コンテナ
「……このコンテナだな」
道中、どこかで襲われるかと思っていたが、休憩すら取らずに当初の予定通りのコンテナにやってきたようだ。
もう日も暮れつつある。
ここまで邪魔されずに来たということは、私は誰からも助けられないのだろうか。
そういう疑念も心に浮かんでくるが、慌てて首を左右にブンブン振って消し飛ばす。
「ああ、しかし、居るはずの見張りがいないが……」
親分は助手席に座り、運転手と一緒に車から出た。
周りを見回し、それからコンテナの番号を確認する。
「……鍵が開いてるな」
鍵は車内からは見えない。
コンテナの扉は、他のものには南京錠とともに電子錠が掛けられているようだ。
だが、どうも今彼らが見ているコンテナは両方とも外されているらしい。
「開けるぞ」
「ああ」
二人の会話は、私を車から下ろしているおかげでよく聞こえた。
トビラは取っ手をつかって手前に引き、私はコンテナの入り口前に立たされた。
途端、目に入ったのはコンテナの上部株に開けられた穴から見える日の光、それから床に転がっている3人の男。
少し目線をコンテナの中に移すと奥まったところで、パイプ椅子に誰かが座っている。
誰かが分かる前に親分が地面に倒れている男らに駆け寄り声をかける。
「……おい、大丈夫かっ」
とたん、親分がパイプ椅子の人に顎を蹴り上げられ、コンテナからたたき出された。
「やあ、待ちくたびれたよ。君らがいつ着くかを考えていると、とうとうトイレにも行きそびれてしまってねぇ」
ひょいとコンテナの中で倒れている男らをまたぎ、親分の近くで立つ。
「お嬢さん、ようやくここにたどり着いたね。よかったよかった」
悪い人ではないようだ。
少なくとも、彼らの仲間ではないということで、私は少し安心する。
だが、反面、彼らにとっては敵だということだ。
警告もなく、私を抑えている1人を除いて4人ほど一斉に銃を腰から取り出し、彼に向かって撃ち始めた。
「いやはや、歓迎ありがたいねぇ」
銃の射線を見極め、私の目から見ればゆったりとした動きで一発ずつよける。
バンバンバンと連続で撃ち続けられる銃も、十数発撃った時点で弾が尽きた。
「あっ」
そこでようやく私は彼を思い出した。
「あなた、山本さんのところにいた……」
「ようやく思い出したか、よかったよかった」
よかったと繰り返すのがこの人の口癖なのかもしれない。
仲介屋のところにいたということは、まっとうな職業の人であることは少ない。
ただ、私は彼の仕事が暗殺を生業にしていることをしている、ということぐらいは知っていた。
銃弾が尽きたら、今度はナイフのようだ。
キラリと光る刃が私の目の端から、まるで流星のように暗殺者の元へと近づいていった。