かせようとするなよ!……あー…でも、うん、こっちなら良いか。)


 「これなら良い」


 紺色のチュールスカートなら私は『私』を維持できるわ。

 どうしてファミレスに行く服一つ選ぶだけでこんなに精神をゴリゴリ削られないといけないの?誰か教えて。

 まぁ、取り敢えずこれで出掛けられる。

 渡された服に着替えてから軽く日焼け止め代わりな感じで化粧をしてやっとこさ家を出た。

 そして、自分の隣を歩いているほぼ同じ顔と身長の人間に声を掛ける。


 「人にあんだけ『つまんない』って言っておいて、その自分の服装は何なの?」


 グレーのパーカー以外、腹の中も含めて全部黒一色。

 そんな全身に黒を纏った人間は、「テーマがあるから」と前を見ながら返してきた。

 テーマ?この全身真っ黒ほんのりグレー人間のテーマ??


 「テーマってなー…」

 「テーマは[夜逃げ斡旋業者の現地視察]だよ」


 私のセリフにまたもや被せ気味に答えが返ってきた。

 えっ?『オレオレ詐欺の受け子』じゃなかったんか。

 まぁどちらにせよ、


 「……絶対1人で歩いてたら職質受けるヤツじゃん」


と、軽くツッコミを入れておく。

 すると直ぐに「職質受けた事無いから」と、至極当たり前の返事が返ってきた。…受けた事あったら問題だから。

 そこからは交通量のほぼ無い住宅街をてくてく歩いて行くだけで目的地に辿りは着くのは良い。

 それは良いのだが、私の横でスキップしながら熱唱している人間が気になって気になってしょうがない。


 「♪~~(前略)おぅそぉ~れおそれみぃ~~よ~っ!すたんふろんてあて~すたんふろぉぉぉん!てあて~~~!」


 ……コレだよ。

 なんで全力で歌ってるの?『恥じらい』を何処に落としてきた?


 「本当に止めて。しかも何で【オー・ソレ・ミオ】なの?巻き舌に熱入れ過ぎだし。最初からフルで歌うし……」


 ……マジデヤメロ。


 「イタ飯をこれから食べるから気持ち作ったんだよ」


 そんなに道中ずっと気持ち作り続けないといけないのなら今日はその『イタ飯』の日じゃなかったんじゃないの?

 そもそもの話、


 「黙って気持ち作れや。それと、イタ飯って死語だから」


 ついつい厳しい口調になっちゃったけど、隣で行われていた中途半端なスキップだけでも結構我慢を強いられていたのに、更にそこに巻き舌全開で住宅街で歌われたら我慢ならないでしょ。


 そこからはお互いに『こいつ空気読めねぇな』と視線を何度も飛ばしつつも、早歩きが標準装備の一族なので、あっという間に目的地であるイタリアンのファミレスに到着した。


 チリチリーン【入店の音】


 「いらっしゃいませ~。何名様ですか?」

 「「2名です」」

 「2名様…?ですねっ!ご案内致します」


 2人揃って指を2本立てながら同時に言ったから、ポニーテールの学生らしき店員さんは一瞬戸惑いを見せた。申し訳ない。

 でも、気を取り直したように笑顔で入口から1番遠い角のボックス席に案内してくれた。

 私が角の席に座りあーちがその向かいに座って早速とばかりにメニューを開く。


 「みーち何食べるのー?」

 「う~ん…月見ハンバーグも良いけど、野菜ソースのハンバーグも捨てがたいんだよね~」

 「じっくり悩むと良いよ」


 あーちはそう言ってもう最初から決まっているのか、何度もメニューを行ったり来たりしている私を生暖かく見守ってくれていた。

 う〜ん、悩む。

 リゾットも好きだし、パエリアも美味しいんだよね〜、でも折角来たんだからお米を口いっぱいに頬張りたいし、お肉も食べたい…よし、これだ!


 「よしっ!決めた!」

 「ていっ!」と言いながら私は呼び出しボタンを押した。

 

 すると最初に案内してくれたポニーテールの店員さんが現れた。


 「お待たせ致しました。ご注文はお決まりですか?」

 「はい、え~っと…この野菜ソースのハンバーグとライス、と~?」

 「うぇ!?」 


  私は視線で『次、あーちが言う番だよ』と向かいから振るもあーちは急に振られたのに驚いたのかちょっとキョドりだした。

 しかし、店員さんの微笑みに気を持ち直したのか、


 「イタリア風ドリアの温玉のせで」とスッと答えられた。


 私は『やっぱりあーちはドリアだったか』と思いつつも、もう一つ大事な注文をせねば!と店員さんに向かって口を開く。


 「あ、あとドリンクバー2つでお願いします!」


 ドリンクバーを注文した途端あーちからキラキラな視線が送られてきた。

 それを見た店員さんからは生暖かい視線を浴び、店員さんは「それでは少々お待ちください」の声と共に去って行った。

 そして一瞬の静寂の後、


 「ドリンク飲んで良いの!?」


とあーちが目をキラキラさせながら気持ち上半身を前のめりにして聞いてきた。


 「そこまで追い詰められた貧乏じゃないし、ここではいつも飲むでしょ」

 

 我慢し過ぎも良くないし、紅茶も種類があるから良いのよね〜。


 「ひゃっほう♪みーち先に取りに行って良いよ~」

 

 あーちは小躍りしそうなほど喜んでいた。

 そしてお先にどうぞと言われたので遠慮せずにドリンクを取りに行かせてもらおう。


 「ん」と一言だけ返し、席を立つ。

 さて、何飲もうかなぁ〜♪

 ドリンクバーの所にはご婦人がコーヒーマシンの前に1人居るだけで私が行こうとしているジュースのコーナーは誰も居なくてラッキーだった。

 ここのファミレスに行くと最初に飲むものはいつも決まっている。

 1杯目は食欲を増進させる為にもやっぱり炭酸だよね!ブドウソーダ大好き!

 どうせあーちも同じ物を一杯目は飲むのを知っているので優しい私が淹れていってあげませう。

 あーちの方にはグラスに氷を一つ。自分の方には氷を二つ入れてグラスでジュースのレバーを押す。七分目くらいにきたらもう片方のグラスにも同じように注いでいく。うむ、ぴったり同じ量が入りました。


 溢さないようにゆっくりと席に向かう。

 遠くの席だから地味に距離を感じた。

 そして席に座る前にあーちに「あーちもどうせブドウソーダだろうと思って、あーちのも持って来たよー」と言いながらサーブする。

 あーちは待ってました!とばかりの笑顔で「あざあざ~」と返事を返してきた。

 私が席に座るやいなやあーちは早速とばかりに喉を潤し、私もそれに続いて一口飲む。うん、シュワシュワ最高!

 

 そしてあーちは、斜めの席に座っている銀髪で強面、尚且つ長身のお兄さんの着ているTシャツのデザインについて拳をテーブルに10回横にずらしていきながら説明してきた。

 まぁ正直、Tシャツのデザインとかどうでもよかった。

 銀髪のお兄さんは店員さんに必死に注文し過ぎる余り、パーソナルスペースとは何ぞや?というほど顔を店員さんに近づけ、そして強面という個性も手伝って発生している圧に押されている店員さんに思わず同情してしまった。

 店員さんが注文を聞き終わって立ち去った時は、無意識に力が入っていた肩の力がフッと抜けたのが分かった。

 

 またドリンクを一口飲んで気持ちを落ち着けていたら、あーちの斜め背後から目的の品が近付いてくるのを確認することが出来た。

 行儀が悪いとは思いつつもずーっと目で追ってしまった。

 そしていよいよこのテーブルの前に!


 「お待たせ致しました。野菜ソースのハンバーグとライスご注文の方~?」

 

 キターーーーッ!!


 「はい、私です」


 はい!私です!!


 

 「イタリア風ドリア温玉のせはお客様でよろしいでしょうか?」

 「……あ、はい」

 「ご注文の品は以上で宜しいでしょうか?…それではごゆっくりお過ごし下さい」


 待ってました〜!早く!早く食べたい!

 でもその前に、あーちにスプーンくらいは渡してあげよう。

 『ほれ、受け取りなさい』と、口には出さないがスプーンを突き出して渡す。

 でも視線がハンバーグに釘付けなのは、もう抗えない一種の呪いみたいなものだから。私はナイフとフォークを手に装備し、いざ!


 「では……」

 「「いただきまーー(す)」」


 私はハンバーグにトッピングされている目玉焼きをご飯の上に乗せて食べるのが一つのこだわりで、フォークとナイフで慎重にハンバーグからご飯の上にお引越しさせていく。


 「「よしっ!」」


 あーちはあーちで何かミッションをコンプリートしたようだ。

 やっとお互いに食べられるね。

 (では、改めていただきまーーす)

  猫舌なので切り分けたハンバーグを酸欠手前までフーフーして冷ます。そして一口。

 うん、安定の美味しさ。そしてハンバーグからのご飯!うぅ〜幸せ〜♡ご飯を口いっぱいに入れて食べるのが好き。

 

 「「おいひ~~」」


 この美味しさは早くシェアした方がいい!

 ハンバーグを切り分けて野菜ソースを落とさないようにそっとナイフで乗せる。そしてそーっと向かいにいるあーちに差し出す。

 あーちからはお返しにドリアが来た。では遠慮なく。


 「フーフー…はむっ!」


 うん、こちらも安定の美味しさ。

 ドリアも好きだけどそれだけだと途中で飽きちゃうからなかなか頼もうってならないんだよねー、あーちが分けてくれて良かったー。

 向かいのあーちも美味しかったのか、満足そうな顔をしていた。

 だからハンバーグと一緒に「ライスも良いよ」と言ったけれど、それは拒否された。

 まぁ、あーちはご飯よりおかず派だから食べないのは知ってたんだけどね。お互いにフォークとスプーンを戻してお裾分けタイムは終了した。

 あとはもう自分の目の前の食べ物を脳が満腹を感じる前に食べ切るだけだ!


 そう、食事は時間との戦い。


 美味しい物を美味しいと感じるうちに食べ切ることが何より大切!

 向かいの席に座るあーちも、モタモタしているといつもお腹いっぱいになって残してしまうので、そこからはお互いに特に会話らしい会話もせず、1口毎に美味しさを噛み締めつつ笑顔で食べ続け見事に完食した。


 さて、満腹になったし食後に温かいお茶でも飲みますか。

 でも…その前にお手洗いに行きたい!

 よし、トイレ行った帰りにそのままお茶を持って席に帰ろう!そう決心して席を立ち様にあーちに話しかける。

 

 「トイレ行って、その足で紅茶取ってくる。あーちはアールグレイ?」

 「うん」


 あーちの了承の声を聞いて目的の場所へと向かう。

 私はダージリンやアッサム派だけどあーちはアールグレイ派だ。


 この後私がトイレとドリンクバーから戻ってくる僅かの時間であーちが滂沱の涙を流すことになるなんて、この時の私は知る由もなかった。

 

(トイレ♪・トイレ♪・か・ら・の〜♪・お茶〜♪お茶〜♪♪)

                                       end.


次回は後編を投稿します。


先日、作中に出したファミレスが赤字とニュースでやっていて、本当に食べに行かなくてはと思いました。

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