計画
電話番号に電話を掛けるのはスマートフォンからだ。
ただ、白ロムを使っているだろうし、きっと追跡をされないようなやり方にしているはずだ。
そこまで馬鹿な人たちには見えないが、どうだろう。
私を知らなったようだし、この辺りには疎い可能性だってある。
「お前の娘は預かった。身代金として1000万を用意しろ。場所は追って指示する。警察に知らせたら娘は殺す」
あまりにも定番な言葉、何と言っていいのかわからないが、予め彼らのために祈っておこう。
死なない程度には。
「よし、とにかくこいつはここで動かすな。下手に動かし続けたら怪しまれるからな。それと金はどこで受け取るかだが……」
「負犬地区の中だろうな。あそこなら警察も介入できない。唯一介入するとしたらシマにしている暴力団の世古主基会が出てくるぐらいだろうが、それも金をちらつかせたら一発だろう」
そんな甘い話はない。
というよりも、そこの会長さんと私は知り合いだ。
面白そうになりそうだから、黙っておくことにしよう。
「人質は見せる、がそこでは解放しないし、そもそも場所をここから動かさない。金は受け取ってからこいつを売る。あとは金をもって海外だな」
どうやら仕切っていたのは、元から工場にいた男のようだ。
親分とでも言っておこうか。
だが、親分失格なのはいうまでもない。
「ねぇ、お腹すいたんだけど。逃げないし、腕も痛いからほどいてよ」
逃げるつもりはないし、見た目はか弱い少女だ。
それにいざとなれば力強い知り合いもたくさんいる。
「あ?そういや昼だな」
思い出したかのように親分は腕時計を見る。
「昼にするか。お前はそのままだ。車に乗ったままな」
銃を持った男が2人、工場のスペースの中に入ってきた。
武器はその小火器2つ以外にもあるだろうが、ここからは見えない。
「今日は長丁場になるだろうから食っとけよ。今日中にけりをつけるからな」
はい、と元気に返事をした声が数名分、工場の中に響いた。




