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昼を食べ終わると、いよいよ金の交渉の電話をしてくる。

「おい」

親分が話しかけてきた。

「なに」

私はわざとぶっきらぼうに答える。

事実、両手両足が動けなくされていて、不満は多くある。

「お前の親に電話をかけろ。お前から、金の場所を言え」

「お昼、食べさせてくれるなら」

お腹はペコペコだ。

ただ、それよりも先に電話を掛けろ、といって携帯電話を私の耳に無理やり当ててきた。

もう電話の発信音がしている。

ガチャと受話器を上げるような音がすると、少し無音の時間が生まれた。

「……もしもし、お父さん?」

「どうかしたのか。知らん電話番号からだったから何があったのかと心配をしてるところだ」

「あのね、少し困ったことになったの。今、人質にされてるの。それでね、お金が必要になったの。700万円、用意ってできる?」

「……わかった。声が聞けて安心したぞ」

仲介屋はとても平静な声をしている。

それが恐ろしく、怖い。

「それで、ペットの大型犬の、ファブリカ、ちゃんとお世話してあげてね。私がいなくなってもファブリカは残っているんだから」

「そうだな」

仲介屋が何を考えているのかは全く見当もつかない。

ただ、私を助けてくれるのか、それが一番の心配だ。

「ちゃんと助けてよ?」

「ああ、助けるさ」

安心できる会話といえば、それぐらいだ。

ここで、私は一枚の紙を渡される。

「えっとね、手野公園の手野山中腹ぐらいのところにある売店。そこの燃えないゴミのごみ箱の中に、追跡ができないようにして入れておけ、だって。今日の17時までに。よろしく頼んだよ?」

「ああ、手野山中腹売店の燃えないゴミ箱の中に午後5時か、分かった」

「それじゃあね、お父さん」

親子だということになっているから、念押しのように私は伝えた。

電話はそのまま没収されて、代わりにふたが開いた冷たいゼリー飲料のストローが口に突っ込まれた。

「お前の昼飯だ。気を付けろよ、これからさき、これが高級食材に感じることだろうからな」

電話は切られ、私は少し遅めになった昼食を楽しんだ。

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